Last Updated on 2026年1月10日 by 渋田貴正

外国人登録原票とは、かつて日本に中長期間居住していた外国人について、市区町村が作成・保管していた身分関係および在留関係の基礎資料です。現在ではこの制度は廃止となっていて、新たに作成されることはありませんが、特に昔から日本に住んでいる外国籍の方が亡くなったときの相続や身分関係の確認が必要となる場面では、今なお重要な役割を果たしています。
一般の方にはあまり馴染みのない書類ですが、相続の現場では「最後に残る公的資料」として登場することも少なくありません。

外国人登録原票の制度的背景と歴史

外国人登録原票は、旧外国人登録法に基づいて作成されていました。当時は、外国人が日本に入国し一定期間を超えて滞在する場合、居住地の市区町村で外国人登録を行う義務があり、その届出に基づいて市区町村長が登録原票を作成していました。

外国人登録原票には、次のような事項が記載されていました。

・氏名
・出生の年月日
・国籍
・出生地
・在留資格
・在留期間
・居住地
・世帯主の氏名および世帯主との続柄
・配偶者や子など、一定範囲の親族に関する情報

これらは、日本人における戸籍や住民票に記載される事項と重なる部分が多く、外国人登録原票は、外国籍の方にとっての「日本版の身分関係台帳」ともいえる役割を果たしていました。

しかし、平成24年7月9日に入管法等改正法が施行され、外国人のための住民票が開始になるとともに外国人登録法は廃止されました。これにより、新たな外国人登録原票は作成されなくなり、既存の登録原票は市区町村から国の管理に移管しました。具体的には法務省へ送付され、行政文書として一元的に保管されることになりました。制度としては終了しているものの、「過去の履歴を証明する資料」としての登録原票は、現在も実務上の重要書類です。

ちなみに、外国籍の方の住民票を見たとき、「住所を定めた日」や「届出日」が一律に平成24年7月9日になっているのを見て、違和感を覚えたことがある方もいらっしゃるかもしれません。この日付を見て、「この日から日本に住み始めたのだろうか」と誤解されることもありますが、実際にはそうではありません。これは、外国人登録法が廃止され、在留カード制度と住民票制度へ一本化された際の制度上の整理によるものです。

それまで外国人登録原票で管理されていた情報が、住民基本台帳制度へ移行した結果、形式的にこの日付が用いられているにすぎません。長年日本に住んでいた外国人であっても、住民票上はこの日付が起点になっているケースが多く、相続や身分関係の調査では注意が必要なポイントです。

現在の外国人登録原票はどうなっている?

現在、外国人登録原票は法務省が保有する行政文書として扱われています。生存している本人については、行政機関個人情報保護法に基づき、本人または法定代理人が自己情報の開示請求を行うことができます。
一方、死亡した外国人については、同法上の「個人情報」には該当しないため、法律に基づく開示請求の対象とはなりません。その代替として、法務省では「死亡した外国人に係る登録原票の写しの交付」という行政サービスを行っています。

この交付請求ができるのは、配偶者や直系親族、兄弟姉妹など一定の範囲に限られ、交付される内容も、死者本人および請求者本人に関する情報を中心としたものに限定されます。他の親族に関する情報は、原則としてマスキングされた形で交付されます。

外国人登録原票は、誰でも自由に取得できる書類ではありませんが、相続手続などの正当な目的があり、法令に基づく範囲であれば、司法書士や弁護士といった専門職が関与して取得することも可能です。

相続の現場における外国人登録原票の意味

相続実務において外国人登録原票が重要になるのは、被相続人や相続人の中に外国籍の人が含まれている場合です。日本人であれば戸籍をたどることで比較的容易に相続人関係を確認できますが、外国籍の場合、日本の戸籍制度は利用できません。

特に、日本での在留期間が長い外国籍の方ほど、本国への届出が十分になされていないケースも珍しくありません。婚姻や出生、転居といった重要な身分事項が本国で記録されておらず、いざ相続が発生してから「本国の証明書が取得できない」「どこに請求すればよいのか分からない」という事態に直面することがあります。

そのような場面で、外国人登録原票は、日本国内で公的に把握されていた身分関係を示す資料として、最後の拠り所になることがあります。ただし、ここで注意が必要なのは、外国人登録原票はあくまで日本の行政機関が管理していた資料であり、本国の公的身分証明書そのものではないという点です。

そのため、登録原票だけで相続関係が完全に立証できるとは限りません。実務上は、登録原票を手がかりとして相続人の範囲や家族構成を推認しつつ、可能な範囲で本国の身分関係証明書など他の資料と組み合わせて全体像を補完していくことになります。結果として、外国籍が絡む相続では、「どの書類が決定打になるのか」を最初から見極めることが難しく、集められる資料を一つずつ積み上げていく作業になりがちです。この点に、日本人同士の相続とは質の異なる大変さがあります。

外国人や海外要素が絡む相続では、身分関係の整理、登記手続、税務対応を切り離して考えることはできません。当事務所では、税理士業務と司法書士業務の両面から、こうした複雑な相続案件にも対応していますので、外国籍の方が関与する相続についてお困りの際は、ぜひご相談ください。