合同会社の持分または持分の払い戻し請求権の相続

合同会社の「社員」とは、従業員という意味ではなく出資者、つまり株式会社でいうところの株主です。合同会社の場合は、基本的には社員がそのまま経営にあたりますので、合同会社の社員=経営者ととらえれば問題ありません。(ある程度の規模の合同会社では、出資だけ行う社員も存在することがありますが。)合同会社では、会社の資本のうち、各社員の取り分を「持分」という言葉で表します。また、社員としての地位そのものを表す意味でも「持分」という言葉が使われることがあります。

合同会社の社員が亡くなった場合、合同会社を退社することになります。人と人の結びつきが重要な合同会社においては、社員に相続が発生したからといって、当然にその社員としての地位を引き継いで相続人が社員になるわけではなく、合同会社に対して、その持分の払い戻しを請求する権利が相続されることになります。

ただし、もしその合同会社が、相続の発生によって相続人が持分そのものを承継できる旨が定款に定めていれば、持分の払い戻し請求権ではなく、持分そのものを相続して合同会社の社員となります。

もし被相続人が合同会社の社員であれば、まずは、合同会社の定款を確認して、持分の承継について定められていないかを確認します。その上で、持分の承継の定めがあれば持分そのもの、定めがなければ持分の払い戻し請求権を相続することになります。また、持分の相続をするか、持分の払い戻し請求権を相続するかということを相続人の決定にゆだねる旨の定款の定めも認められますので、その場合は相続人が自ら意思決定することになります。

(参考)会社法
第607条

  1. 社員は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
    (中略)
    三 死亡
    (中略)

第608条

  1. 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
  2. 第604条第2項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
持分を相続した場合の相続人側の手続き

定款の定めによって持分を相続した場合には、相続人は、まずは合同会社の社員となります。その上で、合同会社の経営に関与する気がなければ、退社の手続きをすることで、持分の払い戻し請求権が発生します。もちろんそのまま社員として残って経営を行っていくといったことも可能です。

持分の払い戻し請求権を相続した場合の相続人側の手続き

持分の払い戻し請求権を相続した場合は、合同会社としては、持分の払い戻しのための手続きを取って、相続人に持分を払い戻します。持分を払い戻すには、合同会社側で債権者保護手続きという手続きが必要となります。これは持分そのものを相続した後に退社による持分の払い戻しを受ける場合も同じですが、もし債権者保護手続きが必要であれば、持分の払い戻し請求権を行使したとしても、実際に払い戻しが行われるまで数か月はかかります。

合同会社の社員が、被相続人一人だった場合

これまでは被相続人以外に合同会社の社員がいることを前提に書いてきましたが、実際には一人だけの社員で経営している合同会社も数多く存在します。この場合は、合同会社を継続するかどうかは相続人に委ねられるのが実情です。

本来合同会社は社員が0人になれば解散となります。もし定款に持分を承継する旨の規定がなければ、相続人が承継するのは持分の払い戻し請求権なので、1人だけの社員が死亡すれば社員が0人になり、解散となります。

しかし、一方で合同会社の定款は、社員が1人ならその人の一存でどのようにも変更できます。定款を変更した日付を検証することは困難であり、実際の現場での話になりますが、多くのケースでは経営を引き継ぎたいといった場合、いつ変更したのか不明ですが、持分そのものを承継する規定が入っています。(もちろん、定款の変更は社員しかできず、社員だったのは死亡した被相続人なわけですが、生前に定款を変更していたのだと思われます。いつ変更したのかといったことは検証できませんが。)