Last Updated on 2025年11月29日 by 渋田貴正

会社の税務や相続対策を考える中で、「自分の会社は同族会社なのか」「特定同族会社と何が違うのか」ということはあまり気にしないポイントです。実は、この区分を正しく理解しておくことは非常に重要です。役員給与、会社と個人の取引、留保金課税、事業承継まで、会社の全体設計に関わってくるからです。

同族会社とは何か

同族会社とは、株主または出資者のうち「3人以下のグループとその関係者」が会社の議決権の過半数(50%超)を持っている会社のことです。この「関係者」には、親族・生計を共にする人・使用人・その家族なども含まれます。

つまり、経営と所有が少数の人に集中しやすい会社が同族会社に当たります。家族経営・親族中心で運営される中小企業の多くは、税法上は同族会社と判断されます。

同族会社とは何か

同族会社とは、上記の同族会社の定義に当てはまらない会社です。上場企業や、多数株主が分散している会社は非同族会社となります。

特定同族会社とは何か

特定同族会社とは、同族会社のうち「被支配会社」に該当する会社を指します。
被支配会社とは、ひとつの同族関係者グループが株式の50%超を持ち、かつその会社の資本金が1億円超である会社です。

特定同族会社が重要なのは、「留保金課税」という特別な税制の対象となり得るためです。
留保金課税とは、利益を社内にため込むことで配当を避け、個人への税負担を回避する行為を防ぐ制度です。特定同族会社に該当すると、留保した利益の一部に追加の法人税が課される場合があります。

区分 同族会社 特定同族会社
基本となる判定主体 上位3つの同族関係者グループ 上位1つの同族関係者グループ
株式の保有割合 議決権の過半数(50%超)を保有 議決権の過半数(50%超)を保有
資本金の要件 資本金額は問わない 資本金1億円超であることが必要
対象となる目的 行為計算否認など、同族経営に特有の問題を把握するため 留保金課税(利益の溜め込み防止)の適用要件となるため
最終的にどうなるか 一般の中小企業はほとんど同族会社に該当 資本金1億円超の中堅企業やホールディング会社が該当しやすい

下記は、3つの類型の違いをわかりやすく比較した表です。

区分 同族会社 同族会社 特定同族会社
判定基準 3人以下とその関係者が株式の過半数(50%超)を保有 同族会社の判定基準に該当しない 同族会社かつ、資本金1億円超などの要件を満たす被支配会社
役員給与の制限 同族会社としての制限が強い(恣意的な利益調整に注意) 通常の法人税のルールによる制限のみ 同族会社としての制限があり、実務上より厳しく見られることもある
会社と個人の取引
(家賃・貸付金利息など)
相場とかけ離れると否認リスクが高い 通常の法人と同様に判断される 同族会社と同様に慎重な設定が必要で、否認リスクも高い
留保金課税 原則として対象外 対象外 要件を満たすと対象となる可能性あり
行為計算否認
(恣意的な取引調整への規制)
適用される。親族・関係者取引は要注意 適用されない(通常の商慣習で判断される) 適用される。特にオーナー色の強い取引は慎重な検討が必要
相続税・事業承継への影響 オーナー株式が集中しやすく、株価が高くなりやすい 株主が分散していることが多く、評価が安定しやすい 株価評価が高くなる傾向があり、計画的な承継対策が重要

この比較表のとおり、特定同族会社は税務上もっとも注意を要する区分といえます。とくに留保金課税の対象となる可能性があるため、利益の扱いや配当方針について慎重な検討が必要です。

もっとも、実務上「特定同族会社」に該当する企業はかなり限られています。
特定同族会社の成立には、

・同族関係者による過半数の支配に加えて
・資本金が1億円超であること

という二つのハードルがあるためです。

同族支配でありながら資本金1億円超という会社は、中小企業全体の中では多くありません。特に資本金1億円の壁は、外形標準課税などほかにも様々な影響があるため、このバーを越えるにはベンチャー企業などそもそも株主が多い非同族会社などが多いです。そのため、一般のオーナー企業の大半は「同族会社」には該当しても「特定同族会社」には該当しないのが実情です。

ただし、資本金を増加させた場合や、持株会社化によって資本金が膨らんだ場合には、知らないうちに特定同族会社となるケースがあり得ます。いったん該当すれば留保金課税の影響が大きいため、会社規模が拡大するタイミングでは特に注意が必要です。

