Last Updated on 2026年3月14日 by 渋田貴正

不動産投資の税金を調べていると、「不動産所得の赤字は給与と損益通算できる」という話をよく目にします。損益通算とは、ある所得の赤字を他の所得の黒字と相殺して、全体の課税所得を減らす制度のことです。たとえば不動産所得が赤字で、給与所得が黒字の場合、その赤字を差し引くことで税金を減らすことができます。ここまでは多くの方がご存じです。

しかし、不動産所得の赤字には一つ大きな落とし穴があります。それが「土地取得のための借入金利息」です。土地購入のための借入金利は、不動産所得の計算では経費になりますが、損益通算の計算では除外されます。つまり、赤字の原因が土地の利息である場合、その赤字は給与などと相殺できないことがあります。実務ではこのルールを知らず、「赤字なのに税金が下がらない」というケースも珍しくありません。

最初に具体的なイメージを見てみましょう。次のような不動産投資のケースを想定します。

内容 金額
家賃収入 600万円
減価償却費 350万円
借入金利息(建物部分) 100万円
借入金利息(土地部分) 200万円

まず通常の不動産所得の計算では、すべての経費を差し引きます。

600万円 − 350万円 − 100万円 − 200万円
= ▲50万円

この段階では、不動産所得は50万円の赤字です。ここまでは土地の利息も通常の経費として扱われます。しかし、給与所得などと損益通算する段階になると、土地の利息200万円は計算から除外されます。つまり次のようになります。

600万円 − 350万円 − 100万円
= 150万円

損益通算上は、不動産所得が150万円の黒字として扱われることになります。決算書上は赤字なのに、所得税の計算では黒字になってしまうのです。ここがこの制度の一番分かりにくいポイントです。

なぜ土地の利息は損益通算できないのか

このルールの背景には「土地は価値が減らない資産」という税制上の考え方があります。建物は時間の経過とともに価値が下がります。そのため税務では「減価償却」という仕組みを使い、建物の取得費を数十年に分けて経費にします。一方で土地は、基本的に減価償却ができません。税制上は価値が減らない資産として扱われているためです。もし土地取得の借入金利まで損益通算を認めてしまうと、極端な話、土地を借金で買うだけで給与所得の税金を減らせてしまいます。

税制としては、土地購入を利用した過度な節税を防ぐ必要があります。そこで土地に対応する借入金利は損益通算できないという制限が設けられています。「土地は資産価値が残るのだから、その購入コストを所得の節税に使うことは認めない」という考え方です。

確定申告時には土地と建物で利息を分ける必要がある

実務では、土地と建物をまとめてローンで購入するケースがほとんどです。そのため、借入金利を土地部分と建物部分に分ける必要があります。この区分は通常、取得価格の割合など合理的な方法で行います。

たとえば購入価格が次のような場合です。

土地 3,000万円
建物 2,000万円

この場合、土地60%、建物40%という割合になります。年間利息が100万円なら、60万円は土地利息、40万円は建物利息です。損益通算できるのは40万円だけです。この割合の計算は、売買契約書の価格区分や固定資産税評価額などを参考に決めるのが一般的です。

不動産投資の節税では、単に赤字になればよいわけではありません。重要なのは「どの経費で赤字になっているか」です。減価償却による赤字なのか、土地利息による赤字なのかで、税金の結果は大きく変わります。土地の利息が多いだけの赤字の場合、損益通算がほとんどできないこともあります。不動産所得の赤字と聞くと節税のイメージがありますが、その中身を見ないと実際の税効果は分かりません。まさに「赤字にも種類がある」ということです。税務の世界では、見た目の数字よりもその内訳が重要になることがよくあります。ここは税理士の腕の見せどころともいえる部分です。

不動産投資では、購入前の設計によって税金の結果が大きく変わることがあります。土地と建物の価格配分、借入金利の按分、損益通算の可否などは、後から修正するのが難しいポイントです。当事務所では、不動産投資の税務と不動産登記の両方の視点からアドバイスを行っています。購入前の段階から相談していただくことで、税務面でも登記面でも安心できる設計が可能になります。不動産投資や不動産所得の税務で疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。専門家が分かりやすくサポートいたします。