Last Updated on 2026年3月25日 by 渋田貴正

個人事業主で仕事をしていた方が法人成りして会社を設立し、そのときに個人事業の廃業届を提出したとします。その後、事情が変わって、今度はまた個人名義で事業を始めることがあります。このときに問題になるのが、「以前の青色申告承認がまだ使えるのか」「もう一度青色申告承認申請書を出さなければならないのか」という点です。昔の個人事業主時代の青色申告の扱いです。「昔、青色申告の承認を受けていたから、またそのまま青でいけますよね」と思う方もいらっしゃいますが、慎重に確認が必要です。

このテーマでまず大切なのは、法人成りしたこと自体で、昔の青色申告が当然に全部消えるとまではいえないという点です。他方で、何も確認せずに「そのまま使える」とも言い切れません。実務では、次のような事情によって結論が分かれます。

・青色申告の取りやめ届出書を出したかどうか
・青色申告の承認取消しを受けていないか

つまり、同じ「法人成り後に個人へ戻る」という場面でも、書類の提出履歴によって、青色申告の扱いが変わるということです。ここは、見た目以上にケース分けが大事です。

廃業届を出しただけだと青色申告承認はどうなる?

個人事業をやめるときに提出する廃業届と、青色申告をやめるための届出は、同じではありません。つまり、個人事業の廃業届を出したからといって、それだけで青色申告の承認まで自動的に終わるとは限りません。

たとえば、個人事業をしていた方が法人成りし、個人の事業は止めたものの、青色申告の取りやめ届出書までは出していなかったというケースがあります。この場合、少なくとも考え方としては、青色申告の承認そのものは別の手続ですので、当然消滅するわけではありません。

ただし、年数が経っていると状況が不明瞭なケースもあるので、廃業届だけで青色申告の取りやめ届出書を出していない場合でも、再度個人事業を始める年には、改めて税務署に問い合わせるなどして状況を確認し、必要に応じて青色申告承認申請書を提出した方が安心です。

一方、青色申告の取りやめ届出書を出している場合より結論がはっきりしています。青色申告の取りやめ届出書は、その名のとおり、青色申告をやめるための届出です。したがって、法人成りのときにこの届出まで提出していたのであれば、あとで再び個人事業主になったとしても、昔の青色のステータスがそのまま残っているわけではありません。

たとえば、個人でネット販売をしていた方が法人成りするときに、廃業届とあわせて青色申告の取りやめ届出書も提出していたとします。その後、法人をたたんだわけではないものの、別事業を個人で再開した場合、このときは昔の青色承認に乗るのではなく、新しく青色申告を始めるものとして考えた方が安全です。

このケースでは、再度個人事業を開始したタイミングに応じて、青色申告承認申請書の提出期限を守る必要があります。ここを逃すと、その年は白色申告になってしまうことがあります。せっかく再開したのに、最初の年から控除面で不利になるのはもったいないです。

個人事業主の青色申告が取り消されるケース

さらに注意が必要なのが、単なる取りやめではなく、税務署長による青色申告承認の取消しです。取消しというのは、青色申告をするための前提が崩れた場合に行われるものです。

青色申告が取り消される代表的なケースとしては、次のようなものがあります。

・帳簿や書類をきちんと備え付けていない場合
・取引の記録や保存が不十分な場合
・税務署の指示に従わない場合
・売上を隠すなど、仮装や隠ぺいがある場合

青色申告は、優遇を受ける代わりに、ルールを守ることが前提になっている制度です。いわば、信頼のうえに成り立つ制度です。そのため、申告を長くしていなかったり、帳簿が崩れていたりすると、「青色申告をするにふさわしいか」が問題になります。

ただし、法人のように2年間無申告や期限後申告になったからといって青色承認が取消しになることは、個人事業主の場合はありません。そのため、数年間のブランクが空いていたとしても青色申告の承認自体は通常であれば生きています。

個人事業の再開時は青色申告以外にも注意

再度個人事業主になるときは、青色申告だけ確認すれば終わりというわけではありません。開業届、消費税の届出、インボイスの関係、従業員がいれば給与支払事務所等の届出など、周辺の手続も一緒に見ておく必要があります。

つまり、「青色申告が使えるかどうか」は重要ですが、再開した事業の内容、売上見込み、人を雇うかどうか、法人と個人の役割分担なども含めて整理した方が安全です。特に、法人成りしたあとに個人へ戻るケースでは、法人と個人の線引きがあいまいになると、税務上も説明しにくくなります。

再スタートの場面では、次の点を順番に確認すると整理しやすいです。

確認項目 確認する内容
法人成り時の届出 廃業届だけか、青色申告の取りやめ届出書も出しているか
取消しの有無 青色申告承認取消しの通知を受けていないか
再開時期 再開した日がいつか。改めて提出する場合、青色申告承認申請書の提出期限に間に合うか
今後の運営方法 帳簿をきちんと付けられるか、青色申告の要件を満たせるか

個人事業主が法人成りした後で再度個人事業主になったときの青色申告の扱いは、単純に一言で決められるものではありません。廃業届だけなのか、青色申告の取りやめ届出書も出しているのか、取消しがあるのか、法人成り後も確定申告をし続けていたのかによって、結論が変わります。

もし、ご自身のケースで「昔の青色申告はまだ使えるのか」「再申請が必要なのか」「法人成りのときの書類が今どう効いてくるのか」がはっきりしないようでしたら、過去の届出書や申告書を一緒に見ながら整理するのが安心です。当事務所では、法人成り時の手続と、その後の個人の再開手続をつなげて確認できます。