Last Updated on 2025年7月4日 by 渋田貴正

近年、日本の事業者が海外の大学や企業と提携し、留学生のあっせんや人材紹介を行うケースが増えています。たとえば、オーストラリアの大学に日本人学生を紹介したり、ベトナムの企業に技術者を送り出すようなケースです。

こうした業務で受け取る紹介手数料について、「消費税の課税対象になるのか」「輸出免税の対象になるのか」は非常に重要なポイントです。
消費税の取り扱いは、「誰に提供したサービスなのか」「どこで便益が発生するのか」によって変わってきます。

消費税が免税となる「輸出免税」とは?

消費税法上、日本の事業者が国内で提供するサービスには原則として消費税が課税されますが、例外的に輸出免税という制度があります。

この制度に該当すれば、そのサービス提供にかかる手数料等については消費税が課されません(免税)。

輸出免税が適用されるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

判定項目 内容
サービスの提供先 非居住者(日本に住所や事業所のない外国の法人など)
便益の発生場所 日本国内で便益を享受しない(=海外で完結する業務)

このような取引を「非居住者に対する国外役務提供」と呼び、消費税法第7条等により輸出免税の対象とされます。

具体例その1:ベトナム企業への人材紹介

次に、日本の人材紹介会社が、ベトナムのIT企業に技術者を紹介したケースを考えてみましょう。

  • ベトナム企業が、日本の紹介会社に 20,000,000ベトナムドン(VND) を支払う契約
  • 紹介された日本人技術者は、ベトナムの現地法人で雇用され、就業もベトナム国内

この場合、次のように考えられます。

  • サービスの提供先:ベトナム企業(非居住者)
  • サービスの内容:現地勤務人材の紹介
  • 便益の発生場所:ベトナム(日本ではない)

このようなケースでは、非居住者への国外役務提供に該当するため、消費税は輸出免税の対象となります。

具体例その2:オーストラリアの大学への留学生紹介

ある日本の企業が、オーストラリアの大学と提携して、日本人学生の留学を仲介しています。
契約条件は以下のとおりです。

  • 学生から 2,000オーストラリアドル(AUD) を受領
  • うち 1,600AUD をオーストラリアの大学に送金
  • 残る 400AUD が企業の報酬(手数料)

この場合、消費税の課税関係はどうなるのでしょうか?

パターンA:大学からの報酬とみなされる場合

  • 受領した2,000AUDは、大学の依頼により日本側が学生から代理で受け取っていると解釈されます。
  • この場合、手数料400AUDはオーストラリアの大学(非居住者)から受け取る報酬であり、
  • かつそのサービス(学生紹介)は日本国内で便益をもたらすものではないため、輸出免税の対象になります。

パターンB:学生から直接手数料を徴収している場合

  • 400AUDが学生自身の負担による手数料とされる場合、提供相手は日本在住の居住者になります。
  • この場合は、通常の国内サービス提供として日本国内にて消費税が課税されます。

まとめ:取引形態と消費税の取扱い早見表

取引の形態 課税区分 解説
オーストラリアの大学と契約し、紹介料を受け取る 輸出免税 非居住者への国外役務提供
留学生から直接手数料を受け取っている場合 課税対象 居住者に対するサービス提供
ベトナム企業に人材を紹介し、企業から報酬を受ける 輸出免税 海外で便益が発生するため
日本企業に外国人を紹介し、国内報酬を受け取る 課税対象 国内役務の提供
海外企業からの依頼で、日本在住者にサービスを提供する 課税対象の可能性あり 国内に便益が発生するかどうかで判定が分かれる

契約と資金の流れが課税関係を左右

上記のとおり、契約の当事者が誰か、対価の支払主体がどこか、サービスの便益がどこで発生するのかといった点が、消費税の課税・免税を大きく左右します。

したがって、契約書の文言や請求書の記載内容を精査することがとても重要です。
特に、インボイス制度が始まった現在では、誤った消費税処理は仕入税額控除の否認や追徴課税につながるリスクもあります。

海外の大学や企業と関わるビジネスは、日本の消費税制度の中でも判断が難しい分野です。
「このケースでは免税になるのか?」「請求書には何と書くべきか?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。

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