Last Updated on 2025年10月13日 by 渋田貴正

「同族会社」という言葉は、会社経営や税務の場面で頻繁に登場します。
一見すると「家族で経営している会社」というイメージですが、税法上は明確な定義と判定基準が存在します。

同族会社かどうかは、法人税法上の特例や制限に直接関わります。
例えば、交際費の損金算入制限、役員給与の損金算入要件、留保金課税の適用など、税金の計算に大きく影響します。
また、事業承継など関係するため、正確な理解が不可欠です。

同族会社の定義と特殊関係者

法人税法第2条第10号では、同族会社を次のように定義しています。

法人税法
(定義)

第2条  
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
10 同族会社 会社の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。
法人税施行令
(同族関係者の範囲)
第4条 法第2条第10号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。
1 株主等の親族
2 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
3 株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人
4 前3号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
5 前3号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

つまり、同族会社判定のための「特殊関係者」には、以下のような人が含まれます。

  • 6親等内の血族、3親等内の姻族
  • その者の使用人
  • その者の生計を一にする者
  • 経営・意思決定を実質的に共にしている法人等

つまり、見かけ上は株主が分散しているように見えても、親族関係や経営上の支配関係によって1つのグループとみなされることがあります。

同族会社の判定の流れと別表2の役割

同族会社に該当するかは、以下のステップで判定します。

  1. 株主・出資者を特殊関係を考慮してグループ化し、上位3グループを特定
  2. 各グループの株式・議決権・出資額の割合を計算
  3. 最大グループの割合が50%を超えれば同族会社に該当

この判定を裏付ける書類が、法人税申告書に添付する「別表2(同族会社等の判定に関する明細書)」です。
別表2には、上位3グループを列挙し、構成員、特殊関係の有無、保有割合などを記載します。
親族関係があれば1グループにまとめ、非親族株主は別グループとして区別します。

ケーススタディ① 赤の他人5人が同じ株数

【構成】
A・B・C・D・Eがそれぞれ20%ずつ株式を保有。全員が非親族

【判定】
いずれのグループも50%を超えないため、同族会社には該当しません。

【別表2記載例】

  • 第1グループ:A(20%)
  • 第2グループ:B(20%)
  • 第3グループ:C(20%)
    D・Eは4位以下のため通常記載不要。
    特殊関係がないため、合計60%でも同族会社にはなりません。

ケーススタディ②親族5人が同じ株数

【構成】
A・B・C・D・Eがそれぞれ20%ずつ株式を保有。全員が親族

【判定】
親族は特殊関係者として1グループにまとめられるため、Aグループ=100%。
同族会社に該当します。資本金等により特定同族会社の対象になる可能性もあります。

【別表2記載例】

  • 第1グループ:Aグループ(A・B・C・D・E/親族関係)…合計100%

ケーススタディ③親族5人で50%・20%・10%・10%・10%

【構成】
A 50%、B 20%、C・D・E 各10%。全員が親族

【判定】
親族で一括グループ化されるため、Aグループ=100%。
最大グループが50%超のため、同族会社かつ特定同族会社になる可能性があります。

【別表2記載例】

  • 第1グループ:Aグループ(A・B・C・D・E/親族関係)…合計100%

ケーススタディ④親族と非親族株主が混在する場合

【構成】

  • A:40%(父)
  • B:30%(母)
  • C:10%(子)
    → A・B・Cは親族
  • D:15%(赤の他人・共同経営者)
  • E:5%(投資家)

【判定】
A・B・Cは特殊関係者としてAグループ=80%にまとめます。
Dは親族関係がなく独立したグループ、Eは5%のため3番目のグループとなりますが、記載は省略しても結果は変わらないので問題ないです。
最大グループ(Aグループ)が50%超のため、同族会社に該当します。

【別表2記載例】

グループ 構成員 関係 株式割合
第1グループ A・B・C 親族(特殊関係) 80%
第2グループ D 親族 15%
第3グループ E 親族 5%(記載省略可)

このように、親族グループ+非親族株主が並記される形は、実務でも非常によくあります。
取引先や役員持株会などが第2グループになるケースも見られます。

実務上の注意点としては以下の点が挙げられます。

  • 特殊関係の把握は、株主名簿だけでは不十分です。親族関係や内縁関係、役員・従業員の兼務状況なども確認する必要があります。
  • 50%ちょうどではなく「50%超」が要件です。
  • 合同会社など持分会社では、株式ではなく議決権・社員数割合を使って判定することもあります。
  • 特定同族会社かどうかの判定は、最大グループの比率や資本金規模などを踏まえて別途確認します。

同族会社は、株式や出資が親族内に集中するため、相続や事業承継時に株式評価や経営権の承継が問題になります。
複数の相続人に株式が分散すると、代表者変更登記や意思決定に支障が出るケースもあります。
定款整備、株式の集中、信託などを活用し、将来のトラブルを防ぐことが重要です。

同族会社の判定は、税務上の計算だけでなく、経営権や事業承継、登記実務にも直結します。
別表2の正確な記載とグループ把握を行うことで、予期せぬ課税や紛争リスクを防ぐことができます。

当事務所では、同族会社判定や別表2作成、株主構成の整理から、登記・相続・節税戦略まで一貫して対応しています。複雑な株主構成の会社も安心してご相談ください。