Last Updated on 2025年9月25日 by 渋田貴正

消費税法では、国内で行われる取引は課税対象ですが、国外に向けた資産の譲渡や役務の提供は「輸出免税」として消費税が課税されない扱いになります。
ただし、相手が「外国法人だから必ず免税」とは限らず、国内に支店や営業所(外国会社の登記をした恒久的施設など)がある場合は、課税対象となるケースがあるので注意が必要です。今回は、日本に支店や営業所を持つ海外の会社と取引する際の消費税のポイントを説明します。

国内支店を有する外国法人への役務提供には消費税がかかることも

まず原則として、国内支店を通じて行われた役務提供は「非居住者に対する役務提供」には該当しません。したがって輸出免税の対象外となり、日本国内の取引として課税されます。たとえば契約書の宛先は海外本店になっていたとしても、実際の依頼や報酬の受け渡しが国内支店を経由しているのであれば、それは国内支店へのサービス提供と評価されます。

一方で例外として、国外本店との直接取引であり、国内支店が全く関与していない場合には、輸出免税の対象となります。また、国内支店が存在していても、その支店の業務がサービス提供の内容と無関係であれば、国外消費と評価できるため輸出免税が認められる余地があります。

つまり「海外本社宛にサービスを提供したつもりでも、実際には国内支店が窓口になっていた」という場合は、国内取引とされ消費税が課されるということです。

この規定を理解する上で大切なのは、契約書の名義だけでは判定できないという点です。形式上は海外本社と契約していても、実態として国内支店が窓口となっていれば国内取引です。逆に、国内支店が存在していても一切関与せず、本店に直接サービスを提供しているのであれば輸出免税が認められる可能性があります。

たとえば、以下のようなケースが典型です。

  • 契約書は海外本社と結んでいるが、日常的なやり取りや検収業務は東京支店が担当している → 国内支店への役務提供と評価され課税対象。

  • 契約も打ち合わせも海外本社と行い、国内支店は全く関与していない → 非居住者へのサービス提供として輸出免税の対象。

  • 国内支店はあるが、その支店は製造や物流のみを担当し、提供するサービスとは関係がない → 本店へのサービス提供とみなされ輸出免税対象。

貨物輸出は支店の有無にかかわらず免税

貨物の輸出については、役務(サービス)の提供とは考え方が異なります。
消費税法では「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」は、取引相手が国内支店を有する外国法人であっても輸出免税の対象とされています。つまり、モノの輸出であれば、国内支店の有無は免税の可否に影響しないのです。

この点は「国内に支店や営業所があれば課税になる」というポイントだけで判断すると混同しやすいため注意が必要です。

この違いは、消費税の性格と国際取引の課税ルールの違いにあります。

貨物輸出の場合は、実際に日本から国外に移転しており、消費の場所が最終的には国内ではなく海外にあることが明確です。そのため日本で消費税を課すと、輸入国でも課税され二重課税になってしまいます。この不合理を避けるために輸出免税とされています。

一方、役務提供の場合は、サービスは消費が発生する場所で課税すべきという原則に基づきます。国内支店や営業所がサービスを受けているのであれば、実際の消費は日本国内で行われたと評価されます。したがってたとえ契約相手が海外本店であっても、国内拠点が受益者であれば国内取引とされ、一度は日本の支店や営業所を経由したとして日本の消費税が課税されます。

輸出免税の適否をめぐる代表的な事例を以下に整理します。

事例 内容 輸出免税の可否 理由
情報提供サービス 日本法人が外国法人A社に市場調査データを提供し、国内営業所を通じて引き渡したケース 対象外(課税取引) 国内支店を経由しており、国内消費と評価されるため
コンサルティング 日本法人が外国法人B社本店と直接契約し、欧州本社向けにオンライン会議で助言したケース 対象(輸出免税) 本店との直接取引で国内支店が関与していないため
ソフトウェア開発 日本法人が外国法人C社にシステムを納品し、国外本店に送付したが国内支店が保守を担当するケース 対象外(課税取引) 国内支店が関連業務に関与しているため
貨物輸出 日本法人が外国法人D社に製品を輸出したケース。D社は国内に支店を有するが製品は国外に直接輸出された 対象(輸出免税) 貨物輸出は国内支店の有無に関わらず国外消費となるため
研修サービス 日本法人が外国法人E社の依頼で日本国内の従業員研修を実施したケース 対象外(課税取引) 実際の受益者が国内支店の従業員であり国内消費とみなされるため
海外向け広告サービス 日本法人が外国法人F社本店と契約し、海外市場向けの広告キャンペーンを企画したケース 対象(輸出免税) 国内支店は関与しておらず本店宛の国外消費と評価されるため

外国会社の登記との関連

ここで重要になるのが「国内支店の有無」です。
外国会社が日本で継続的に営業活動を行う場合、会社法に基づき「外国会社の登記」をし、支店の所在地や代表者を登記簿に記載しなければなりません。

この「国内支店として登記された存在」が、消費税法上の取扱いにも直結します。

  • 登記された国内支店を通じて行われる取引 → 国内取引、課税対象
  • 登記された国内支店が関与せず、本店との直接取引 → 輸出免税の余地あり

したがって、外国会社の登記情報は、輸出免税の可否判断にも実務上大きく関わるのです。

取引先の海外の会社が日本に支店や営業所を設けている場合の消費税の課税関係は以下の通りです。

区分 国内支店の関与 消費税の取扱い 外国会社の登記の要否
情報提供サービス 営業所を経由して引渡し 課税対象(免税なし) 国内に営業所を置いて継続取引を行うため登記が必要
コンサルティング 本店宛で支店は関与しない 輸出免税対象 国内支店が関与しないため登記は不要。ただし別途国内で営業活動をする場合は登記義務あり
ソフトウェア保守 国内支店が関連業務を担当 課税対象(免税なし) 国内支店が継続業務を担うため登記が必要
貨物輸出 支店の有無は不問 輸出免税対象 相手が国内で営業活動をしていれば登記が必要。ただし輸出免税の可否自体には影響しない
研修サービス 国内支店の従業員が受益者 課税対象(免税なし) 国内拠点を通じてサービス提供を受けるため登記が必要
広告サービス 本店契約で支店は関与しない 輸出免税対象 国内で継続取引がなければ登記不要。国内支店が別途活動していれば登記が必要

輸出免税の適用は単に「海外相手かどうか」で決まるのではなく、特にサービスの提供にあっては国内支店の有無、契約の当事者、実際の受益者など多角的に判断されます。
特に外国会社の登記と税務は密接に関係しており、会社法と消費税法の両面からの検討が必要です。

当事務所では税理士・司法書士として、外国会社の登記から消費税の実務判断までワンストップでご支援しています。輸出免税の可否や登記対応に不安がある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。