Last Updated on 2025年8月19日 by 渋田貴正

2025年12月1日から、所得税に関する大きな税制改正が施行されます。今回の改正では、

  • 基礎控除の拡大
  • 給与所得控除の引き上げ
  • 新設された特定親族特別控除

という3つの柱が導入されます。

これにより、年末調整や確定申告における控除の計算方法が大きく変わり、特に子育て世帯や低~中所得層の方に影響があります。改正の背景は政治的な面もありここでは詳しく説明せずに決まったことだけをまとめました。以下で順番に詳しく見ていきましょう。

2025年の基礎控除の見直し

基礎控除とは、一定の所得以下の納税者全員に適用される最低限の控除です。これまでは一律48万円(ただし高所得者は段階縮小)でしたが、今回の改正で2025年、2026年は一時的に特例で拡大され、2027年に新制度に移行します。

2025年、2026年の基礎控除額の比較表

合計所得金額 給与収入だけの場合 改正前の基礎控除 改正後の基礎控除 改正後の基礎控除への特例加算 基礎控除合計
132万円以下 200万3,999円以下 48万円 58万円 37万円 95万円
132万円超336万円以下 200万3,999円超475万1,999円以下 48万円 58万円 30万円 88万円
336万円超489万円以下 475万1,999円超665万5,556円以下 48万円 58万円 10万円 68万円
489万円超655万円以下 665万5,556円超850万円以下 48万円 58万円 5万円 63万円
655万円超2,350万円以下 850万円超2,545万円以下 48万円 58万円 0円 58万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円 48万円 0円 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円 32万円 0円 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円 16万円 0円 16万円
2,500万円超 0円 0円 0円 0円

2027年以降の基礎控除額の比較表

合計所得金額 給与収入だけの場合 改正前 改正後の基礎控除 改正後の基礎控除への特例加算 基礎控除合計
132万円以下 200万3,999円以下 48万円 95万円 37万円 95万円
132万円超336万円以下 200万3,999円超475万1,999円以下 48万円 58万円 0円 58万円
336万円超489万円以下 475万1,999円超665万5,556円以下 48万円 58万円 0円 58万円
489万円超655万円以下 665万5,556円超850万円以下 48万円 58万円 0円 58万円
655万円超2,350万円以下 850万円超2,545万円以下 48万円 58万円 0円 58万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円 32万円 0円 32万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円 32万円 0円 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円 16万円 0円 16万円
2,500万円超 0円 0円 0円 0円

この表から分かるとおり、2025年と2026年分は一時的に大幅拡大されますが、令和9年分以後は58万円を基本とし、2,400万円超から段階的に縮小される仕組みになります。

例えば、給与収入が180万円程度の人の場合、従来は48万円の控除でしたが、令和7年分では95万円に増えるため、課税所得が47万円分減少し、その分所得税が軽減されます。

2025年の給与所得控除の見直し

給与所得控除とは、会社員など給与所得者が経費としてみなされる控除です。改正のポイントは、最低保障額が55万円から65万円へと10万円引き上げられたことです(所得税法第28条)。

給与所得控除額の比較表

給与等の収入金額 2024年まで 2025年から
1,625,000円まで 550,000円 650,000円
1,625,001円~1,800,000円 収入×40% – 100,000円 650,000円
1,800,001円~1,900,000円 収入×30% + 80,000円 650,000円
1,900,001円~3,600,000円 収入×30% + 80,000円 収入×30% + 80,000円
3,600,001円~6,600,000円 収入×20% + 440,000円 収入×20% + 440,000円
6,600,001円~8,500,000円 収入×10% + 1,100,000円 収入×10% + 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限) 1,950,000円(上限)

最低賃金付近やパートタイムで働く方など、比較的収入が低い層に恩恵が大きい改正です。

2025年の特定親族特別控除の新設

今回の改正で新たに導入されたのが「特定親族特別控除」です。配偶者には、「配偶者特別控除」がありますが、19歳以上23歳未満のの被扶養者にも似たような制度ができたと思えばよいでしょう。

特定親族特別控除の対象となるのは、19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入換算で123万円超188万円以下)の場合です。

特定親族特別控除額の表

合計所得金額  給与のみの場合
 
控除額

以下 以下
58万円 85万円 123万円 150万円 63万円
85万円 90万円 150万円 155万円 61万円
90万円 95万円 155万円 160万円 51万円
95万円 100万円 160万円 165万円 41万円
100万円 105万円 165万円 170万円 31万円
105万円 110万円 170万円 175万円 21万円
110万円 115万円 175万円 180万円 11万円
115万円 120万円 180万円 185万円 6万円
120万円 123万円 185万円 188万円 3万円

例えば、大学生の子どもがアルバイトで年収150万円だった場合、従来は扶養控除の対象外でしたが、この改正により「特定親族特別控除」の63万円が適用されます。親の課税所得から大きく控除できるため、実質的な税負担軽減につながります。

扶養控除の壁の引き上げ

これまで「103万円の壁」と呼ばれていた扶養親族等の所得要件が、今回の改正により大きく見直されました。改正前は、扶養控除や配偶者控除の対象となるためには、合計所得金額が48万円以下(給与収入のみの場合で103万円以下)である必要がありました。そのため、多くの家庭ではアルバイトやパートの収入を103万円以内に抑えるかどうかが重要な判断基準とされてきました。

しかし令和7年改正後は、基礎控除が95万円に引き上げられたことに伴い、扶養親族や同一生計配偶者、ひとり親の子については「58万円以下(給与収入のみの場合で123万円以下)」に要件が引き上げられました。これにより、いわゆる「103万円の壁」は「123万円の壁」となり、従来よりも収入の上限に余裕が生まれています。

改正によるまとめ

子どもの年齢区分ごとの比較表

今回の改正によって、従来は被扶養者の所得税非課税と扶養控除の対象となる収入のボーダーラインが103万円でイコールでしたが、今回の改正によって両者が別のボーダーラインになりました。この点が混乱しやすい部分だと思います。

年齢区分 子自身の所得税がかからないバイト年収上限 親が子について扶養控除を受けられる子の収入上限
16歳未満 160万円 123万円
16歳以上19歳未満 160万円 123万円
19歳以上23歳未満 160万円 123万円
23歳以上 160万円 123万円

当事務所では、今回の税制改正に伴う年末調整・確定申告の実務対応、さらには扶養控除や親族控除の適用判定まで幅広くサポートしています。複雑な控除の判定や書類作成も安心してお任せください。ぜひ一度ご相談ください。