同族会社で特に注意すべき税務ポイント

同族会社では、会社と社長や親族との取引が「第三者取引と同じ基準」で判断されます。これは税務の世界では非常に重要な考え方で、同族会社に特有の最大のリスクといえるのが「行為計算の否認」という制度です。

行為計算の否認とは、簡単にいえば「不自然な取引で税金を安くしようとしていないか」を税務署がチェックする仕組みのことです。
同族会社は経営陣と株主が重なりやすく、会社と個人の境界があいまいになりやすいという特徴があります。そのため、税務署は「社長や親族との取引には利益操作の余地がある」と考えて、第三者間の取引よりも慎重に見ています。

実務上、次のようなケースは行為計算否認の典型例として扱われます。

・社長の自宅を会社に貸し、相場より高い家賃を会社が支払っている
・社長が会社に貸したお金の利率が極端に低い、あるいは無利息で貸している
親族が会社から給与を受けているが、仕事内容が曖昧で実態に見合わない金額
・会社から親族に資産を売却する際に、明らかに安い金額で譲渡している
・逆に、個人から会社へ不動産を売却する際に、通常より高い価格を設定している
・役員貸付金や役員借入金が不自然に増減している
・個人名義の費用を会社に負担させている(プライベート支出の混入)

これらはすべて、「独立した第三者同士であれば成立しない取引ではないか?」という視点で判断されます。
その結果、税務署が不自然と判断すれば、

・家賃の過払い部分を損金不算入
・利息の不足分を会社側の受取利息として課税
・給与の一部を損金否認(役員賞与扱い)
・不動産の価格差を「利益供与」として課税
・会社が負担した個人費用を「役員賞与」として課税

など、会社にも社長個人にも追加の税負担が発生する可能性があります。

実務的には、「同族会社で最も気にすべきポイントは行為計算否認」といっても過言ではありません。
役員給与の届出制度や定期同額給与のルールももちろん重要ですが、実際の税務調査で問題になる頻度が最も高いのは、会社と個人(社長・役員・親族)との間の取引です。

とくに次のような会社では注意が必要です。

・社長が個人でも不動産を多数所有している
・役員貸付金・役員借入金が慢性的に発生している
親族が多数関与している
・社長個人と会社の金銭・資産移動が多い
・プライベートと会社の支出の線引きが曖昧

こうした会社は、適正な契約書の作成や相場調査、実態に合った給与設定など、日常の会計・税務処理を丁寧に整えておくことが、リスクの最小化につながります。

さらに、行為計算否認の判断は「書面より実態」が重視されます。
契約書があっても実態が伴っていなければ否認されますし、逆に実態がしっかりしていれば、契約書が多少不完全でも救済されるケースがあります。

同族会社の場合、「会社と個人の境界線を常に意識する」ことが最も大切であり、税務署からの疑念を避けるための事前対策が欠かせません。

特定同族会社で特に注意すべき税務ポイント

特定同族会社では、利益をため込みすぎると留保金課税の対象となります。

留保金課税が発生するのは、

・利益が出ている
・配当を行わず留保が増え続けている
・資本金1億円超で被支配会社に該当する

というケースです。
「会社にお金を残しておくことが悪い」というわけではありませんが、留保が著しく多い場合は税務上の不利益につながることがあります。

また、同族会社は将来の相続にも影響が出やすい点に注意が必要です。とくに非上場株式の評価は会社の資産や利益の状況に左右され、社長の死亡時には相続税評価が高額になることがあります。さらに、会社が事業に使っている土地については「小規模宅地等の特例」の対象となるケースがありますが、一定の要件を満たした特定同族会社であるかどうかが判定に関わる場面もあります。会社の土地をどのような形で保有しているかによって、相続税の軽減額が大きく変わることもあるため、税務上だけでなく相続の観点でも早めの検討が重要です。

会社がどの区分に当たるかは、株の保有割合だけでなく、「実質支配関係」「法人同士の持ち合い」「資本金」「事業承継の状況」など複数の要素を総合して判断します。誤った判断をすると、役員給与が否認されたり、留保金課税の対象となったり、相続税評価が高くなるなどのリスクがあります。

当事務所では、税務と登記の両面から会社の区分判定と対策をご提案しています。「自分の会社がどれに当たるのか」「どのように改善すべきか」に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。会社の未来を見据えた安全な運営と相続対策は、専門家に相談することで大きく前進します。