Last Updated on 2025年9月3日 by 渋田貴正

休眠会社とは何か

休眠会社とは、登記上は存続しているものの、事業活動を停止している会社を指します。法人格は残っているため、必要な手続きを経れば再び事業を再開できます。

「数年前に立ち上げた会社を使わなくなり、税務署や都道府県、市区町村へ休眠届を提出した会社」が主な休眠会社ですが、「法人税等の申告はしているが実際の事業を行っていない会社」も広い意味では休眠会社に含まれます。

もともと会社を設立して休眠会社を保有している人が事業を新しく始めたいとき、この休眠会社を再利用するか、それとも新設会社を立ち上げるかは、多くの方が直面する悩みです。

休眠会社の再開、新設法人の設立それぞれのメリット・デメリット

休眠会社を再利用するメリット

休眠会社を活用する最大の利点は「時間とコストの節約」です。

  • 設立費用が不要
    新設時に必要な登録免許税(株式会社15万円、合同会社6万円)や定款認証費用(株式会社約5万円)がかかりません。
  • 設立年月日が古い=信用力の維持
    登記簿には設立日が残るため、10年以上の設立実績があると「歴史のある会社」として取引でプラスに働くことがあります。
  • 銀行口座の継続利用
    休眠前に開設した口座が残っていれば、そのまま使える場合があります。新設会社では開設に数か月かかることもあるため大きなメリットです。
  • 契約や実績の引き継ぎ
    契約の有効期間によっては休眠前に結んだ契約を引き続き利用できる場合があります。

休眠会社を再利用するデメリット

再利用には注意点やリスクも存在します。

  • 定款の内容が古い
    休眠前の事業目的に限定されていると、新しい事業に対応できません。変更には株主総会決議や認証費用が必要です。
  • 登記手続の整理が必要
    長期間放置していると、取締役の任期切れや住所未登記などが発生しており、複数の登記手続きをまとめて行う必要があります。場合によっては社名変更、本店移転、目的変更などの登記手続きが必要となります。
  • 税務上のリスク
    休眠中も法人税の申告義務が免除されるわけではありません。未提出があれば修正申告や追納が必要になることもあります。
  • イメージ面のマイナス
    「一度休眠した会社」と知られると、取引先に不安を与える可能性があります。

新設会社を設立するメリット

新設会社の強みは「自由度」と「新規の制度利用」にあります。

  • 最新の定款を作成可能
    新しい事業に合わせて定款をゼロから作れるため、柔軟に対応できます。
  • 株主・役員構成を自由に設定
    過去の株主関係を気にせず理想的な体制を整えられます。
  • 税務上のメリット
    青色申告承認やインボイス登録しない場合の消費税の2年間免税など、新たに会社を設立することで受けられる制度を利用できます。休眠会社は申告状況によっては青色申告の承認が取り消されている場合もあるので注意が必要です。
  • 新しい会社としての印象
    「新しいビジネス専用の法人」として取引先にポジティブなイメージを与えることができます。

新設会社を設立するデメリット

新設には次のような負担があります。

  • 初期費用が発生
    株式会社で約20万円、合同会社で6万円程度の登録免許税などが必要です。
  • 信用力ゼロからのスタート
    実績がないため、融資や大手取引先との契約で不利になることがあります。
  • 銀行口座開設が厳格化
    新設会社は口座開設に時間がかかるうえ、審査が厳しい傾向にあります。
  • 届出手続が多い
    税務署・都道府県・市町村への届出をゼロから行う必要があります。
項目 休眠会社の再利用 会社の新規設立
設立費用 設立費用不要 株式会社約20万円、合同会社6万円
信用力 設立年月日が古ければ有利 設立直後は弱い
定款 古く修正が必要になる場合あり 自由に最新設計可能
登記 任期切れや未登記整理が必要 設立登記のみ
税務 休業届取下げや過去整理が必要 新規届出でスムーズ
銀行口座 継続利用可能な場合あり 新規開設で審査に時間
契約関係 過去契約を引き継げる可能性あり 新規で契約が必要

初期費用をできるだけ減らしたい場合も「休眠会社の再利用」が向いています。設立費用が不要なうえ、既存口座や契約を使えることが多いため、余計な出費を抑えられます。ただし、定款変更や登記整理に費用がかかる場合は新設の方が安いこともあります。

役員や株主構成を一新したい方、過去の会社イメージを引きずりたくない方には「新設会社」が適しているでしょう。

 

休眠会社再利用 新設会社
主なメリット 設立費用不要、信用力維持、口座や契約を継続可能 定款自由設計、クリーンな印象
主なデメリット 定款・登記整理の負担、過去税務リスク、イメージ低下 設立費用負担、信用力ゼロ、口座開設難易度

休眠会社の状態や目的によって最適な選択肢は異なります。融資を重視するのか、コストを抑えるのか、あるいは新しい体制でスタートしたいのか。状況に合わせて専門家の助言を受けながら決めることが重要です。

当事務所では、休眠会社の再利用、新設会社の設立支援、どちらも税務と登記の両面からサポート可能です。安心して事業を始められるように伴走いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。