Last Updated on 2025年12月4日 by 渋田貴正

一般社団法人には、一定期間登記の変更が行われないと「活動していない法人」と判断され、法律上、自動的に解散されたものとして扱われる制度があります。これがいわゆる「みなし解散」です。同じ制度が株式会社にもありますが、一般社団法人のみなし解散は株式会社のそれよりも期間が短く、一層の注意が必要です。

一般社団法人のみなし解散のきっかけの多くは、役員変更や所在地変更を忙しさのあまり後回しにし、気づけば5年以上が経過していたというものです。任期が長い法人ほどその傾向は強く、登記が長期間動いていないだけで「休眠している」と判断されてしまいます。

次に多いのが、補助金の申請や銀行の手続きを進めるなかで、初めて登記事項証明書を取得し、会社名の後ろに見慣れない「清算中」の文字を見つけて驚かれるケースです。担当者から「この法人は今どういう状態ですか?」と聞かれて初めて違和感を覚えるという流れで、慌てて調べて来所される方もいます。

さらに実務上は、郵便物の不達が引き金になることも少なくありません。みなし解散の手続きでは官報公告のほかに、法務局から個別に通知が郵送されます。しかし、バーチャルオフィスを利用していたり、引っ越し後の転送設定が切れていたりすると、この通知にまったく気づかないまま時間が過ぎてしまいます。法人の実際の活動拠点と登記上の住所がずれている場合には、通知が全く届かないこともあります。その結果、官報にも気づかず、郵便にも気づかず、「いつのまにやら解散していた」という状態になってしまうのです。

一般社団法人は登記が5年間動かないと休眠扱い

一般社団法人では、最後の登記から5年が経過すると休眠一般財団法人とみなされます。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(休眠一般財団法人のみなし解散)
第203条 休眠一般財団法人(一般財団法人であって、当該一般財団法人に関する登記が最後にあった日から5年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠一般財団法人に対し2箇月以内に法務省令で定めるところによりその主たる事務所の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その2箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠一般財団法人に関する登記がされたときは、この限りでない。
2 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠一般財団法人に対し、その旨の通知を発しなければならない。

ここで言う登記とは、代表理事の変更、所在地変更、目的変更などの法務局で行う手続きのことです。本人としては「変わったことがないから登記をしていないだけ」という認識でも、法律上は「何も動きがない=事業をしていない可能性がある」と判断されてしまいます。

さらに一般社団法人では、理事の任期は原則2年が上限とされています。そのため、本来であれば 2年ごとに理事の重任や再任の登記が行われることが予定されているのが制度設計上の姿です。
ところが実務では「任期をすっかり忘れていた」「内部的には同じ人が続けているから登記は不要だと思っていた」というケースが多く、気づけば5年間一度も登記がされないまま休眠扱いになってしまう、という事態がしばしば見られます。

官報では「事業を続けている場合は2か月以内に届出をしてください」と告知されます。とはいえ、正直なところ官報をチェックしている人はよほどマニアックな人で、ほとんどの人は官報を読んだことすらないかもしれません。そのため、官報だけでなく、法務局から個別に郵便でも通知が行われます。制度だけ見れば「官報」と「郵便」の二重チェックであり、法人側はどちらかを見れば気づけるはずの仕組みです。

ところが、バーチャルオフィスで郵便物の管理が疎かになっていたり、代表者が海外に長期滞在していたり、登記住所と実際の事務所がズレていたりする法人は一定数存在します。こうした法人では、郵便物がそもそも受け取られず、官報も普段確認していないため、結果として通知が「誰にも読まれないまま」期限を迎えることになります。

そうして2か月が経過すると、届出がなかった法人は法律上、自動的に解散したものとされます。本人の意図とは関係なく、淡々と法が適用され、気づいたときには「清算中」という扱いで社会に認識される状態になっているのです。

一般社団法人と株式会社のみなし解散の違い

以下に一般社団法人と株式会社の違いをまとめています。制度として似ていますが、登記空白期間や復活できる期間などに大きな差があります。

項目 一般社団法人 株式会社
登記空白期間 5年 12年
公告後の届出期限 2か月 2年
郵便通知 あり あり
届出をしなかった場合 2か月で解散扱い 2か月で解散扱い

実際には、空白期間が大きな違いですが、あとはほぼ同じです。

みなし解散となると、法人は清算事業年度の法人税申告を行う必要があります。また、登記簿に「解散」と記載されるため、補助金の審査で差し戻されたり、契約更新がスムーズにいかなくなることがあります。

みなし解散を避けるための対応としては、役員変更や所在地変更があれば速やかに登記を行い、登記が5年以上動いていない場合には状況を確認しておくことが最も大切です。バーチャルオフィスを利用している法人では、郵便管理が甘くならないよう特に注意が必要です。法務局からの通知は、内容は地味でも法人の生命線とも言える重要書類です。届いたことに気づかず棚の奥に眠らせてしまうと、気づいた時には取り返しのつかない状態になっていることがあります。

みなし解散や復活手続きは、期限管理や書類作成などのハードルが高く、ご自身だけで対応すると負担が大きい場合があります。税理士・司法書士として、登記と税務の双方から手続きを一貫してサポートできます。

「ひょっとすると、うちの法人も危ないかもしれない」と感じたら、ぜひ当事務所にご相談ください。あなたの一般社団法人を確実に守るため、全力で伴走いたします。