Last Updated on 2026年2月1日 by 渋田貴正
日本に住所を有する外国籍の方の中には、所得税法上「非永住者」に該当する方がいます。非永住者とは、日本に居住しているものの、日本に永住する意思があるとまではいえない人で、かつ一定期間を超えて日本に住んでいない人を指します。
| 非永住者の該当要件 | |
|---|---|
| ① 居住者であること | 日本に住所を有する、または現在まで引き続き1年以上居所を有する人 |
| ② 国籍要件 | 日本国籍を有していないこと |
| ③ 居住期間要件 | 過去10年以内における日本での居住期間の合計が5年以下であること |
非永住者の大きな特徴は、「すべての所得が日本で課税されるわけではない」という点にあります。日本国内源泉所得は原則として日本で課税されますが、国外源泉所得については、日本で支払われた場合または日本へ送金された場合に課税されるという独特のルールが設けられています。ここを正しく理解していないと、「ただ海外のお金を日本に移しただけなのに課税された」という事態になりかねません。
この送金課税制度の考え方は、「日本で自由に使える状態になったかどうか」を重視している点にあります。
海外口座にあるお金は、理論上は日本の生活費や投資に直接使うことができません。一方、日本の口座へ送金された瞬間、そのお金は日本国内で自由に使える状態になります。つまり、経済的な意味では、日本で稼いだお金と同じように消費・投資・貯蓄ができる状態になります。日本の税法は、この「日本で利用可能になったタイミング」を、日本の課税権が及ぶ一つの目安として採用しています。
もう一つ重要なのが、税務上は「お金の移動」という客観的な事実を重視するという点です。もし「将来使う予定です」「これは昔の貯金です」といった主観的な説明だけで非課税にできてしまうと、実質的に国外所得をすべて非課税にできてしまいます。その結果、課税の公平が保てなくなります。
そこで、非永住者については、国外源泉所得が「日本で支払われた場合」または「日本へ送金された場合」に課税するというシンプルな基準が設けられています。
言い換えると、「日本に持ち込まれ、日本で使える形になった国外所得については、日本も課税します」という発想です。このような考え方を前提にしているからこそ、前述のとおり、送金されたお金がどの所得に対応するかについても、法律で一定の順序に従ってみなす仕組みが置かれているのです。
非永住者の課税範囲の基本構造
| 区分 | 日本での課税 | |
|---|---|---|
| 国内源泉所得 | どの国で受領したかを問わない | 課税 |
| 国外源泉所得 | 日本で支払を受ける | 課税 |
| 外国で支払いを受けて、日本に送金する | 課税 | |
| 外国で支払いを受けて、本国に置いたまま | 非課税 |
海外不動産の売却益、海外証券の売却益、海外事業からの利益などは、典型的な国外源泉所得です。これらを日本へ送金した場合、その送金額に対応する部分が日本で課税される可能性があります。
送金されたお金は優先的に国内源泉所得の入金に充てる
非永住者の送金課税では、「どのお金を送ったか」を納税者が自由に選べるわけではありません。所得税法により、一定の順序で送金があったものとみなす仕組みが定められています。
まず、その年に国内源泉所得で国外支払のものがある場合には、その所得に対応する部分から送金があったものとみなされます。国内源泉所得は、受領した国に関わらずもともと日本で課税される所得ですので、ここを先に充当する構造は、送金課税の対象となる国外源泉所得をできるだけ後回しにするという意味で、結果的に納税者に不利にならないよう配慮された順序といえます。
そのうえで、なお残額がある場合に、その残額について国外源泉所得に対応する送金があったものとみなされます。ここで重要なのは、送金した資金の種類と、実際の所得の種類が一致している必要はなく、また、所得が発生した年と送金した年が一致している必要もないという点です。
数値例で考えてみます。
ある非永住者の方が2026年中に、海外不動産の売却益500万円、海外証券の配当100万円、日本での勤務による報酬200万円(国外支払)を得ていたとします。この年に海外口座から日本へ300万円を送金した場合、まず200万円が日本での勤務による報酬(国内源泉所得)に対応する送金とみなされ、残り100万円が国外源泉所得に対応する送金とみなされます。結果として、送金額は300万円ですが、国外源泉所得合計400万円のうち100万円が日本で課税されることになります。
「お金に色はないが、税法上は色を塗られる」世界です。
非永住者への送金課税の注意点
送金課税におけるいくつかの注意ポイントです。
国外で稼いでから数年後に日本に送金した場合でも課税されるのか
「海外不動産を売ったのは数年前で、今年になってから日本へ送金しました。この場合はどうなりますか?」という質問もよくあります。結論としては、売却した年と送金した年が異なっていても、非永住者である期間中に日本へ送金されれば、その送金が国外源泉所得に対応するものと判断されます。
課税のタイミングは所得が生じた年ですが、送金があった事実が日本側での課税関係を顕在化させるきっかけになります。「時間が経てば大丈夫」というわけではありません。
一度日本に送金してから、同額を母国に送金した場合でも課税されるのか
一度日本へ送金したものの、事情があって海外口座へ戻した場合もあります。この場合でも、「日本へ送金された事実」がある以上、原則として課税対象になります。
単に後から返金したというだけでは、課税関係が自動的に消えるわけではありません。送金の趣旨や資金の流れを合理的に説明できる資料がなければ、税務上は不利になる可能性があります。
非永住者になる前に母国で形成した預貯金を送金した場合でも課税されるのか
日本に来る前、あるいは非永住者に該当する前に海外で働いて貯めた資金については、その時期に形成されたものであることを客観的に示すことができれば、送金しても課税対象外と整理できる可能性があります。ただし、口座が長期間にわたり混在している場合には証明が難しくなります。
「海外のお金だから非課税」「贈与名目なら大丈夫」「少額なら問題ない」といった理解は危険です。非永住者の送金課税では、形式より実質が重視されます。送金前に原資を整理することが、最大の節税策です。海外送金や海外資産の売却が絡むケースは、税務判断を誤ると将来の追徴課税やペナルティにつながります。非永住者の海外送金課税や国際税務でお悩みの方は、国際税務に対応できる税理士として、当事務所が丁寧にサポートいたします。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
