Last Updated on 2025年1月9日 by 渋田貴正

合同会社から株式会社への組織変更とは?

組織変更とは、一般にも使われる言葉かもしれませんが、会社法の「組織変更」とは、合同会社や合名会社、合資会社(持分会社)から株式会社への変更や、株式会社から持分会社への移行をいいます。これは、事業環境の変化や経営戦略の変更に伴い、会社の運営に適した形態に再編するために行われます。

組織変更には法律で定められた手続きが必要で、社員総会の決議、債権者保護手続き、登記変更などが含まれます。形態を変えても法人としての基本属性(法人番号や資産)は継続されるのが特徴です。

合同会社として会社を設立したものの、事業が成長するにつれて株式会社への組織変更が必要になるケースがあります。その理由は企業ごとに異なりますが、主に以下のようなものがあります。

  • 外部からの資金調達
    株式を発行することで、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達が可能になります。
  • 採用力の強化
    株式会社のほうが社会的認知度が高く、求人応募者にとって魅力的に映ることが多いです。
  • 取引信用の向上
    株式会社であることが取引先の信用に繋がり、大口の契約がスムーズに進む場合があります

など、合同会社から株式会社に組織変更する理由は、会社によってさまざまです。

合同会社から株式会社への組織変更に必要なプロセス

合同会社から株式会社に組織変更するためには、登記の変更が必要ですが、その前に主に以下のプロセスが必要です。

プロセス番号 プロセス名 概要 注意点
プロセス1 組織変更計画の作成 株式会社として運営するための基本計画を作成します。会社設立時の定款作成に相当します。 具体的な組織体制や運営方針を明確にしておく必要があります。
プロセス2 総社員の同意 社員全員の同意を得て組織変更を決議します(定款に別段の定めがある場合はその規定に従う)。 定款に「業務執行社員の過半数の同意で決議可能」などの定めがあれば、その規定に従います。1人合同会社では自らの決定のみで進められます。
プロセス3 債権者への催告書 組織変更によって影響を受ける可能性がある既存の債権者に対し、催告書を送付します。 催告書は効力発生日の1か月前までに届く必要があります。公告方法で代替する場合もありますが、適切な時期に手続きを行う必要があります。
プロセス4 官報公告 組織変更の事実を官報で公告します。公告方法を定款で別途定めている場合でも官報公告が必要です。 官報公告は効力発生日の1か月前までに行う必要があります。申し込んでから掲載まで約10日かかるため、計画的に行うことが重要です。

なお、株式会社から合同会社に組織変更する場合のように決算公告をする必要はありません。

主に、上記のプロセスを経て組織変更が可能となります。

特に、催告書や官報公告については、1か月という期間が指定されているので、組織変更を急ぎたい場合はこれらを早めに行う必要があります。とくに官報公告については申し込んでから掲載まで10日ほどかかりますので、優先的に行っておいたほうがよいでしょう。このように債権者保護手続きの期間があるため、スムーズに進んでもおよそ2か月程度はかかることを見越しておくとよいでしょう。

費用は、登録免許税6万円、官報公告費用として約35,000円ほどかかります。このほかに司法書士に手続きを依頼すれば、その手続き報酬もかかります。

ちなみに、合同会社から株式会社に変更することで社名も変わりますが、法人としては同じです。(人でいえば姓が変わるようなものです。)同一法人なので、法人番号も変わりませんし、財務諸表の数字もそのまま引き継ぎとなります。また、法人税の欠損金の繰越などもそのまま引き継ぎとなります。

当事務所でも、合同会社から株式会社への組織変更手続きサービスを承っております。迅速に組織変更を行いたいという場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。