Last Updated on 2025年12月13日 by 渋田貴正

外国会社が日本で登記を行い、日本国内で事業を始める場合、「事業年度はいつからいつまでなのか」という疑問があります。日本の会社であれば、定款で事業年度を定めるのが当たり前ですが、外国会社の場合は本国の事業年度もあり状況が異なります。

そもそも外国会社とは何か

外国会社とは、日本法ではなく外国の法律に基づいて設立された会社のことです。たとえば、ドイツ法人、アメリカ法人、シンガポール法人などがこれに該当します。
こうした外国会社が日本で継続的に取引を行う場合、日本に「外国会社の登記」を行う必要があります。この登記は、日本における代表者の登記などを指します。日本で現地法人を新たに設立するのではなく外国会社の日本支店を登記するようなイメージです。

事業年度は原則として本国基準になる

外国会社でも、日本で登記をすると「日本の会社のように見える」ため、事業年度も日本式に決めるものだと誤解されがちです。しかし、結論から言うと、外国会社の事業年度は、日本で新たに自由に決めるものではありません。

外国会社の事業年度は、原則として本国、つまり設立準拠法国で定められている事業年度に従います。
これは、法人そのものはあくまで外国法に基づく存在であり、日本で外国会社の登記をしてもあくまで事業主体は外国で登記された本社だからです。外国会社の登記を日本で行った日が事業年度開始日というわけではありません。

たとえば、本国での事業年度が「1月1日から12月31日」であれば、日本で登記していても、その外国会社の事業年度は原則として同じ期間になります。この点は、法人税や消費税の課税期間を考える上で非常に重要です。

たとえば、ドイツ法人が日本で支店登記を行い、日本国内で取引を始めたケースを考えてみましょう。ドイツ本国の事業年度は暦年(1月から12月)です。この場合、日本でも原則として1月から12月が事業年度となり、その期間について日本の法人税申告を行います。

一方で、日本側の担当者が「日本の会社は3月決算が多いから」という理由だけで、勝手に4月から翌3月で数字を集計してしまうと、帳簿と申告が噛み合わなくなります。

本国で事業年度を変更すれば、その変更は日本側にも影響します。ただし、本国での正式な手続きが前提となり、日本だけ都合よく変更することはできません。ここは、「日本支店だけ別の事業年度で申告したい」という発想が通用しない部分です。

外国会社の登記と日本の法人税の事業年度の関係

日本で事業を行う外国会社は、日本国内に「恒久的施設(PE)」がある場合、日本で法人税の申告義務が生じます。
恒久的施設とは、簡単に言うと、日本にある支店や事務所など、事業を行う拠点のことです。

この法人税の申告は、「外国会社の事業年度」に基づいて行います。つまり、本国の事業年度がそのまま、日本での法人税の計算期間になるのが原則です。

外国会社の登記と日本の消費税の課税期間の関係

消費税についても、原則は法人税と同じ考え方です。
外国会社が日本で課税売上を行っている場合、その課税期間は事業年度に基づいて判定されます。

ただし、消費税には「課税期間の短縮」や「みなし課税期間」といった独特のルールがあり、法人税よりもややこしくなりがちです。特に、日本進出初年度は「本国の事業年度=消費税の課税期間」と単純に考えられないケースがあります。

たとえば、本国の事業年度が「1月1日から12月31日」の外国会社が、2025年7月1日から日本で課税売上を開始したとします。この場合、日本での消費税の課税期間は、原則として2025年7月1日から2025年12月31日までの6か月間になります。1年分ではなく、事業開始日から期末までの「短縮された課税期間」で申告するイメージです。

さらに注意が必要なのが、課税売上高の判定です。消費税では、原則として2期前の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで、当期に消費税の納税義務があるかを判定します。

ここでいう「課税売上高」とは、日本の消費税法上、課税対象となる取引の売上を指します。そのため、本国で行っている売上であっても、日本の消費税の課税取引に該当しないものについては、課税売上高には含めません。外国会社だからといって、本国の全売上をそのまま合算するわけではありません。

たとえば、日本国内での課税売上が2期前に1,200万円あった場合、その外国会社は、原則として当期から日本で消費税の申告・納税義務が生じます。一方で、2期前の本国売上が多額であっても、日本における課税取引が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務は生じません。

特に日本での事業開始1期目は半端な月数で消費税申告を迎えることもあります。その売り上げをそのまま適用するのではなく、年間換算したうえで1,000万円を超えているかどうかを判断する必要があります。

日本で登記した外国会社の事業年度や税務・登記の整理に不安がある方は、外国会社の登記実務にも精通した、税務と登記をワンストップで確認できる専門家に一度ご相談ください。最初に整理しておくことで、あとから困らない進め方を実務目線で丁寧にご案内します。