Last Updated on 2025年10月11日 by 渋田貴正
一般社団法人では、株式会社と同様に「理事会設置法人」と「理事会非設置法人」があります。理事会を設置する法人では、機関設計や登記の運用において、理事の人数が非常に重要になります。
特に、理事会を設置している場合には、最低3名以上の理事を置かなければならないと定められています。そのため、理事の辞任や死亡などにより理事が2名以下になった場合、理事会が存続できなくなってしまう可能性があります。このようなとき、登記はどのように対応すれば良いのでしょうか。以下で、法律の根拠と実務の考え方をわかりやすく解説します。
理事会の設置や維持には3名以上の理事が必要
法律では次のように定められています。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(役員の資格等) |
つまり、理事会を設置する一般社団法人(=理事会設置法人)では、理事が3名未満になった時点で、理事会の存立要件を欠く状態になります。
この規定は、株式会社の取締役会に関する会社法の規定とほぼ同趣旨のものです。
理事が3人未満に減っても理事会設置法人での理事の退任登記は申請可能
理事の辞任や死亡によって人数が3名を下回った場合でも、退任登記は単独で申請・受理されます。
法務局は「理事会の要件を欠いている」という理由で、退任登記を却下することはありません。
そのため、辞任と同時に理事会廃止登記を出す必要はなく、まずは退任登記を申請し、後から補充や定款変更の対応を行うことが可能です。
ただし、3名未満の状態を放置することはできません。要件を満たさないままでは、法人運営や登記手続きに支障が出てしまいます。
理事が減った場合、法人は以下のいずれかの対応を取る必要があります。
状況 | 対応 | 登記の要否 |
短期間で補充予定あり | 後任理事の選任登記 | 理事会廃止登記は不要 |
補充予定なし | 定款変更で理事会を廃止 | 理事会廃止登記が必要 |
任期満了で権利義務理事が残る | 形式上は3名維持 | 補充または再任が望ましい |
「短期間」の扱いと法務局の運用
一般法人法には、「補充を○日以内に行わなければならない」といった明確な期限は定められていません。
しかし、実務では株式会社と同様、おおむね1〜2か月以内に補充または廃止登記を行うのが目安とされています。
短期間で補充予定がある場合は、まず退任登記だけを先に申請して差し支えありません。ただし、3か月以上放置すると法務局から「理事会廃止登記または補充登記をしてください」という催告が届く可能性があります。およそ半年以上放置すれば、登記懈怠として過料の対象となることもあります。
辞任や任期満了の場合の権利義務理事の扱い
理事が辞任したり任期が満了したりした場合でも、後任が選任されるまでの間は「権利義務理事」としての地位を持ち続けます。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(役員等に欠員を生じた場合の措置) |
この権利義務理事は、理事会設置法人の3名の人数要件に含まれます。
したがって、3名中1名が任期満了で退任し、後任が未選任のままの場合は、その1名が権利義務理事として残るため、形式上は3名体制が維持されます。
一方で、死亡や即時辞任の場合は権利義務理事にはならないため、その時点で人数が減少します。
状況 | 形式上の人数 | 要件充足 | 補足 |
任期満了 → 後任未選任 | 2名+権利義務1名 | ○ | 形式的に3名体制 |
即時辞任 | 2名 | × | 権利義務理事にならない |
死亡 | 2名 | × | 同上 |
理事会の人数要件を満たさなくなった場合の補充や廃止登記、定款変更手続きは、専門的な法律知識と正確な登記実務が必要です。自己判断で放置したり誤った対応をすると、法務局から補正や催告を受けることになり、法人運営にも支障が生じます。
当事務所では、理事の退任登記・補充登記・理事会廃止登記・定款変更など、一般社団法人の登記実務に精通した司法書士が、迅速かつ的確にサポートいたします。状況に応じた最適な対応をご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。