Last Updated on 2025年8月27日 by 渋田貴正
会社を清算し、銀行口座も閉じたあとに実はまだ還付されるべき税金が残っていたということがたまにあります。「もう会社は清算結了してなくなったのに、どうやって受け取るの?」と不安になる方も多いでしょう。
実はこの還付は、会社清算の際によく発生する自然な手続きの一部です。ここでは中間納税を中心に、なぜ還付が起きるのか、どうやって受け取るのか、登記との関係はどうなるのかをわかりやすくご説明します。
なぜ清算後に還付が起きるのか(中間納税の精算)
会社を解散すると、その時点で事業年度が終了します。これを「みなし事業年度」と呼びます。
法人税や消費税には「中間納税」という制度があります。前年の利益や税額をもとに、年度途中であらかじめ税金を前払いする仕組みです。しかし、解散で事業年度が短くなると、売上や利益が通常より少なくなります。すると、次のような状況が生まれます。
- 前払いした中間納税額 > 実際の確定税額
- 差額が「払いすぎ」となり、税務署から還付される
この還付は、誤った申告を直す「更正の請求」ではなく、確定申告の精算で自然に発生するものです。
わかりやすいイメージ
- 前払いで10万円を納めていた
- 実際の税額は6万円で済んだ
- 差額の4万円が戻ってくる(還付)
清算結了後に会社の口座を閉じた後に税金の還付を受けるには?
本来の税金還付までの流れは以下の通りです。
ステップ | 内容 |
1 | 確定申告で税額を計算し、中間納付との差額を確定 |
2 | 申告書に還付の受取方法を記入 |
3 | 税務署から還付通知が届く |
4 | 指定した方法で還付金を受け取る |
ただし、清算時には上記の流れから外れることがあります。そうした場合の還付を受ける方法は主に以下の3パターンがあります。
清算結了後、口座クローズ後の還付の受取方法(3パターン)
税務署の運用によって差がありますが、主に次の3つの方法があります。
方法 | 概要 | メリット |
1)清算人個人の口座へ振込 | 清算人の個人口座を指定して受け取る | 振込なので便利 |
2)税務署窓口で受領 | 清算人が直接税務署に行き、現金を受け取る | 即時性あり |
3)郵便局での受取 | 「国庫金送金通知書」や「振替払出証書」を持参し、郵便局で現金を受け取る | 会社口座がなくても確実に受取可能 |
1)清算人個人の口座への振込
もっともシンプルに見える方法が、清算人の個人口座へ振り込んでもらうやり方です。
銀行振込で入金が確認できるため便利ですが、国税(法人税・消費税など)では「原則として法人名義の口座にしか振り込めない」というルールがあります。
そのため、この方法を使いたい場合には次のような注意点があります。
- 税務署に事前相談が必要:事情を説明すれば、清算人個人口座を認めてもらえるケースもあります。
- 本人確認資料の提出が必要:清算人の本人確認書類(運転免許証など)や、清算人に就任していることがわかる登記事項証明書などを求められることがあります。
2)税務署窓口での受領
「直接、税務署に行って現金で還付を受け取れるのでは?」と考える方も少なくありません。
確かに税務署に出向くことで受取に関する相談はできますが、国税では原則として税務署窓口で現金を渡すことはありません。
では、窓口に行くとどうなるのでしょうか?
- 還付の手続き内容を案内してもらえる
清算人が受取方法をどう希望するのか確認し、後日「郵便局で受取」か「振込」に進むのが一般的です。 - 必要書類の確認・提出
履歴事項全部証明書と自身が清算人であることを証明できる身分証明書など、必要な書類を確認してくれます。
3)郵便局での受取(国庫金送金通知書方式)
もっとも一般的で確実なのが、郵便局(ゆうちょ銀行窓口)で現金を受け取る方法です。
申告書で「窓口受取」を指定しておくと、後日、税務署から「国庫金送金通知書」または「振替払出証書」と呼ばれる書類が送られてきます。
受取の流れは次のとおりです。
- 確定申告書に「還付金受取場所」として郵便局を指定する
- 後日、税務署から通知書が郵送される
- 通知書と本人確認書類を持参して郵便局窓口に行く
- 窓口で現金を受け取る
この方法には次のようなメリットと注意点があります。
- メリット
- 法人の口座がすでに解約済みでも問題なく受け取れる
- 全国どこの郵便局でも指定可能(ただし一部除外あり)
- 現金で確実に受領できる
- 注意点
- 通知書には有効期限があるため、期限を過ぎると受け取れません
- 代理人が受け取る場合は、委任欄の記入や追加書類が必要になります
- 郵便局によっては高額還付の場合に追加確認が入ることがあります
清算登記との関係
会社清算の最終段階では「清算結了登記」を行います。これは、残余財産(会社に残った財産)がすべて分配された後に行う登記です。
もし還付金がある場合、その金額も残余財産に含まれます。
したがって、本来であれば、還付金を受け取ってから清算結了登記をするのが安全です。しかし、実際には早く清算結了登記を終わらせたく、還付金の入金前に清算結了するケースもあります。
会社清算後の思わぬ還付にも、当事務所にご相談いただければ安心です。
「この場合はどうなる?」と疑問を感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。