Last Updated on 2026年1月27日 by 渋田貴正

海外在住で日本に会社を設立した方や、日本向けに個人事業を始めたい方から、「日本の銀行口座が作れないのですが、ワイズ(Wise)を銀行口座代わりに使えますか?」という相談を受けることが増えています。

最近では、銀行の振込手続きをする際の金融機関検索画面で「ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社」が表示されるケースもあり、国内送金の受取先としてワイズが広く認識されるようになってきたことを意味します。このような事情から「もう銀行と同じように使えるサービスなのでは」と感じる方も多いと思います。取引先から見ても、普通の銀行口座とほぼ同じ感覚で振り込める状態になってきています。

ワイズを事業用の受取・支払口座として利用すること自体は可能であり、税務上も問題ありません。
ただし、銀行口座とまったく同じものと考えることはできません。ワイズを銀行口座代わりに使用することは、税務の問題というより実務の問題です。用途と限界を理解したうえで使うことが重要です。

海外在住者によるワイズの事業用の活用

例えば、海外在住の日本人の方が、日本向けEC事業のために日本法人を設立したケースを考えます。設立登記は完了したものの、日本に住所がないため、銀行口座開設を断られてしまいました。

このような場合でも、ワイズであれば海外住所のままアカウントを開設でき、日本円の受取口座情報を取得できます。
そのため、売上の受取や外注費の支払いをワイズで行いながら事業を開始するという選択肢が現実的になります。

実務的には、銀行のシステム上もワイズが振込先として表示されるなど「取引先から見ても、普通の銀行口座とほぼ同じ感覚で振り込める」状態になってきています。この点は、ワイズの大きな強みです。

ワイズと銀行の違い

ここで必ず押さえておきたいのが、ワイズは銀行法上の銀行ではないという点です。ワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社は、第一種・第二種資金移動業者として登録されています。

資金移動業者とは、「送金や決済を専門に行う事業者」であり、銀行のように預金を受け入れて運用することはできません。あくまで、送金のために一時的に資金を預かる立場にあります。

この違いにより、実務上、次のような差が生じます。

・銀行のように融資を受けることはできない
・預金保険制度の対象外である
・法人口座としての提出を求められる場面(融資、補助金、行政手続など)では、ワイズが使えないことがある

つまり、ワイズは「お金を保管する場所」というよりも、「お金を通過させるためのインフラ」と考えるのが実態に近いです。

この点を理解せずに、ワイズだけで事業を完結させようとすると、事業拡大の局面で必ず壁に当たります。
そのため、ワイズは「銀行口座ができるまでの代替手段」「銀行口座と併用する補助的な決済口座」として位置付けるのが現実的です。

項目 銀行 ワイズ
法的位置づけ 銀行 資金移動業者
預金保険 対象 対象外
残高の性質 預金 顧客資金として分別管理
融資 可能 不可

この違いが、後々の実務に影響します。例えば以下のようなケースです。

・日本法人の資本金払込みや増資の場面で、日本の銀行口座が前提になることが多い
・金融機関からの融資申込みでは、銀行口座の取引履歴が求められる
・補助金・助成金・業務委託料などの受取口座として、銀行口座のみ指定できるケースがある
・取引先から「銀行口座でないと支払えない」と言われることがある

ワイズを銀行口座代わりに使うことは税務上問題ない

よくある誤解が、「銀行口座じゃないと売上計上できないのでは?」というものです。結論として、ワイズを使うこと自体は税務上まったく問題ありません。

税務上重要なのは、
・売上を正しい金額で
・正しいタイミングで
・損益計算書(PL)に計上しているか
という点です。受け皿が銀行なのか、ワイズなのか、はたまた別のサービス(Paypalなど)なのかは重要ではありません。

売上がワイズに入金された時点で、原則として売上として計上します。その後、銀行口座に移したとしても、それは資金移動にすぎません。実務上は、「ワイズ口座」という補助科目を作り、現金預金の一種として管理すると分かりやすくなります。

ワイズが向いているケース、向いていないケース

ワイズが向いているケース

・海外在住で日本の銀行口座がすぐに作れない
・海外顧客からの送金が多い
・取引規模からしてワイズでも十分であり、かつ出口としての口座が確保できている
・立ち上げ初期で売上規模が比較的小さい

このような場合は、ワイズは非常に相性が良いです。

ワイズが向いていない(というか無理な)ケース

・受入上限を超える売上規模になる
・売上を長期間ワイズに滞留させたい
・融資や補助金の受取口座として使いたい

また、ワイズには、本人確認レベルやアカウント種別に応じた残高上限・受入上限が設定されています。

日本向けのワイズ公式ヘルプでは、資金移動業者としての規制を踏まえ、通常は日本円換算で100万円程度までが標準的な残高保有限度額とされています。さらに、1回あたりの入金(チャージ)や送金についても、100万円程度を上限とする制限が設けられています。

法人アカウントなどでは、個別審査のうえで数千万円規模まで上限を引き上げられるケースもありますが、無条件で認められるものではありません。このため、売上規模が大きくなり、受入上限を超えるような金額が継続的に発生する事業には、ワイズ単体での運用はそもそも向いていません。
ワイズは「売上を受け取って、速やかに移す」ことを前提としたサービスであり、「大きなお金を長期間置いておく場所」ではありません。

この点は、「ワイズは決済ハブ、銀行口座は金庫」と考えると分かりやすいです。

なお、ワイズから資金を移す最終的な出口として、海外の個人口座を指定すること自体も税務上は問題ありません。
その後、銀行口座へ移すか、海外の個人口座へ移すかは、あくまで「資金の移動」にすぎず、売上計上のタイミングが変わるわけではありません。もちろん国内の法人口座を使用する場合に比べて動きが不透明になるので、融資などは難しくなりますが、少なくともワイズでも十分な規模のビジネスであれば問題になることはないでしょう。

重要なのは、ワイズに入った売上を漏れなく計上していることと、事業資金と個人資金の動きを帳簿上で明確に区別していることです。
この点を押さえていれば、出口口座が国内銀行であっても海外口座であっても、税務上の本質は変わりません。

海外在住者の日本での事業開始、会社設立、口座設計、税務申告は、それぞれ単独で考えるものではありません。当事務所では、税務と登記の両面からワンストップでサポートしています。ワイズを使うべきか、日本の銀行口座をどう確保するかでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。