Last Updated on 2026年1月31日 by 渋田貴正
日本に住んでいる外国籍の方や過去の海外在住期間が長かった方にとって理解しておかなければならないのが、所得税法上の「非永住者」という区分です。実は、居住者であっても、すべての所得が日本で課税されるとは限りません。ここを誤解すると、申告漏れにも、払い過ぎにもつながります。いわば課税される範囲が限定される居住者が非永住者です。この制度を正しく理解しておくことは、国際的な働き方や資産運用をする方にとって必須といえます。
例えば、次のようなケースです。
・海外に保有する不動産を売却し、まとまった売却益がある外国籍の方
・日本で会社を設立して事業を始める予定の外国籍の方
この方は、日本に生活の拠点を移した時点で、所得税法上は「居住者」に該当します。ただし、過去10年以内の日本での居住期間が5年以下で、日本国籍を有していない場合には、「非永住者」として扱われます。非永住者に該当すると、海外で得た不動産売却益のすべてが直ちに日本で課税されるわけではありません。日本に送金した部分など、一定の範囲に限って課税される点が最大のポイントです。
所得税法上の非永住者とは何か
| 日本に住所がある | 現在まで引き続き居所を有する期間 | 区分 |
|---|---|---|
| あり | 問わない | 居住者 |
| なし | 1年以上 | 居住者 |
| なし | 1年未満 | 非居住者 |
さらに上記の表から居住者に該当した人については、以下の基準で非永住者以外の居住者(永住者)、非永住者の2種類に分かれます。
| 国籍 | 過去10年以内の日本での居住期間 | 形態 |
|---|---|---|
| 日本国籍 | 問わない | 永住者 |
| 外国籍 | 5年超 | 永住者 |
| 外国籍 | 5年以下 | 非永住者 |
まとめると、以下の要件を満たす居住者が非永住者です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ① 居住者であること | 日本に住所を有する、または現在まで引き続き1年以上居所を有する人 |
| ② 国籍要件 | 日本国籍を有していないこと |
| ③ 居住期間要件 | 過去10年以内における日本での居住期間の合計が5年以下であること |
よくある誤解として、「5年未満日本に住んでいれば非永住者」という理解がありますが、日本国籍を有していないことも条件です。日本人が海外から帰国してきた場合は、原則として非永住者にはなりません。
居住者・非永住者・非居住者の課税範囲の違いは以下の通りです。
| 区分 | 日本での課税範囲 |
|---|---|
| 非居住者 | 国内源泉所得のみ |
| 非永住者である居住者 | 国内源泉所得+一定の国外源泉所得 |
| 永住者である居住者 | 全世界所得 |
「全世界所得」とは、日本国内・国外を問わず、すべての所得を合算して課税されるという意味です。居住者のうち、非永住者だけが、この原則の例外になります。
非永住者は永久的なステータスではありません。
過去10年以内の日本滞在期間が5年を超えた時点で、「非永住者以外の居住者」となります。その年分以降は、海外所得もすべて日本で課税されるようになります。
この切替タイミングを把握していないと、ある年から突然申告内容が大きく変わります。
非永住者に課税される所得の範囲
非永住者に課税されるのは、次の2つです。
① 国内源泉所得(国内で稼いだお金)
② 国外源泉所得(国外で稼いだお金)のうち、日本で支払われたもの、または日本へ送金されたもの
国内源泉所得とは、日本を源泉とする所得です。たとえば、日本で勤務した分の給与、日本の不動産の賃料、日本での事業所得などが該当します。これらは、非永住者であっても、日本で所得税課税されます。
一方、国外源泉所得とは、海外を源泉とする所得です。海外勤務による給与、海外にある不動産の売却、海外不動産の賃料、海外株式の配当などが代表例です。非永住者の場合、この国外源泉所得のうち、
・日本で支払われたもの
・日本に送金されたもの
だけが課税対象になります。
非永住者については、
1)そもそも国内で稼いだお金かどうか
2)国外で稼いだお金の場合は、日本国内で使える状態にあるか(代金を国内で受け取ったか、もしくはその分を国内に送金したか)
という2点が重要です。
国内で稼いだお金かどうかについては、たとえば、日本に滞在しながら、海外企業向けにリモートで仕事をした場合、その対価は「役務提供地」が日本と判断され、国内源泉所得となる可能性があります。国内源泉となれば、非永住者であっても全額課税です。
非永住者に独特の「送金課税」という考え方
非永住者の最大の特徴は、いわゆる「送金課税」です。海外口座に置いたままの収入で、日本に送金していない部分については、日本では課税されません。
例えば、
・海外会社から年300万円の給与
・日本へ送金したのは100万円のみ
この場合、日本で課税されるのは100万円部分です。残り200万円は日本では課税されません。
ただし、日本での生活費のために送金した場合でも、「どの収入に対応する送金か」は問われません。実務上は、送金した金額まで国外源泉所得が課税対象になる、という扱いになります。
非永住者の制度は、定義をよく知らないと税金の払い過ぎというリスクにもなりますが、正しく理解すればムダな税金を支払わなくても済む可能性があります。まさに「知っている人だけが損をしない」分野といえます。国際税務は、制度理解と事実整理が9割です。
海外収入がある外国籍の方、日本に転居予定の方、外国籍の配偶者がいる方などは、早めに専門家へ相談することで将来のトラブルを防げます。当事務所では、税務と登記の両面から状況を整理し、最適な申告方法をご提案しています。まずはお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
