Last Updated on 2025年10月29日 by 渋田貴正

ノルウェー国籍の人でも日本で遺言を遺せるのかということについてまとめました。

結論から言えば、ノルウェー国籍の人でも日本で遺言を作成することができます。
ただし、外国籍の方が日本国内で遺言を残す場合には、いくつか確認すべきポイントがあります。

1)本国の法律で遺言制度があるかどうか
2)遺言の方式について日本の民法を適用できるかどうか
3)不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるかどうか

ノルウェーの法律で遺言の制度があるか

まず、日本では遺言については以下のように定められています。

法の適用に関する通則法
第37条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

そのうえで、ノルウェー相続法(Arveloven, Lov om arv og dødsboskifte)では、第7章以下で「testament(遺言)」の制度を明確に認めています。
ノルウェーでは、本人の自由意思に基づき、一定の方式を満たせば財産の分配方法を指定することが可能です。したがって、ノルウェー国籍者であっても、遺言によって自身の財産を指定する制度的基盤が整っています。

遺言の方式について日本の民法を適用できるか

次に、遺言の「方式」についてです。
ノルウェー相続法では、次のいずれかの方式に適合していれば、その遺言は形式的に有効とされています。

a)遺言を作成した場所(行為地)の法
b)遺言者が死亡時または作成時に国籍を有していた国の法
c)遺言者が死亡時または作成時に住所または常居所を有していた地の法
d)不動産に関する遺言の場合は、その不動産の所在地の法

この規定は、日本の「遺言の方式に関する法律」第2条とほぼ同内容です。
したがって、日本国内で公正証書遺言を作成する場合、行為地法は日本となり、日本の民法上の方式で作成すれば、ノルウェー法上も有効な遺言として扱われます。

さらに重要な点として、ノルウェーは1961年の「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約(HCCH Form of Wills Convention)」の批准国です。
この条約により、日本とノルウェーの双方で、相手国の法に基づいて作成された遺言の「方式」を相互に有効と認めることが可能です。
つまり、ノルウェー国籍者が日本の方式で作成した遺言は、条約によりノルウェーでも形式上有効とされます。

不動産や動産の相続について日本の法律を適用できるか

次に、遺言によって指定された財産の相続に関して、どの国の法律が適用されるかという点です。
ノルウェー相続法は、被相続人の死亡時の「通常の居住地(vanlig bosted)」がある国の法律を原則として適用する旨を定めています。
また、遺言者自身が「自国の相続法を適用する」と選択する(法選択)ことも可能です。
このように、ノルウェーでは相続に関する準拠法をある程度柔軟に選択できる仕組みが整っています。

そのため、日本に居住しているノルウェー国籍の方が日本で遺言を作成する場合、
・日本法を適用して日本の方式で作成する
・ノルウェー法を選択して自国法に基づく効力を持たせる
のいずれの方法も可能です。
どちらを選ぶかは、遺産の所在(日本・ノルウェー・その他国)や相続人の居住地、遺留分制度の違いなどを考慮して判断します。

ノルウェー国籍の方が日本で遺言を作成することは、法律上・国際条約上いずれの観点からも可能です。
特に、ノルウェーが「遺言方式条約(1961年)」の批准国であることから、日本の公正証書遺言はノルウェーでも形式的に有効と認められやすいといえます。

当事務所では、ノルウェー国籍を含む外国籍の方のために、公正証書遺言の作成サポートから翻訳、公証人・証人の手配まで、国際相続を見据えた包括的なサポートを行っています。
ノルウェーにご家族や財産をお持ちの方、日本に居住するノルウェー国籍の方は、ぜひ一度ご相談ください。