Last Updated on 2021年10月16日 by 渋田貴正
先日、相続登記をお手伝いさせていただいたお客様から、以下のようなご相談を受けました。
「これまで週30時間の所定労働時間でしたが、この度会社から時間を減らすように迫られています。この場合、社会保険の資格を喪失するのでしょうか?勤務先から健康保険証を返すように言われています。」
まず、「パートタイマーは正社員の1週間の所定労働時間の3/4以上、かつ1か月の所定労働時間の3/4以上の勤務形態ならば原則として被保険者」になります。
次に、健康保険の被保険者の資格喪失には、次の3つが決められています。
- 死亡したとき
これは当然といえば当然です。ちなみに健康保険の被保険者が死亡した時は、埋葬料の支給を受けられる場合があります。 - 退職したとき
転職ならば一度喪失して、再度取得というわけです。 - 75歳到達時(厚生年金は70歳です。)
後期高齢者医療制度に移行します。
見ての通り、途中で3/4を下回った時に資格喪失なんて一言も書いてありません。
事業主の判断で、強制加入の社会保険制度がコロコロ変わるのは望ましくないですし、そんなこと明記できるわけないかと思います。
では、実務的にはどうなのか。
年金事務所の方は、上記3/4要件を満たさなくなった場合で、喪失届が出されれば受理する取り扱いのようです。ケースごとに判断していたら実務的に煩雑すぎるので、これは仕方ないことかもしれません。そもそも3/4要件を満たさなければ健康保険に加入できないので、加入中も類推解釈する取り扱いです。
ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、3/4要件を満たさなくなったら、資格喪失届を出さなくてはならないわけではない、ということです。
もしこの取り扱いですと、それこそ事業主の都合で被保険者の保険制度が変わってしまい、働いている人にとっては堪ったものではありません。
標準報酬月額の表も0円から書いてあります。これで、どれだけ労働時間が減って給与が減額されても、健康保険料を段階的に計算できるようになっているのです。
事業主がやむを得ずパートタイマーの方の労働時間を短縮したとしても、それを理由に社会保険の資格まで喪失させるかどうかは事業主の姿勢にかかっています。
相続とは直接関係ない話題ですが、いくつか資格を保有しているためか、さまざまなご質問をお受けすることがあります。こうした話は、一般的にお役に立てる内容かもしれませんので、ここに残しておこうと思います。
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。