死因贈与による不動産登記
死因贈与の贈与契約を行った場合は、解除などが行われない限り、贈与者が死亡したときには、死因贈与を原因として、所有権の移転登記をすることになります。
この場合は、受贈者を登記権利者、贈与者の相続人全員(死因贈与執行者が定められていれば死因贈与執行者)の共同申請により行います。受贈者が単独では登記申請できません。
死因贈与執行者が受贈者である場合は、受贈者が登記権利者と登記義務者の両方を兼ねることになります。ここで重要なのは、死因贈与執行者の指定が公正証書である死因贈与契約書により行われているかどうかということです。公正証書で死因贈与執行者が指定されていれば、それで死因贈与執行者を証明できますが、公正証書ではない死因贈与契約書の場合は、死因贈与契約書に贈与者が実印を押印して、贈与者の印鑑証明書が必要です。もし贈与者の実印が押印されていなければ、相続人全員の承諾書と印鑑証明書が必要となります。贈与者の印鑑証明書が残っていればよいのですが、死亡した後には印鑑証明書は取れないので、公正証書によらない場合は、そのタイミングで贈与者の印鑑証明書もセットで保存しておく必要があります。最も安心なのは、死因贈与契約について公正証書にて作成するということです。
贈与契約書以外に必要な書類としては、
1)贈与者が死亡したことが分かる戸籍
2)登記識別情報または登記済証
3)受贈者の住民票
です。
死因贈与による仮登記を申請しておこう
死因贈与契約と死亡までにはそれなりの期間が空く場合があります。そのため、死因贈与契約に基づいて仮登記を行うことが有効です。万が一死因贈与の目的不動産が第三者に売買されてしまうと死因贈与による登記をすることができなくなります。そうしたことを防止するために、贈与者が生きている間に死因贈与の仮登記を行っておくことが重要です。
例えば、甲と乙が離婚したけど、甲所有の不動産を乙に財産分与する代わりに、甲と乙の子である丙に不動産を引き継がせることを担保するために、甲と乙の間の死因贈与による仮登記を申請するといったことが考えられます。
死因贈与の仮登記は、贈与者と受贈者の共同申請によって行うほか、贈与者の承諾書があれば受贈者が単独で申請することができます。承諾書は贈与者が実印を押印して印鑑証明書をセットで受贈者に渡すほかに、死因贈与契約書を公正証書で作成した場合には、公正証書に仮登記の申請を承諾する旨を記載しておくことで承諾書に代えることができます。
ただし、死因贈与は贈与者の一存で解除することが可能です。そのため、仮登記を行っていたとしても、贈与者が死因贈与を解除して、別の者に不動産を売却してしまうと、受贈者としては仮登記の抹消に応じなければなりません。
とはいっても、例えば負担付の死因贈与で、すでに負担の履行が行われているケースのように死因贈与の解除が制限されるケースでは、いくら贈与者が第三者に対象不動産を売却しても受贈者がそれに応じる必要はありません。こうしたケースで仮登記を行っておけば登記の順位も保全できます。仮登記は登録免許税も1,000円とコストもほぼかからないので、死因贈与契約を行った際には仮登記もセットで行うとよいでしょう。
当事務所では、死因贈与の登記のほかにも、公正証書による死因贈与契約書の作成のサポートも行っています。お気軽にお問い合わせください。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。少しでも相続人様の疑問や不安を解消すべく、複数資格を活かして相続人様に寄り添う相続を心がけている