Last Updated on 2025年12月2日 by 渋田貴正

みなし解散とは、株式会社が長期間にわたり法務局へ役員変更登記などを届け出ていない場合に、行政から「活動していない会社」とみなされ、自動的に解散と扱われる制度です。正式名称は「休眠会社のみなし解散制度」です。合同会社にはない株式会社特有の制度です。

会社法
(休眠会社のみなし解散)

第472条
  1. 休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し2箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その2箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。
  2. 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。

みなし解散になると、会社は法務局の職権で自動的に解散扱いになります。本来であれば必要な「株主総会での解散決議」や「解散登記」を自分で行う必要がありません。そのため、もともと会社を畳む予定だった方にとっては、解散手続きの一部が省略されるという意味で、負担が軽くなる側面もあります。

ただし、みなし解散はあくまで「解散」が行われたというだけです。みなし解散を契機にそのまま清算を進める場合でも、清算人の選任、清算業務、清算登記手続き、税務申告などの手続きは自ら進めていく必要があります。

会社を復活させずに清算する場合の基本手続き

みなし解散後に清算を続ける場合はまずは清算人が誰なのかを決める必要があります。みなし解散後に清算を続ける場合は、まずは清算人が誰なのかを決める必要があります。みなし解散はあくまで「法務局が職権で解散登記を入れた状態」にすぎず、清算人までは自動的に選任されません。

通常の解散と同じく、会社として清算人を決め、株主総会の決議または定款の定めに従って選任する必要があります。元代表者をそのまま清算人にするケースが多いですが、これは自動で決まるものではなく、あくまで会社側の判断が必要です。

通常は元代表取締役が就任しますが、定款で指定されている場合や株主総会で別の人を選ぶことも可能です。ただし、みなし解散のように長年放置されていた会社は状況が不透明なことが多く、通常は第三者ではなくその会社の代表者が清算人を務めることは通常です。

清算人が決まったら、法務局へ清算人選任の登記申請を行います。この登記をしておかないと、銀行口座の解約や資産の売却など、清算に必要な各種手続きが進められません。

以下は、みなし解散後に清算手続きとして行う主な内容を整理した表です。通常の清算に比べてみなし解散後の清算業務自体はシンプルなケースが多いです。そもそもそのまま清算まで進むような状況にある会社は債権債務もほぼない(社長からの借り入れなどくらい)ケースがほとんどであり、実際に債権者などとやり取りするということはないことがほとんどです。

区分 手続き内容 ポイント
清算人の決定 清算人の選任 みなし解散では解散登記だけが自動。清算人は会社側で選任する必要あり
登記 清算人選任登記 資産ゼロでも登記は必須。これがないと銀行解約など最低限の手続きが進まない
銀行口座 残高の確認・解約 休眠会社は小額残高が多い。名義人は清算人に変更が必要
税務 解散申告・清算中の確定申告 売上ゼロでも申告は必要。不提出だと加算税のリスク
清算結了 清算結了登記 全ての整理が終わった後に申請。これで会社は完全に消滅

このように、清算は登記だけでは終わりません。銀行口座の管理、未収金の徴収、請求書の処理、取引先への通知など、思っている以上に事務量が多くなります。

休眠会社のみなし解散から清算までの税務申告で注意すべきポイント

みなし解散後は、まず「みなし解散日を期末とする解散事業年度」の法人税申告が必要です。事業を何年も行っておらず売上ゼロというケースがほとんどですが、それでも申告義務そのものはなくなりません。

その後、清算結了までの間は「清算中の申告」を行います。ただし、みなし解散に至る会社は長年休眠状態であることが多く、清算期間中に新たな取引が発生しないため、実務上は極めてシンプルな申告となるケースが多いです。

また、休眠会社は車両や設備などの資産を持っていないことがほとんどのため、清算中に譲渡益が発生するケースは非常にまれです。みなし譲渡(時価より安く役員へ売却した場合に課税されるルール)についても、そもそも売却する資産がないため対象にならないことがほとんどです。

しかし、法人税は「売上ゼロでも申告義務はある」という点に注意が必要です。個人のように赤字なら法人税などの申告不要といったことはないため、清算中で損益0円でも申告義務があります。

清算に進むべきか、会社を継続すべきかの判断ポイント

みなし解散となった会社が、今後どう進むべきかは「清算で会社を畳むのか」「復活登記をして会社を継続するのか」の二択になります。
どちらが適切かは、資産の有無や未処理の取引、今後の事業予定などにより大きく異なります。特に、不動産を持っている会社や、登記の放置により意図せず解散してしまった会社は、清算だけでは対応できないケースもあります。

以下の表では、一般的な状況ごとに「清算に進むべきケース」と「継続(復活登記)が必要なケース」を整理しています。自社の状況にあてはめることで、大まかな方向性をつかむことができます。

該当するケース 判断のポイント
清算に進むべきケース ・事業活動を長期間行っていない
・銀行残高が少額で整理が容易
・売掛金・買掛金がほぼない
・借入金や債務が少額で確実に返済可能
休眠状態が長く、資産・債務がほぼゼロの会社は清算が最も合理的です。
継続(復活)すべきケース ・取引契約の解約に株主総会決議などが必要
・負債超過で通常清算が困難
・登記漏れで意図せず解散してしまい、再開の必要がある
不動産を保有している場合や、契約処理に会社の存続が必要な場合は復活登記が必須です。

清算は会社の「最後の大仕事」です。みなし解散=すぐに終わり、ではなく、登記を閉鎖つまり清算結了まで進めたい場合には、ここから本格的な事務処理が始まります。

みなし解散後の清算では、登記と税務が密接に絡み合います。清算人の選任登記、預金や資産の処理、法人税申告、消費税の対応など、多岐にわたり、一般の方だけでは難しい場面が多くあります。特に不動産や借入が絡む場合は、選択を誤ると後々の税負担や法的トラブルにつながることも少なくありません。

当事務所では、司法書士と税理士がワンストップで対応し、清算人登記から財産整理、最終申告まで一貫してサポート可能です。「みなし解散の通知が届いた」「このまま会社を畳みたい」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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