Last Updated on 2025年5月4日 by 渋田貴正

債権者保護手続きとは、会社がある手続きを行う際に、会社の債権者が異議を述べる機会を与える手続きです。ある会社の行為が債権者にとって不利に働く恐れがある場合に、会社の債権者の立場を守るために、会社に義務付けられている手続きです。

債権者保護手続きが必要なケースをまとめてみました。

手続き 会社の種類 根拠条文 簡単な概要
資本金の減少 株式会社・合同会社 会社法447条、675条 資本金を減らす手続き。減資は債権者に影響する可能性があるため公告等が必要。
準備金の減少 株式会社 会社法448条 資本準備金・利益準備金を減少。ただし、全額を資本金に組み入れる場合は不要。
株式併合 株式会社 会社法180条 株式数を減らして1株当たりの価値を高める手続き。減資に該当する場合、保護手続きが必要。
合併(吸収・新設) 株式会社・持分会社 会社法789条、809条 2社以上が1つに統合。合併により債権者の立場が変わるため保護手続きが必要。
会社分割(吸収・新設) 株式会社・持分会社 会社法789条、809条 会社の一部事業を他社に移転。事業負債も移る場合があり債権者の保護が必要。
株式交換・株式移転 株式会社 会社法789条、809条 他社の完全子会社化や持株会社設立。債権者に影響する場合は保護手続きが必要。
清算(解散) 株式会社 会社法789条等 会社をたたむ手続き。債権者の弁済が優先されるため異議申述の機会が必要。
特別清算 株式会社 会社法789条等 清算中の会社が特別清算に進む場合。債権者保護が特に重視される。
組織変更 株式会社⇔持分会社 会社法811条、816条 会社形態の変更。会社の責任構造が変わるため、債権者保護が必要。
持分払戻し 合同会社など持分会社 会社法629条、674条 社員が会社から出資額を回収する場合。会社財産が減るため債権者保護が必要。
債権者保護手続きの流れと注意点

公告と催告の実施

  • 公告:官報や電子公告で手続きを周知します。
  • 催告:把握できる債権者には個別通知します。

② 異議申述期間の設定

通常1か月以上の期間を設定します(会社法規定に準じる)。

③ 異議対応

債権者から異議が出た場合、弁済または相当の担保提供を行う必要があります。

公告や催告を怠ると、手続き自体が無効とされるリスクがあります。公告費用も軽視できず、電子公告を利用する企業が増加しています。

債権者保護手続きを怠るとどうなる?

債権者保護手続きを怠ったことによって生じるデメリットとしては以下のような点が考えられます。

手続きの無効や取消しの可能性

公告や催告が不適切だった場合、減資や組織変更などの手続きが法律上無効または取消可能と判断される可能性があります。
手続きをやり直す必要が生じ、取引先や株主との信用トラブルに発展するケースもあります。

2. 債権者からの損害賠償請求

公告や催告を怠った結果、債権者が損害を被った場合、会社だけでなく取締役(合同会社では業務執行社員)個人に対しても責任追及されるおそれがあります(会社法第429条)。特に、明らかな怠慢があったと認定されれば損害賠償額が高額になるケースも。

3. 金融機関や取引先からの信用低下

手続きミスや法的トラブルは、取引先や金融機関の信用調査で不利に評価されます。
特に、減資や組織変更などの重要な手続きで公告・催告の不備があると、「ガバナンス(内部統制)が甘い会社」と判断され、融資や新規取引に悪影響を及ぼす可能性があります。

「うちは中小企業だから大丈夫」と思っていても、公告や催告の不備が後で大きな問題になることもあります。特に資本金減少や組織変更の際は注意が必要です。

  • 会社が重要な行為を行う場合、債権者保護手続きが必要になるケースが多数
  • 公告・催告の手続き漏れは重大な法的リスク
  • 正しい手続きを踏むことで、会社の信用と将来を守れる

債権者保護手続きは、手順を誤ると後戻りできないトラブルに発展します。当事務所では、資本金減少や組織変更、合併などの手続きを検討中の方へ税理士・司法書士の立場から法務と税務の両面で安全・確実な手続きをご提案しています。「この手続き、債権者保護が必要?」と疑問を持たれたら、まずはお気軽にご相談ください。