Last Updated on 2025年9月9日 by 渋田貴正
日本で不動産を購入した場合、所有権移転登記が必須です。その際に法務局へ提出する書類の一つが「住所を証する書面」です。登記簿には所有者の住所を記載する必要があるため、本人の住所を裏付ける公的書類が求められます。
日本国内に住んでいる人と、海外に住んでいる外国人とでは利用できる書類が異なります。
区分 | 日本在住者 | 海外居住外国人 |
代表的な住所証明書 | 住民票、戸籍の附票、印鑑証明書 | 住民登録証明(国による)、宣誓供述書(公証人認証)、大使館認証の宣誓供述書 |
発行機関 | 市区町村役場 | 本国の役所、公証人、大使館・領事館 |
言語 | 日本語 | 外国語(翻訳必要) |
入手難易度 | 容易 | 国によって大きく異なる |
実務上の確実性 | 高い | 宣誓供述書による方法が最も安定 |
各国制度の違いと実務上の課題
一部の国(韓国・台湾・ドイツなど)には住民登録制度が整備されており、公的な住民票のような書類が発行されます。しかし、アメリカ・イギリス・フランスのように統一的な住民登録制度がない国もあります。
この場合、役所の証明書を提出しても日本の法務局がそれを正式な「住所証明」と認めるかどうかが不明確で、さらに翻訳が必要となります。そのため、実務上は 「宣誓供述書」 を利用する方法が最も確実とされています。
宣誓供述書による解決方法
宣誓供述書とは
宣誓供述書(Affidavit)は、本人が自らの住所を宣誓したうえで署名し、現地の公証人(Notary Public)がその内容を認証した書面です。日本の登記実務においては、本人の住所を証明する書面として広く認められています。
必要な内容
- 本人の氏名と生年月日
- 本国での住所(番地まで明記)
- 「私はこの住所に居住している」旨の宣誓文
- 公証人の署名と国によっては認証印
この内容が揃っていれば、法務局における登記申請に添付可能です。
居住国の公証役場での認証
宣誓供述書を作成する際には、まず居住国の公証役場で認証を受ける方法があります。多くの国では「Notary Public(公証人)」が存在し、本人確認を行ったうえで署名に認証を与えます。例えばアメリカやカナダなどでは、公証人の認証が付された書面は強い証明力を持ち、日本の法務局においても住所証明書として利用できる場合が一般的です。
この方法のメリットは、居住国にいながら手続きを完結できる点にあります。一方で、認証を受けるには予約や手数料が必要であり、さらに日本で登記に用いるためには翻訳を添付する手間もかかります。
在日大使館・総領事館での認証
外国の大使館や領事館でも、宣誓供述書に認証を与えるケースがあります。例えば、アメリカ大使館やイギリス大使館では、在日外国人が自国住所を証明するための宣誓供述書に署名し、その場で領事認証を受けられることがあります。
ただし、すべての国が対応しているわけではありません。国によっては領事部が住所に関する宣誓供述書を扱わない場合もあるため、事前に問い合わせが必要です。
方法ごとの住所証明の方法とメリット・デメリット
海外居住外国人が住所を証する方法は大きく3つに分けられます。
方法 | メリット | デメリット |
本国の住民登録証明書 | 公的機関発行で信頼性が高い | 国によって制度がなく取得できない 翻訳が必要 法務局で受理されるか不明確 |
宣誓供述書(公証人認証) | 世界中で対応可能/法務局が認めやすい | 公証人費用がかかる/翻訳が必要 |
大使館・領事館での認証付宣誓供述書 | 日本国内で手続可能/確実性が高い | 国によっては非対応/予約が必要で手間 |
実務的には「宣誓供述書」が最も確実であり、国を問わず利用できるため広く活用されています。
書類取得の流れと具体的事例
一般的な流れ
例えば、アメリカには日本のような住民票制度がないため、住所を証明する統一的な書面は存在しません。そこで、次のように手続きを進めます。
- まず本人がアメリカ国内の公証人(Notary Public)の前で「私はニューヨーク州ブルックリン〇丁目〇番地に居住しています」と記載した宣誓供述書を作成します。
- 公証人が本人確認を行い、署名を認証します。
- その後、日本の法務局に提出するために、この宣誓供述書を日本語に翻訳し、翻訳者の署名を添えます。
- 書面を登記申請書に添付することで、住所を証する書面として受理されます。
このように、住民票のない国に居住する場合でも、宣誓供述書を利用することで日本の登記手続きを円滑に行うことが可能です。
当事務所では、海外居住外国人の不動産登記を多数サポートしてきました。宣誓供述書の作成支援や翻訳手配、大使館での認証手続の確認まで、登記に必要な準備をワンストップでご案内いたします。海外から日本の不動産購入をお考えの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。