Last Updated on 2026年2月23日 by 渋田貴正

外国法人が日本国内にある企業などに対してコンサルティング、技術支援、専門サービスなどを提供する場合、「日本に事務所も従業員もいないのに、日本で法人税の申告が必要になるのか」という疑問を持たれることが多くあります。この点について、日本の法人税法は明確なルールを設けています。

外国法人であっても、日本国内で人的役務を提供して対価を受け取る場合には、その対価は国内源泉所得に該当し、日本の法人税の課税対象になる可能性があります。役務提供は、外国法人の日本関与の中でも非常に頻繁に発生する取引であり、課税関係を正確に理解しておくことが重要です。

外国法人の国内源泉所得の全体像

外国法人の法人税は、国内源泉所得に限って課税されます。人的役務提供の対価がどこに位置づけられるのかを確認するため、まず全体像を整理しておきましょう。外国の法人が日本で法人税を課税される収入のパターンは以下の通りです。

類型 内容
① 恒久的施設(PE)帰属所得 日本の支店や事務所などを通じて生じる事業所得
② 国内資産の運用・保有所得 配当、利子、使用料など
③ 国内資産の譲渡所得 日本の不動産や一定の株式の譲渡益
④ 人的役務提供事業の対価 日本で提供したサービスの報酬
⑤ 国内不動産の貸付所得 日本の不動産の賃料
⑥ その他の国内源泉所得 補償金、保険金など

今回解説するのは「人的役務提供事業の対価」です。

外国法人の日本での人的役務提供とは何か

人的役務提供とは、外国法人が専門知識や技能を用いて、日本国内でサービスを提供し、その対価を受け取る場合をいいます。具体的には次のようなものが該当します。

区分 具体例
専門サービス コンサルティング、公認会計士業務、設計業務など
技術サービス 技術者派遣、技術指導、システム導入支援
芸能・スポーツ 外国アーティストの公演、外国選手の試合参加
専門知識の提供 経営指導、技術指導、ノウハウ提供に伴う役務

まずは、これらの役務提供に該当するかどうかを判断することが重要なポイントです。

外国法人の役務提供は「提供場所基準」で判断される

人的役務提供においてもう一つ重要なのが、「役務がどこで提供されたか」という点です。不動産の貸付や売却の場合は、不動産の所在地によって課税国が判断されますが、役務提供の場合は、サービスを提供した場所によって判断されます。

ここで重要なのは、「報酬の支払者が日本の会社かどうか」ではないという点です。例えば、日本企業から報酬を受け取っていたとしても、役務提供のすべてが外国で行われている場合には、原則として国内源泉所得には該当しません。逆に、外国企業との契約であっても、役務提供が日本国内で行われていれば、その対価は国内源泉所得として日本で法人税の課税対象になる可能性があります。

つまり、判断の基準は契約相手の所在地ではなく、実際に役務提供を行った場所です。

役務提供の場所 国内源泉所得への該当 日本での法人税課税 典型例
日本国内 該当する 課税対象になる ・外国法人の技術者が来日して据付作業を行う
・日本でコンサルティングを実施する
・日本で保守・修理サービスを行う
外国 原則として該当しない 課税対象にならない ・外国からオンラインで技術指導を行う
・外国の事務所で設計業務を行う
・外国でコンサルティング報告書を作成する

このように、人的役務提供については「誰に対してサービスを提供したか」よりも、「どこでサービスを提供したか」が課税関係を決定する最も重要な要素になります。

PEがなくても役務提供があれば法人税の課税対象になる

人的役務提供は、PEがなくても国内源泉所得になります。

項目 PEあり PEなし
役務提供の対価 法人税課税 法人税課税の対象となる可能性
法人税申告 必要 必要となる場合がある

「日本に支店がないから申告不要」とは限らない点が重要です。

実務上特に注意が必要なのが、旅費や滞在費の取扱いです。

外国法人が役務提供のために来日し、日本側が次の費用を負担した場合、

・航空券
・ホテル代
・滞在費

これらの実費も役務提供の対価に含まれるとされています。役務提供の対価をキャッシュではなく、実費で払ったということです。つまり、「報酬は支払っていないが旅費は負担した」という場合でも、課税対象になる可能性があります。

一方で、すべての技術者派遣が人的役務提供に該当するわけではありません。

ただし、すべての技術者派遣や技術支援が直ちに「人的役務提供事業」に該当するわけではありません。例えば、外国法人が日本企業に機械設備を販売し、その販売契約の履行として、据付作業や試運転の立会い、操作方法の説明、簡易な技術指導を行う場合があります。このようなケースでは、主たる取引はあくまで「機械の販売」であり、技術者の派遣はその販売に付随する履行行為にすぎないと評価されることがあります。

この場合、役務提供部分を独立した事業として切り出して課税するのではなく、販売取引の一部として整理されることがあります。つまり、契約の実態が「物の販売」なのか、それとも「専門的知識や技能の提供」が中心なのかによって、国内源泉所得への該当性が変わってくるのです。

特に実務上重要なのは、契約書上どのように対価が区分されているか、役務提供部分が独立した価格として定められているかどうかです。販売対価と役務対価が明確に区分されている場合には、その役務部分のみが国内源泉所得として問題になる可能性があります。一方、販売契約の付随義務として当然に行われる据付や試運転であれば、人的役務提供事業とは評価されないケースもあります。

したがって、「技術者を日本に派遣した」という事実だけで直ちに国内源泉所得と判断するのではなく、取引の主目的と契約の構造を総合的に検討することが重要になります。

人的役務提供は、不動産賃料や不動産売却と異なり、「場所」が見えにくいため、課税関係を見落としやすい分野です。しかし税法上は明確に国内源泉所得として整理されており、日本での申告義務が生じる可能性があります。

当事務所では、外国法人の役務提供に関する国内源泉所得の判定から法人税申告、さらに外国会社の登記対応まで一体的にサポートしています。日本企業への技術提供やコンサルティングを開始する段階で税務関係を整理しておくことが、後のリスク回避につながります。