Last Updated on 2025年1月25日 by 渋田貴正

外国籍の人が日本国内の不動産を所有して亡くなった場合、遺産分割協議が可能かどうかは、その被相続人の国籍によって異なります。そのため、外国籍の被相続人が日本に不動産を持つ場合、遺産分割協議は可能かどうかについてはまずは国籍を確認するということが必要ですが、今回は一般的な内容として、外国籍の被相続人が日本に不動産を持つ場合の遺産分割協議の仕組みについて説明します。

遺産分割の基本的な仕組み

遺産分割とは、被相続人が残した遺産を相続人間で分ける手続きです。日本の民法では、次のように規定されています。

  • いつでも分割協議が可能
    民法907条により、相続が開始した後は、遺言で禁止されていない限り、相続人間でいつでも遺産分割協議を開始できます。
  • 家庭裁判所での解決
    協議が整わない場合や、協議自体が困難な場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

外国籍の被相続人に関する通則法の適用

被相続人が外国籍の場合、遺産分割については通則法第36条が適用されます。これは、相続に関する準拠法(適用される法律)を決定するルールです。具体的には次のような基準が適用されます。

  1. 被相続人の本国法が適用される
    被相続人が属する国の法律が、遺産分割の準拠法になります。この場合、遺産分割の時期や方法、基準はその国の法律に従います。
  2. 本国法に規定がない場合
    被相続人の本国法に遺産分割に関する明文規定がない場合は、次の点が問題となります。

    • 管理清算主義の国
      遺産の管理と清算を重視する法律を採用している国では、遺産分割協議はできないと解釈されることがあります。
    • その他の国
      日本の民法907条のように、裁判所の関与なく分割協議を開始できるかどうかは、個別に判断が必要です。

日本の不動産が含まれる場合の実務的な対応

外国籍の被相続人の遺産が日本にある場合、日本の家庭裁判所で遺産分割協議が可能かどうかは、次のような条件に依存します。

  • 反致の適用
    被相続人の本国法が住所地法を準拠法とし、日本の法律が準拠法として再適用される場合、日本の法律に基づいて遺産分割協議を行うことが可能です。その場合、相続人の範囲を含めて日本の法律が適用されます。
  • 日本の裁判所の対応
    管理清算主義を採用する国の法律が準拠法となる場合、日本の家庭裁判所では遺産分割の申立てが却下されることがあります。ただし、実務上、準拠法として日本法が適用される部分については、調停や審判の申立てが認められることが多いとされています。

被相続人が外国籍で、日本に不動産が含まれる場合、遺産分割協議が可能かどうかは通則法や民法、さらに被相続人の本国法の内容によります。特に反致の適用や本国法の明文規定が重要な判断材料となります。具体的な事例については、国際相続に詳しい専門家に相談することをお勧めします。