Last Updated on 2025年5月14日 by 渋田貴正

会社の代表者が交代する際、「印鑑」の取り扱いについて悩まれる方は少なくありません。特に、新たに就任する代表者が「代表取締役(または代表社員)に就任する人が、法務局に届け出る予定の印鑑を、そのまま就任登記の申請書類に押してもよいのか?」という疑問を持たれる方も多いと思います。

会社の代表者の就任登記に必要な書類と押印の基本

会社の代表者が交代する場合には、法務局に対して「代表者変更登記」を申請する必要があります。このとき、登記に必要な書類には以下のようなものが含まれます。

書類名 説明 押印の有無
登記申請書 登記の本体となる書類 会社の代表印が必要
株主総会議事録や社員総会議事録 選任決議の記録 必要に応じて代表印等
就任承諾書 就任者本人の意思確認書類 原則として本人の実印または記名押印
印鑑届書 法務局に提出する会社代表印の届出書 新代表者の実印が必要
「就任前の新代表者が届け出ようとする印鑑」で押していいの?

就任登記に際して「新しく届け出る代表印を、申請書類に押印できるのか?」という点については、答えからいうと「問題ない」です。

商業登記規則第9条第3項では、「登記の申請書には、代表者が会社の印を押印する」とされており、これは「登記申請時点で代表者となっている者が届け出る予定の印鑑であること」が前提です。

つまり、就任と登記申請は同時に処理されるものなので、「これから法務局に届け出る印鑑」であっても、その印鑑で申請書を作成し、提出して差し支えないという運用がなされています。

代表者が交代する場合の登記申請の実務的な流れは次のようになります。

  1. 株主総会等で代表者を選任
  2. 新代表者が会社の代表印を作成
  3. 登記申請書を新しい印鑑で作成し押印
  4. 同時に「印鑑届書」も作成し、その印鑑を届け出

このように、「登記申請と印鑑届出を同時に提出する」ことで、整合性が取れた形になります。

なぜこのような運用が認められているのかといえば、「登記」とは、あくまで事実の公示(こうじ)であり、登記申請時に実際にその人が代表者となっていることが前提です。代表者就任の効力は「株主総会や社員総会の決議」で生じます。したがって、「これから届け出る印鑑」を用いて申請書類を作成することは、「代表者としての意思表示」として十分に合理的であり、登記実務上も広く認められているのです。

代表者変更の登記は、印鑑の不備や記載ミスにより補正が必要となることが多い手続きです。当事務所では、会社法・登記実務に精通した司法書士が、代表者印の扱いや添付書類の作成までトータルでサポートしております。お困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。