Last Updated on 2025年6月27日 by 渋田貴正

法人税の申告期限は、原則として「事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内」とされています。しかし、株式会社の場合は「定時株主総会の承認を得てからでないと決算書が確定しない」という事情から、定款の定めと税務署への申請によって申告期限を1ヶ月延長する特例が認められています。

では、定時株主総会を持たない合同会社でも、同じように延長できるのでしょうか?

株式会社との違い:合同会社には株主総会がない

株式会社においては、計算書類は原則として株主総会の承認を経て確定される仕組みです。そのため「決算確定=株主総会の日」となることが一般的であり、申告期限の延長が実務的に必要とされます。

実際には中小企業、一人社長の会社などでは定時株主総会といっても形式的なものであり、税理士とのやり取りなどのスケジュール次第では2か月以内に決算が確定することも少なくありませんが、安全のために申告期限の延長申請を行っておくことが通常です。

一方で、合同会社には「株主」が存在せず、「社員」が会社の意思決定を行います。また、会社法上、計算書類の承認について特別な手続きが定められていないため、業務執行社員が作成した時点で決算が確定したとみなされるのが通常です。

このため、「延長の必要があるのか?」という疑問を持たれる方が多いのですが、合同会社でも定款で決算確定日を定めることで、1ヶ月の延長特例を受けることが可能です。

比較項目 株式会社 合同会社
決算の確定方法 定時株主総会の承認(会社法第436条〜)が必要 業務執行社員が作成することで確定(法定手続なし)
定款での確定日の定め 株主総会開催日等を規定 社員の同意により決算確定日を定めることが可能
延長特例の主な理由 株主総会の承認に時間を要するため 社員の同意手続きや、実務上のスケジュール調整のため
延長申請の実務的必要性 高い(定時株主総会後に決算が確定) ケースによるが、複数社員や外部委託がある場合は必要性あり
特例適用の条件 定款に定め+申請書提出 同左。定款で決算確定の定めを明示する必要あり

このように比較してみると、合同会社の方が形式的には簡便ですが、実務では「内部手続きが明文化されていないこと」による見落としが起こりやすくなります。事前の定款整備と延長申請で、安心して決算・申告を進められる体制を作っておくことをおすすめします。

合同会社の申告期限延長申請のための要件と手続き

税務署に申請して法人税の申告期限を1ヶ月延長するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

要件 内容
1. 定款の定め 決算確定日が事業年度終了の日から3ヶ月以内である旨を定款に記載
2. 特例申請書の提出 「法人税等の申告期限の延長の特例の申請書」を所轄税務署に提出

※なお、地方税(法人住民税・法人事業税)についても同様に延長申請が必要です。

定款記載例(合同会社)

(決算の確定)

第○条 当会社の事業年度終了後の計算書類は、社員の同意により、事業年度終了の日から3ヶ月以内に確定するものとする。

上記のように「決算確定は社員の同意により行う」「その確定日は3ヶ月以内とする」と定めておくことで、税務上の「確定した決算」に該当する日が最大3ヶ月後となり、1ヶ月の延長が認められるようになります。

申告期限延長の必要性はある?合同会社でも延長を検討すべきケース

合同会社では、業務執行社員が決算書を作成すれば原則としてそれだけで「確定」とみなされるため、理論上は法人税の申告期限(事業年度終了から2ヶ月以内)を延長する必要はないとも考えられます。

しかし、実際には申告期限を延長しておいた方が安心なケースも少なくありません。

複数社員がいて決算に同意を要する

たとえば、社員が複数人いる合同会社で、「定款に社員の同意をもって計算書類を確定する」と定めている場合、実際の決算確定日はその同意が得られた日となります。社員間での調整や、同意の取得に時間がかかるような場合は、決算確定が遅れる可能性もあります。その結果、申告期限(決算確定から2ヶ月)もずれ込み、実質的に延長しないと申告が間に合わなくなるおそれがあるのです。

税理士とのやりとりに時間を要する

また、税理士に決算・申告を依頼している場合、繁忙期(特に3月決算など)には資料提出の遅れや修正依頼の対応などでスケジュールが後ろ倒しになることも多く、少しでも余裕がある方が安心です。

会計処理が煩雑な業種や事業内容である

さらに、創業初年度などは慣れない会計処理や未整理の資料がある場合もあり、スムーズに申告準備を進めるのが難しいことも。こうした場合にも、1ヶ月の猶予があるとミスや遅延のリスクを減らせます。

合同会社は柔軟な運営が可能な反面、社内での手続きのタイミングを法的に強制されない分、自主的なルール整備とスケジュール管理が求められます。その一環として、申告期限延長の特例を事前に整備しておくことは、非常に有効なリスク対策となります。

延長申請に必要な書類一覧と提出時期

書類名 提出先 提出期限
法人税等の申告期限の延長の特例の申請書 所轄税務署 適用を受けたい事業年度の終了日まで
地方税に関する延長申請書 各自治体 同上

 

合同会社は株式会社と比べて柔軟に運営できますが、その反面、法律上の明確な手続きが存在しないために「決算確定日」に関する考え方があいまいになりがちです。

ですが、定款に「決算確定には社員の同意が必要である」と定め、その確定日を3ヶ月以内に設定することで、申告期限の延長は可能です。

こうした税務上の延長措置を事前に検討しておくことで、安心して法人運営ができる体制を整えることができます。

当事務所では、司法書士と税理士の資格を活かして、合同会社の設立から定款の見直しや延長申請書の作成までワンストップで対応可能です。まずはお気軽にご相談ください。