認定死亡制度とは

死亡したことが不明なケースで、戸籍上死亡したことにする制度には、家庭裁判所による失踪宣告があります。しかし、戸籍上もう一つある制度が、認定死亡制度です。

認定死亡制度は、災害や事故などで死体が発見できないが死亡したことが確実である場合に、戸籍上死亡したことにする制度です。通常の死亡届の提出に必要となる死亡診断書の作成には、死体を確認することが必要です。しかし、災害や事故などでは死体が確認できないことがあります。そこで、災害や事故の調査を担当した官公庁が死亡が確実だと認めた場合に、市区町村に通知することで、死亡届を出すことなく、死亡したものとして戸籍に記録されることになります。

とはいえ、さすがに遺族に断りなく戸籍上死亡したことにするわけではなく、遺族からの申請が必要です。通常は、申請後1年間ほどで戸籍上死亡したものとして除籍されることになります。

失踪宣告と認定死亡の違い

失踪宣告と認定死亡は、どちらも戸籍上死亡したものとする制度です。しかし、両者には違いがあります。

失踪宣告 認定死亡
死亡原因 問わない 災害や事故など
死亡の確実性 死亡したことが不明 死亡したことが確実
認定する機関 家庭裁判所 調査した官公庁
法律的な効果 死亡したものとみなす 死亡したものと推定

死亡原因が、認定死亡の場合は災害や事故に限られています。認定死亡が用いられるケースとしては地震や水害、土砂崩れや船や飛行機事故などが考えられます。

例えば、生きていれば120歳になるような人が戸籍上生存したことになっていても、認定死亡の制度は使えず、失踪宣告の申し立てをすることになります。(高齢者職権消除という制度もありますが、この手続きは戸籍を訂正するだけで、相続の面で法律的な効果は発生しません。)

また、その効果も大きく異なります。失踪宣告は死亡したものとみなしますが、認定死亡は死亡したものと推定するに留まります。この違いは、対象者の生存がその後判明した場合に現れます。失踪宣告では、対象者の生存が判明しても、自動的に失踪宣告の効果が消滅するわけではなく、失踪宣告の取り消しの手続きを行わなければいけません。一方、認定死亡の場合は、生存が確認できれば、手続きを経ることなく市区町村の職権で戸籍の訂正が行われます。

認定死亡については、死亡原因が限られているため、通常の相続手続きで生死不明者がいれば、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てが必要ということで理解しておきましょう。