Last Updated on 2026年2月22日 by 渋田貴正

外国法人の法人税を検討する際、多くの方は不動産賃料や不動産売却といった分かりやすい取引を思い浮かべます。しかし実務上、それと同じくらい重要なのが「その他の国内源泉所得」と呼ばれる類型です。名称だけを見ると非常に抽象的で、「その他」という言葉から、例外的・曖昧なもののように感じられるかもしれません。しかし実際には、法人税法および政令により具体的に範囲が定められており、日本で法人税の課税対象となるかどうかを判断するうえで、見落とすことのできない重要な類型です。

外国法人の国内源泉所得の全体像

外国法人に対する法人税は、国内源泉所得に限って課税されます。そのため、まずはどの類型に該当するかを確認することが出発点になります。全体像を整理すると次のとおりです。

類型 内容の概要
① 恒久的施設(PE)に帰属する所得 日本の支店や事務所などを通じて生じる事業所得
② 国内にある資産の運用・保有による所得 配当、利子、使用料などの投資的所得
③ 国内にある資産の譲渡による所得 日本の不動産や一定の株式の譲渡益
④ 人的役務提供事業の対価 日本で提供したサービスの報酬
⑤ 国内不動産等の貸付けによる所得 日本の不動産の賃料収入
⑥ その他の国内源泉所得 上記に該当しないが、日本との関係から課税対象となる所得

今回解説するのは、この⑥「その他の国内源泉所得」です。

外国法人が課税される「その他」の中身は政令で具体的に定められている

「その他の国内源泉所得」と聞くと、税務署の解釈次第で広がるような、不確定な概念のように感じるかもしれません。しかし実際には、その範囲は法人税法1および法人税法施行令により明確に定められています。

例えば、次のような所得が該当します。

区分 内容 具体例 実務上の典型ケース
① 保険金・補償金・損害賠償金 国内で行う業務又は国内にある資産に関して受ける保険金、補償金又は損害賠償金 ・不動産の火災保険金
・賃貸物件の損害補償金
・契約違反による損害賠償金
外国法人が所有する日本の不動産の損害に対する保険金を受け取る場合など
② 国内資産の贈与による所得 国内にある資産の贈与を受けたことによる所得 ・日本の不動産の無償取得
・日本企業からの資産の無償譲渡
グループ会社間で日本の資産が無償移転される場合など
③ 埋蔵物・遺失物による所得 国内において発見された埋蔵物又は拾得された遺失物に係る所得 ・日本国内で発見された埋蔵物
・拾得物の所有権取得による経済的利益
不動産開発中に埋蔵物が発見された場合など(稀ですが制度上明確に規定)
④ 懸賞・賞金等 国内で行う懸賞募集に基づいて受ける金品その他の経済的利益 ・日本企業の懸賞金
・コンテスト賞金
日本国内の企業が実施するキャンペーン等の賞金を外国法人が受け取る場合
⑤ その他の経済的利益 国内で行う業務又は国内にある資産に関して供与を受ける経済的利益 ・契約解除補償金
・立退料
・和解金
日本の不動産の明渡しに伴う立退料を外国法人が受け取る場合など

これらは一見すると特殊な事例に見えますが、実務では決して珍しいものではありません。特に重要なのが、保険金や損害賠償金です。日本国内の業務や資産に関連して受ける保険金、補償金、損害賠償金は、国内源泉所得に該当するとされています。つまり、外国法人が日本に支店を持っていなくても、日本にある資産に関連して補償金を受け取れば、日本で法人税の課税対象となる可能性があります。

例えば、外国法人が日本の賃貸不動産を所有しており、その建物が災害で損壊したとします。その際に日本の保険会社から保険金を受け取った場合、この保険金は「その他の国内源泉所得」に該当します。

この場合の判断の流れは次のとおりです。

日本にある資産に関連している
→ 国内源泉所得に該当
→ 外国法人の法人税の課税対象

ここで重要なのは、「保険金だから課税されない」という考え方は通用しないという点です。保険金であっても、日本国内の資産に関連する経済的利益であれば、国内源泉所得として課税対象になります。

PEがなくても課税対象になる

この類型は、恒久的施設(PE)がなくても課税対象になる点です。

項目 PEあり PEなし
課税の可能性 あり あり
課税の理由 PE帰属所得または国内源泉所得 国内源泉所得として課税
申告の必要性 原則として法人税申告が必要 所得の内容により法人税申告が必要

つまり、日本に支店も従業員も契約代理人も存在しない外国法人であっても、日本の資産に関連して経済的利益を受け取れば、日本の法人税の課税対象になる可能性があります。

この「その他の国内源泉所得」は、頻繁に発生する所得ではありません。しかし、発生した場合には見落とされやすく、後から申告漏れが指摘される原因になりやすい類型です。

特に次のようなケースでは注意が必要です。

・日本の不動産に対する補償金
・日本企業との契約に関連する損害賠償金
・日本にある資産に関する経済的利益

これらは、不動産賃料や売却益のように「典型的な課税取引」として認識されにくいため、税務上の検討から漏れてしまうことがあります。しかし、税法上は明確に国内源泉所得として整理されており、課税対象になる可能性があります。

この類型は、「曖昧な所得をまとめたもの」ではありません。むしろ、他の類型に該当しないものの、日本との経済的結び付きが明確な所得を取りこぼさないための、いわば最後の受け皿の役割を持っています。

外国法人の税務では、「これはどの類型にも該当しないから課税されない」と判断するのではなく、「その他の国内源泉所得に該当しないか」という視点で確認することが重要です。この確認を怠ると、日本での申告義務を見落とすことにつながります。

当事務所では、外国法人の国内源泉所得の判定から法人税の申告対応、さらに外国会社の登記手続まで含めて一体的にサポートしています。日本の資産や契約に関連して収益や補償金を受け取る予定がある場合には、取引が発生する前の段階で整理しておくことが、最も安全で効率的な対応につながります。