Last Updated on 2026年1月19日 by 渋田貴正

空き家・空き地バンクを利用して不動産を取得する際、登記と並んで注意が必要なのが税金です。特に「無償で譲ってもらえる」「空き家だから価値はほとんどない」といったイメージから、税金については後回しにされがちです。しかし、税務上は空き家・空き地バンクであっても特別扱いされるわけではなく、通常の不動産取引と同じ考え方が適用されます。税金は登記以上に「後からまとめて」では済まない分野であり、事前に全体像を把握しておくことが重要です。

空き家・空き地バンクで関係してくる税金の扱い

まず押さえておきたいのは、空き家・空き地バンクを利用したからといって、税金が軽減されたり、免除されたりするわけではないという点です。税法上は、取得方法に応じて「売買」または「贈与」として処理されます。空き家・空き地バンクという制度は、自治体がやっている公的なシステムとはいえ、あくまで情報提供やマッチングの仕組みです。空き家・空き地バンクを利用したからと言って、税務上の位置づけを変えるものではありません。そのため、どの税金が誰にかかるのかを、取得方法と立場ごとに整理して考える必要があります。

空き家・空き地バンクを利用した場合でも、税金の考え方は「誰が」「どのような形で」不動産を取得・譲渡するかによって整理する必要があります。以下では、譲渡者側と譲受者側に分けて、主な税金を整理します。

譲渡者側(売る側・あげる側)の税金

取得形態 主に問題となる税金 課税の有無 実務上の注意点
有償(売買) 譲渡所得税
(所得税・住民税)
あり 売却益が出た場合に課税。取得費が不明な古い不動産では、
想定より税負担が大きくなることがある。
無償(贈与 原則なし 原則なし 贈与自体には課税されないが、状況によっては
低廉譲渡等として注意が必要なケースがある。

譲受者側(買う側・もらう側)の税金

取得形態 主に問題となる税金 課税の有無 実務上の注意点
有償(売買) 不動産取得税 あり 売買価額ではなく、固定資産税評価額を基準に課税。
空き家でも土地評価により一定の税負担が生じる。
無償(贈与 贈与税
不動産取得税
あり 「無償=税金がかからない」と誤解されやすい。
評価額次第で負担が重くなることがある。

有償(売買)の場合に問題となる税金

有償で不動産を取得する、いわゆる売買の場合、まず問題となるのは売る側、つまり譲渡者の税金です。譲渡者には、譲渡所得税が課税される可能性があります。これは、売却価額から取得費や譲渡費用を差し引いた利益に対して、所得税や住民税が課されるものです。空き家だからといって必ずしも利益が出ないとは限らず、取得費が分からない古い不動産では、思わぬ課税が生じることもあります。

一方、買う側である譲受者には、不動産取得税が課税されます。不動産取得税は売買価額ではなく、固定資産税評価額を基準に計算されるため、「安く買えたから税金も安い」とは限りません。特に土地付きの物件では、建物の価値が低くても、土地評価によって一定の税負担が生じるケースがあります。

無償(贈与)の場合に問題となる税金

空き家・空き地バンクで特に多いのが、無償での譲渡、いわゆる贈与です。無償で譲り受けると聞くと、「タダでもらえるのだから税金はかからない」と思われがちですが、税務上は最も注意が必要な取得形態ともいえます。

贈与の場合、原則として譲渡者には税金はかかりませんが、譲受者には贈与税が課税される可能性があります。贈与税は、固定資産税評価額や路線価などを基準に計算され、評価額によっては高額になることもあります。さらに、贈与であっても不動産取得税は別途課税されます。この二重の税負担を見落としているケースは非常に多く、「無償で譲ってもらったのに、税金の支払いで困った」という相談は珍しくありません。

海外在住者が関与する場合の税金上の注意点

不動産を取得する人や譲渡する人が海外在住である場合、税金の取り扱いはさらに複雑になります。まず、居住者か非居住者かによって、課税関係や申告方法が変わる点に注意が必要です。たとえば、海外在住の譲渡者が不動産を売却する場合、日本での譲渡所得税の申告や納税が必要になることがあります。この場合、納税管理人の選任が求められるケースもあります。

また、海外在住の譲受者が贈与を受けた場合でも、日本国内の不動産であれば、日本の贈与税や不動産取得税が課税対象となります。海外に住んでいるから日本の税金は関係ない、というわけではありません。申告期限や納付方法を誤ると、延滞税や加算税が発生する可能性もあるため、早い段階で税務の整理を行うことが重要です。

立場 想定される取引形態 主な税金 注意点
海外在住の譲渡者
(売る・あげる側)
有償(売買)
無償(贈与
譲渡所得税
(売買の場合)
日本国内の不動産を売却した場合、海外在住であっても日本で譲渡所得税の申告・納税が必要となることがある。
この場合、納税管理人の選任が求められるケースがある。
海外在住の譲受者
(買う・もらう側)
有償(売買)
無償(贈与
不動産取得税
贈与税贈与の場合)
日本国内の不動産を取得した場合、海外在住であっても日本の税金が課税対象となる。
居住地に関係なく、申告期限や納付義務が生じる点に注意。

日本在住にしても海外在住にしても、税金の怖いところは、登記と違って期限が明確に定められている点です。不動産取得税や贈与税には申告・納付期限があり、これを過ぎるとペナルティが発生します。登記が終わっていないから税金もまだ先、という考え方は通用しません。特に空き家・空き地バンク案件では、登記が遅れがちになる分、税金の対応も後手に回ってしまう傾向があります。

空き家・空き地バンクは、地域政策として非常に意義のある制度です。しかし、税金については完全に制度の外側にあり、自治体や不動産会社が自動的に面倒を見てくれるものではありません。取得前にどの税金が、誰に、いつ発生するのかを整理しておくかどうかで、その後の負担は大きく変わります。

空き家・空き地バンクを利用した不動産取得や贈与について、税金の扱いに少しでも不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。当事務所では、登記と税務を切り離さず、一体として確認しながら進めることで、取得後に「こんなはずではなかった」とならないようサポートしています。