Last Updated on 2026年2月12日 by 渋田貴正
さまざまな事情で日本で法人番号が必要になる海外の会社は多いです。そこで出てくるのが、日本で法人番号を取ったら、日本で毎年法人税の申告をしなければならないのではないか、という疑問です。実際、次のような場面で法人番号の取得を求められることがあります。
・日本の決済会社や金融機関と契約する場合
・日本法人と業務委託契約を締結する場合
・日本の広告媒体やクラウドサービスを利用する場合
・日本企業から継続的に報酬を受け取る場合
・日本国内のイベントや展示会に一時的に参加する場合
・日本の取引先から税務情報提出を求められる場合
これらはいずれも、日本に支店や事務所がなく、従業員もいないケースが想定されます。つまり、日本にPE(恒久的施設。日本にある事業拠点のこと)がない状況です。それでも法人番号は必要になることがあります。ここで誤解してはいけないのは、法人番号と法人税申告義務はイコールではないという点です。番号はあくまで法人の識別のためのもので課税は実態で判断されます。
法人番号の役割とは?課税の決定ではなく法人の特定のためのもの
法人番号は、国税庁が法人ごとに付与する13桁の番号です。会社のマイナンバーのようなものです。外国法人であっても、日本で一定の手続を行えば付与されます。ただし、法人番号は課税のトリガーではありません。法人番号を取得しただけでは、日本での法人税の確定申告義務は発生しません。申告以外に何かしら毎年届出等が必要になるということもありません。法人番号はあくまで法人を特定するための番号であり、何かしらのアクションが必要になるのは、日本で活動しているかどうかという点です。
外国法人が日本で法人税を申告する必要があるかどうかは、法人税法上の「国内源泉所得」があるかどうかで判断します。国内源泉所得とは、日本国内で発生したとみなされる所得のことです。実務上、主に6つの類型に該当するかどうかが大きな判断基準になります。
① 日本にPE(支店・事務所・工場などの恒久的施設)があり、そのPEに帰属する事業所得
② 日本国内の不動産の賃貸や譲渡による所得
③ 日本国内で役務(サービス)を提供して得る対価
④ 日本法人から受け取る一定の配当・利子・使用料などの受動的所得
⑤ 日本国内で行われる人的役務提供に対する報酬
⑥ 日本国内にある資産の譲渡に関する一定の所得
このいずれにも該当しなければ、日本で法人税の確定申告義務は生じません。判断は法人番号を所有しているかではなく、上記の所得のいずれかに該当しているかどうかです。
例えば、日本にオフィスも倉庫も従業員もなく、海外から商品を発送している外国会社が、日本の顧客向けにオンライン販売を行っているケースです。日本に固定的な施設がなければ、通常はPEは認定されません。この場合、事業利益について日本で法人税の確定申告を行う義務は原則として生じません。これは法人番号を持っていても同じです。
| 状況 | 法人番号 | 法人税申告義務 |
|---|---|---|
| PEなし・上記6類型に該当なし | 取得あり | 原則なし |
| 日本に支店・事務所あり(PEあり) | 取得あり | あり(PE帰属所得) |
| 国内不動産賃貸等あり | 取得あり | あり(該当所得のみ) |
ここから分かるとおり、法人番号は判断材料の一つではありますが、決定要素ではありません。税務は「番号主義」ではなく「実質主義」です。
登記との関係|支店登記をしているかどうか
司法書士の視点では、日本で継続的に営業活動を行う場合、会社法上の外国会社の営業所設置登記が必要になることがあります。日本に営業所を設け、代表者を置く場合です。この登記をしている場合、実質的にPEがある可能性が高くなります。その結果、法人税申告義務も生じるのが通常です。
ただし、別の法律(例えば電気通信事業法など)の関係で外国会社の登記が必要というケースもあるので、外国会社の登記をすれば即法人税の申告義務が発生するというわけでもありません。
消費税や源泉税の検討は別途必要
法人税の確定申告義務がない場合でも、消費税や源泉所得税の問題が生じることがあります。例えば、日本国内向けに電子サービスを提供する場合は消費税の課税関係を検討する必要があります。また、日本法人から支払われる使用料などについては源泉徴収が行われることがあります。法人税が不要でも、日本税務と無関係とは限りません。税務は一枚岩ではありません。層になっています。
| 税目 | 外国会社への課税の根拠 | 主な判断ポイント | 申告の有無 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 法人税法上の国内源泉所得 (日本国内で発生したとされる所得) |
PE(恒久的施設)の有無 国内不動産・役務提供など |
原則として確定申告が必要 |
| 消費税 | 消費税法上の国内取引 (日本国内で行われた資産の譲渡・役務提供) |
取引の「場所」 電子サービス提供の有無 |
課税売上が一定基準を超える場合に申告 |
| 源泉所得税 | 所得税法上の国内源泉所得 (配当・利子・使用料・役務報酬など) |
支払者が日本法人かどうか 条約適用の有無 |
通常は支払者が源泉徴収 受取側の申告はケースによる |
今回のように、日本で法人番号を取得するがPEはないというケースでは、まず事業内容を具体的に整理します。次に、上記6類型に該当しないかを一つずつ検証します。そのうえで、登記の必要性を確認します。このプロセスを踏めば、申告義務の有無は論理的に判断できます。感覚ではなく条文で整理します。ここが重要です。
外国会社の日本関連ビジネスは今後も増えます。法人番号を取得しただけで過度に心配する必要はありません。しかし、放置も危険です。税務と登記を横断的に整理すれば、リスクは見える化できます。見えれば対処できます。もし日本での法人番号取得や申告義務の有無でお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。税理士と司法書士の両面から、安心してビジネスを進められる設計をご提案いたします。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
