Last Updated on 2025年7月28日 by 渋田貴正

外国の会社が日本で継続的に取引や事業を行う場合、日本国内の取引相手や法的機関がその存在や代表者などを把握できるように、「外国会社の登記」が義務づけられています。
これは、日本に本店を置く「内国会社」の登記制度と同様に、会社の信用性や責任の所在を明確にするためのルールです。

たとえば、外国会社が日本で商品を販売したり、サービスを提供したりする場合、取引先から見ると「どこの会社と契約しているのか」「誰に責任を問えるのか」が不明確なままでは大きな不安材料となります。そこで、会社法では外国会社であっても日本での活動状況を公に記録する登記制度を設けているのです。

外国会社における登記が必要な主な場面

外国会社が日本で活動するにあたって登記が必要となるのは、次のようなケースです。

登記が必要となる場面 会社法の条文
日本に営業所を設けた 会社法933条1項2号
日本に営業所を設けず、代表者を定めた 933条1項1号
日本における代表者を追加・変更 934条1項、915条準用
営業所を新たに設けた 934条2項
代表者または営業所の所在地を移転した 935条
営業所を廃止した 936条
本国で会社名を変更した 915条準用
本国で代表者(取締役など)が変更された 919条準用
本国で資本金の額を変更した 918条準用
本国で会社が合併・分割した 921条準用
本国で清算が開始された 920条準用
日本における代表者が辞任した 923条準用
代表者の任期満了・退任(任期制の場合) 924条準用
本国で清算が結了した 927条準用
営業所を廃止した 929条準用
日本から完全撤退(代表者全員退任・営業所閉鎖) 820条・933条4項準用

このように、外国会社であっても日本での営業活動を正確に反映させるためには、登記内容の変更の都度、登記手続を行う必要があります。

登記事項の内容と添付書類

外国会社の登記においては、以下のような情報を登記事項として届け出ます。

  • 設立準拠法(どの国の法律で設立されたか)
  • 日本における代表者の氏名と日本国内の住所
  • 公告の方法(電子公告または官報)
  • 財務書類に関する開示方法(該当する場合)

登記申請には、本国で認証を受けた定款や登記簿、宣誓供述書(翻訳文付)などを添付する必要があります。在日領事館等での公証を経た書類が多く、翻訳には特別な資格は不要ですが、正確性が求められます。

ただし、変更内容によって必要書類は都度異なってきますので、外国会社の登記に強い司法書士に相談しつつ進めることをオススメします。

内国法人との登記期限の違いとその理由

内国の株式会社などは、登記事項に変更があった場合、原則として2週間以内に登記しなければなりません。これに対し、外国会社の場合は3週間以内とされています。

この違いは、外国会社が登記すべき事実を把握するまでに国際的なタイムラグがあることを考慮したものです。たとえば、本国で代表者が変更されても、日本の代表者がその事実を把握するまでに日数を要することが多いため、登記の起算日も「通知が日本に到達した日」とされています(933条5項)。このように、外国会社の特性に配慮した制度設計がなされています。

登記期限 起算日の基準 根拠条文
内国法人(例:株式会社) 原則2週間以内 登記事項が発生した日 会社法915条
外国会社 原則3週間以内 日本における代表者が通知を受けた日 会社法933条4・5項

外国会社の撤退時に必要な手続き

外国会社が日本での事業を終了する場合には、代表者の退任や営業所の閉鎖だけでなく、債権者保護手続を経る必要があります(会社法820条)。これは、代表者がいなくなったことで債権回収が困難となることを防ぐためです。

公告などを通じて債権者に異議申立ての機会を与えたうえで、最終的に代表者の退任・営業所の廃止登記を行い、登記簿は閉鎖されます。

擬似外国会社に関する注意点

形式上は外国で設立されていても、実態として日本で事業を営んでいる会社は「擬似外国会社」と見なされることがあります。こうした場合、法人格が否定されたり、継続的取引に制限が生じるおそれがあるため、実態に応じた慎重な判断が必要です。

外国会社の登記は、代表者の住所地や営業所の有無、本国での変更の有無により、要件や期限が複雑に分かれています。当事務所では、外国会社の日本進出や変更、撤退に関する登記・税務手続を一括してサポートしております。登記漏れによるリスクを避けるためにも、ぜひお早めにご相談ください。