「真正」とは

たまに法律に「真正」という言葉が出てきます。「真」で「正」しいということでポジティブな響きがある言葉ですが、法律上はどのような意味を持つのでしょうか。

法律上「真正」と出てきたら、特定の文書などが真実のもの、つまり「本物」であり、「改ざんされていない」ことを意味します。

相続の場面では、「真正」という言葉は出てきません。どちらかというと、相続でもめたときの訴訟になったときなどに重要になる言葉です。

民事訴訟法では以下のように規定されています。

民事訴訟法(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

私文書とは、公文書つまり役所や公務員が職務上作成する文書以外の文書をいいます。例えば、遺言書や遺産分割協議書相続分の譲渡証明書、委任状などは私文書にあたります。

これらの書類は、本人の署名や押印があれば真正に成立したものと推定されます。ただ、この規定は裁判においての話ですので、実際の現場では単なる署名や押印だけでは足りない場面があります。

例えば、相続の場面では、本当に相続人の意思で書類が作成されたことを証明するために、単なる押印ではなく、実印による押印+印鑑証明書の添付が必要となります。

「真正」の反対

真正の反対の概念として、偽造や改ざんがあります。

偽造とは、文書や証拠が作成時の状態ではなく、不正に作り出された「真」ではない書類であることを示します。例えば、偽造された遺産分割協議書は、内容や押印が全て虚偽であるか、存在しない分割協議を装って作られたものです。

実際には、遺産分割協議書には相続人の実印と印鑑証明書の添付を行うことで、偽造を防止しています。

改ざんとは、元々真正であった文書や証拠が、その後に不正に変更された「正」ではない書類を指します。改ざんされた文書は、元の内容が変更されているため、真実を反映していません。例えば、分割内容や割合が変更された遺産分割協議書などです。

いずれにしても、相続の現場では真正ということは実印などで担保されていますので、それほど気にすることはないかもしれません。