Last Updated on 2025年1月26日 by 渋田貴正

海外で作成された遺言は日本で検認することは可能です。ただし、その手続きや有効性の確認方法については、日本で作成された遺言に比べて複雑です。本記事では、遺言検認に関する日本と海外の違いや、日本の家庭裁判所での手続きの流れ、検認における国際的なルールについて詳しく解説します。

遺言検認とは?

アメリカやイギリスなどの管理清算主義を採用している国では、遺言検認プロベート)は遺言の有効性を裁判所が確認し、遺言執行者を選任する法的手続きの一環です。一方で、日本における遺言検認は「証拠保全」を目的とした手続きであり、遺言書の偽造や改ざんを防ぐことに重点を置いています。日本での遺言検認の手続き自体は遺言の効力に影響を及ぼすものではありません。

日本の家庭裁判所での検認手続きの流れ

日本では、次のような遺言書が家庭裁判所での検認を必要とします。

  1. 自筆証書遺言
    公正証書遺言や法務局の「自筆証書遺言保管制度」に基づいて保管されているものを除き、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認を受けなければなりません。この手続きは、遺言の存在や内容を相続人に知らせること、および遺言書の現状を記録する目的で行われます。
  2. 検認手続きの申請方法
    遺言検認の申立ては、家庭裁判所に対して行います。通常、申立てから約1か月後に検認期日が設定され、手続きは1日で終了します。その後、裁判所から「検認調書」が発行されます。
遺言検認についての国際裁判管轄と検認手続き

海外に居住している被相続人が作成した遺言書についても、一定条件を満たせば日本の家庭裁判所で検認手続きが可能です。具体的には、以下の場合に日本での手続きが認められます:

  1. 被相続人の最後の住所が日本国内にあった場合。
  2. 住所不明の場合で被相続人の最後の居所が日本国内にあった場合。
  3. 日本国内に最後に住所を有していた後、海外で住所を有していない場合。

裏を返せば、遺産が日本国内に存在していても、被相続人の最後の住所が日本以外の海外だった場合、日本での裁判管轄が認められず、日本の家庭裁判所に検認を申し立てることはできません。

日本とプロベートでの検認の違い

日本での家庭裁判所における検認と、アメリカなどで行われる検認プロベート)の違いは以下の通りです。

項目 アメリカの遺言検認プロベート 日本の遺言検認
目的 遺言の有効性を裁判所が確認し、遺言執行者を選任する法的手続きの一環 遺言書の存在や現状を記録し、偽造・改ざんを防止する証拠保全の手続き
影響 遺言検認を経なければ遺言の効力が認められない場合が多い 遺言の効力には影響しないが、不動産登記など検認が必要なケースがほとんど
対象となる遺言書 全ての遺言書が対象(公正証書遺言、自筆証書遺言など) 公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言を除く自筆証書遺言
管轄機関 各州のプロベート裁判所 家庭裁判所
手続きの流れ 裁判所への申立て → 遺言の有効性確認 → 遺言執行者の選任 → 遺産分配の承認 申立て → 検認期日の設定(約1か月後) → 検認調書の作成
手続きに要する時間 数か月から1年以上(州や遺産の内容による) 約1か月(検認期日まで)+1日の手続き
法的効果 遺言の有効性と執行者の権限を法的に認める 証拠保全の効果のみ
国際裁判管轄 遺言者の居住州に基づく 被相続人の最終住所や居所が日本国内にある場合のみ
遺言の有効性の判断 州ごとの法規に基づいて有効性を確認 手続は日本法に基づき、基本的に証拠保全に限定

 

遺言の有効性や検認手続きにおける基準は国によって異なります。日本では、「手続きは法廷地法による」という原則に基づき、基本的に日本の法律を適用します。ただし、場合によっては外国法の準拠法が影響を及ぼすこともあります。特に海外などの法制度が関係する場合、専門家の助言を得ながら慎重に対応することが重要です。

結局、日本の家庭裁判所で海外で作成された遺言を検認する場合、日本の家庭裁判所で行う手続きは証拠保全が主な目的となります。国際的な相続手続きは複雑なケースが多いため、適切な法律知識を持つ専門家に相談しながら進めることをおすすめします。