Last Updated on 2026年1月17日 by 渋田貴正

投資事業有限責任組合とは、投資を目的として組成される特別な組合形態で、無限責任組合員と有限責任組合員が併存する点に最大の特徴があります。投資事業有限責任組合は、組合員全員が無限責任を負う一般的な民法上の組合とは異なり、有限責任しか負わない組合員の存在が法律上認められている点に大きな特徴があります。

そこで、取引の相手方があらかじめ組合の基本構造を把握できるよう、投資事業有限責任組合においても登記制度が採用されています。投資事業有限責任組合契約に関する一定の重要事項については、法律で定められた期間内に登記を行うことが義務付けられており、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することはできません。投資事業有限責任組合の登記は、組合内部の整理のためではなく、外部との取引を安全に成立させるための「前提条件」と位置付けることができます。

投資事業有限責任組合の組合契約の効力時の登記内容

投資事業有限責任組合は、組合契約の効力が発生して終わりではありません。

組合契約の効力発生時には、法律で定められた一定の事項を登記する必要があります。効力発生から一定期間内に、必ず効力発生の登記を行う必要があります。ここを失念すると、後からまとめて対応すればよいという性質のものではなく、過料の対象となるおそれもあります。設立登記では、組合の名称や事業内容、組合契約の効力発生日、存続期間、無限責任組合員の氏名や住所、事務所の所在地など、組合の骨格となる情報が登記されます。

投資事業有限責任組合の効力発生時の登記は、会社設立登記のような効力発生要件ではなく、契約の効力発生後に行う事後的な登記です。ただし、登記をしなければ第三者に対抗できない点で、その実質的な重要性は決して小さくありません。

申請手続は、原則として無限責任組合員が行いますが、司法書士が登記申請を代理することも可能です。

区分 効力発生時に登記される項目 内容のポイント
1 組合の事業 投資対象や事業内容を示します。組合契約の記載と整合している必要があります。
2 組合の名称 投資事業有限責任組合であることが分かる名称を用います。
3 組合契約の効力が発生する年月日 この日を基準に登記期限(2週間)が起算されます。
4 組合の存続期間(定めた場合) 期間を定める場合は必須の登記事項となります。
5 無限責任組合員の氏名又は名称および住所 組合の信用の中核となる情報で、第三者にとって特に重要です。
6 組合の事務所の所在場所 主たる事務所の所在地を登記します。
7 解散の事由(定めた場合) 法定事由以外に組合契約で定めた解散事由がある場合に登記します。

投資事業有限責任組合では、登記によって公示されるのは無限責任組合員のみであり、有限責任組合員は登記されません。これは、第三者が取引リスクを判断するうえで、誰が無限責任を負うのかを明らかにすることに登記制度の目的があるためです。

投資事業有限責任組合の効力発生の登記の登録免許税の額は3万円です。

投資事業有限責任組合の組合契約の変更時の登記内容

投資事業有限責任組合は、無限責任組合員の追加や退任、事務所所在地の変更、組合契約内容の修正など、さまざまな変更が生じます。これらのうち、登記事項に該当するものについては、変更が生じた都度、変更登記を行う必要があります。ここで重要なのは、「契約を変えた=登記も変わるとは限らないが、登記事項を変えたなら登記は必須」という整理です。

変更登記では、変更内容を証する書面が求められます。組合員全員の合意が必要な変更なのか、一定割合の合意で足りるのか、あるいは無限責任組合員の裁量で決定できるのかによって、添付書類の考え方が変わります。人数が多い組合や海外在住の組合員がいるケースでは、全員分の署名押印を集めること自体が実務上のボトルネックになります。そのため、組合契約の設計段階で、どこまでを無限責任組合員の裁量に委ねるのかを決めておくことが、後の登記実務を驚くほど軽くします。

投資事業有限責任組合の変更の登記の登録免許税の額は15,000円です。

投資事業有限責任組合の組合契約の解散・清算時の登記内容

投資事業有限責任組合は、永遠に存続することを前提とした制度ではありません。投資期間の満了や目的達成、あるいはその他の事由により解散し、清算へと進むことがあります。この局面でも、登記は重要な意味を持ちます。解散が生じた場合には解散登記を行い、その後、清算人を定め、最終的に清算結了の登記を行うという流れになります。

清算人は、組合財産を処分し、債権債務を整理する役割を担います。清算人が誰であるかは、取引関係者にとって極めて重要な情報であるため、登記によって公示されます。清算結了の登記がなされて初めて、組合は法的に完全に幕を下ろします。舞台で言えば、カーテンコールまで終えてようやく終演、というイメージです。解散だけして清算結了登記を失念するケースも見受けられますが、その場合でも登記義務違反として過料の対象となり得るため注意が必要です。

投資事業有限責任組合の登記は、やらなくても直ちに無効になるものではありません。しかし、登記を怠ることで、第三者に対抗できなくなる場面が生じたり、無限責任組合員や清算人が過料を科される可能性があります。特に、ファンド関係者や金融機関、投資先企業との関係では、登記情報が前提とされることも多く、「登記が最新でない」というだけで話が進まなくなることもあります。登記は裏方の仕事ですが、舞台を支える大道具のような存在だといえるでしょう。

投資事業有限責任組合の登記は、法務だけで完結するテーマではありません。組合契約の設計、税務上の取扱い、投資スキーム全体の構造と密接に結びついています。登記だけを後追いで整えるのではなく、最初から税理士・司法書士の視点で全体を設計することで、後々の変更や解散の場面でも無理のない対応が可能になります。投資事業有限責任組合の設立や運営、登記対応でお悩みの際は、当事務所にご相談いただければ、法務と税務を横断した実務目線でサポートいたします。