Last Updated on 2026年1月14日 by 渋田貴正

中古の固定資産を購入した際、「耐用年数はどう決めればいいのか」という疑問は、多くの方が必ず直面します。新品であれば法定耐用年数をそのまま使えば足りますが、中古資産の場合は複数の選択肢があり、その選択次第で減価償却のスピード、ひいては毎年の税額が大きく変わります。税務の世界では、中古資産の耐用年数は初期設定が重要です。

中古資産の耐用年数の全体像

中古資産の耐用年数の決め方は、次の三つに整理できます。法定耐用年数を使う方法、残存耐用年数を見積もる方法、そして一定の場合に使える簡便法です。どれを選んでもよいわけではなく、取得時の状況や支出内容によって使える方法が限定されます。

区分 概要 実務上の位置づけ
法定耐用年数 新品と同じ耐用年数 安全だが長期化しやすい
残存耐用年数 使用可能期間を合理的に見積 理論上最も実態に近い
簡便法 算式で機械的に算定 実務で最も使われやすい

法定耐用年数による場合

中古資産であっても、見積りを行わず、法定耐用年数で減価償却することは認められています。この方法は処理が簡単で、税務調査でも説明しやすい反面、本来より長い期間で償却することになりがちです。重要なのは、中古資産について残存耐用年数や簡便法を選択できるのは、「取得して事業の用に供した事業年度」に限られるという点です。初年度に法定耐用年数を選択してしまうと、後から耐用年数を短くすることは原則としてできません。税務では、最初の選択がすべてを決める場面が少なくありません。

残存耐用年数による場合

中古資産を取得した場合、その資産が今後どれくらい使用できるかを合理的に見積もり、その年数を耐用年数とすることができます。これが残存耐用年数です。たとえば、建築後8年の建物を取得した場合、法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数を基礎に考えることになります。ただし、実務上は「合理的な見積り」が難しいケースも多く、使用状況や損耗の程度を客観的に説明できない場合は、この方法を取りにくいのが実情です。

簡便法による中古耐用年数を使える場合

残存耐用年数の合理的な見積りが困難な場合に限り、簡便法を用いることができます。とはいえ、実務上は合理的な見積もりの可能性をすっ飛ばして簡便法を使う場面も少なくありません。簡便法は、中古資産の耐用年数を一定の算式により機械的に算定する方法で、中古車や中古建物で頻繁に使われます。ただし、簡便法は万能ではなく、資本的支出の有無や金額によっては使えないケースがあります。

中古資産の耐用年数に簡便法を用いる場合の数式

簡便法には、次の二つの算式があります。

法定耐用年数の全部を経過した中古資産の場合

残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%
算出した年数に1年未満の端数がある場合は切り捨て、2年未満の場合は2年とします。

法定耐用年数の一部を経過した中古資産の場合

残存耐用年数 = 法定耐用年数 − 経過年数
こちらも、最終的に1年未満の端数は切り捨て、2年未満は2年とします。

よく4年落ちの社用車で節税、みたいな話を聞きますが、それは子の簡便法を使っているからです。乗用車の法定耐用年数は6年です。法定耐用年数の全部を経過した中古車について簡便法を用いると、「6年×20%=1.2年」となります。この1.2年は端数切り捨てで1年となりますが、2年未満は2年とするルールがあるため、結果として耐用年数は2年になります。ただし、後述する資本的支出の金額によっては、この処理が使えない場合があります。

資本的支出がある場合の耐用年数の整理

中古資産について簡便法を使えるかどうかを判断するうえで、最も重要な変数が資本的支出です。資本的支出とは、資産の価値や使用可能期間を高めるために行う改修や改良などの支出をいいます。中古資産を事業の用に供するために行った改修や改良が、どの程度の金額になるかによって、耐用年数の扱いが大きく変わります。

ここで整理すべき変数は、次のとおりです。
・資本的支出の有無
・資本的支出の金額が中古資産の取得価額の50%を超えるか
・資本的支出の金額が再取得価額(新品価額)の50%を超えるか

これらを踏まえた整理は、次の表のとおりです。

資本的支出 資本的支出の額 簡便法 耐用年数の考え方
なし 残存耐用年数または簡便法を選択可
あり 取得価額の50%以下 要件を満たせば簡便法適用
あり 中古としての購入価額の50%超 不可 合理的見積り又は法定耐用年数
あり 新品価額の50%超 不可 新品同様として法定耐用年数

資本的支出がある場合は耐用年数の判定が一気に複雑になりますが、実務上、中古資産の取得と同時に多額の資本的支出が発生するケースはそれほど多くありません。多くの場合は、通常の修繕や軽微な改修にとどまり、耐用年数の判定に大きな影響を与えない範囲に収まります。結局多くの中古固定資産の耐用年数の判定は、簡便法で行われています。

中古資産の耐用年数は、単なる計算の話ではなく、最初の判断の積み重ねです。とくに会社設立直後は、税務処理の優先順位が下がりがちですが、この段階での選択が、数年間の税負担を左右します。中古資産の取得や会社設立を検討している場合は、取得前の段階から税務の視点を入れることで、無理のない形での償却設計が可能です。当事務所では、税務を中心に、会社設立や初期投資の判断まで含めた実務サポートを行っていますので、具体的なケースについて不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。