Last Updated on 2025年5月12日 by 渋田貴正
会社経営を始めると、取引先との会食や贈答などにかかる「交際費」の支出が増えていきます。ところがこの交際費、すべてが経費として認められるわけではありません。
とくに設立したばかりの中小企業では、「税務上の交際費の限度額」を理解しておくことが大切です。
本記事では、会社設立したばかりの多くの会社が該当する資本金1億円以下の法人が使える「交際費の損金算入制度」を中心に説明します。
交際費とは?~対象と対象外の区別に注意
税務上の「交際費等」とは、取引先など社外の関係者に対する接待・贈答・慰安などの費用をいいます。多くの設立したばかりの会社については、交際費といえば以下の3種類です。
1)接待飲食費
2)贈答費
3)ゴルフ
交際費の上限
実は、交際費は「いくらでも経費にできる」わけではなく、法人税の計算上、損金にできる金額には制限があります。この制限は、会社の資本金に応じて変わります。
そもそもなぜこのような上限規制があるかといえば、主に以下のような理由が挙げられます。
① 節税の濫用防止 | 過度な交際費支出の抑制 | バブル期などに交際費を使って実質的な節税が横行したため、損金算入に制限を設けて濫用を防止する |
② 中小企業支援 | 営業努力に配慮した特例制度 | 資本金1億円以下の法人に対して、800万円までの定額枠などを用意し、営業活動を後押しする |
④ 税務処理の明確化 | 税務調査や申告処理を簡素化 | 「50%方式」「少額飲食費の例外(1人5,000円以下)」などで処理基準を明確にする |
資本金1億円以下の法人は、2つの方式から選択可能
資本金が1億円以下の法人は、次のいずれか有利な方法を選ぶことができます。
損金算入額 |
---|
① 接待飲食費の50% |
② 年間800万円 |
金額が高額であれば①の方が有利ですが、飲食費が少額の場合は②の800万円方式が有利になります。
資本金1億円超~100億円以下の法人は「50%方式のみ」
この規模の法人は、接待飲食費のうち「50%」のみ損金算入が可能です。800万円の定額控除方式は使えません。さらに接待飲食費以外のゴルフや贈答品といった支出は資本金1億円以下の法人と異なり一切損金算入ができないのも大きな違いです。
【具体例】交際費の金額別に見た損金算入額
よりわかりやすくするため、接待飲食費がどれくらいの額で差が出るかを比較してみましょう。
交際費の額(飲食費) | 損金算入額(資本金1億円以下) | 損金算入額(資本金1億円超) |
---|---|---|
300万円 | 300万円(800万円方式) | 150万円(50%方式) |
600万円 | 600万円(800万円方式) | 300万円(50%方式) |
1,000万円 | 500万円(50%方式) | 500万円(50%方式) |
5,000万円 | 2,500万円(50%方式) | 2,500万円(50%方式) |
このように、飲食費が少額のケースほど、資本金1億円以下の法人の方が有利になります。よく、「交際費は800万円まで」という言葉が独り歩きしていますが、実際には飲食接待が多い会社については800万円を超えて交際費を損金計上できるということです。
経理上の交際費と税務上の交際費は一致させなくてもよい
経理処理としては「交際費」として仕訳していても、税務上は一部しか損金にならないことがあります。
特に接待飲食費については、「1人あたり5,000円以下」の少額飲食費であれば、交際費に含めず全額損金にできる特例もあります。
ただし、実務では中小企業では基本的に「税務上の基準=経理の基準」として扱うケースが多く、税務調整をシンプルにする目的で合わせることが一般的です。
簡単にまとめると、以下の表のようになります。
ポイント | 資本金1億円以下 | 資本金1億円超 |
---|---|---|
選択肢 | ○ 50%方式・800万円方式 | × 50%方式のみ |
少額飲食時の有利性 | ◎ | △ |
多額飲食時の差 | △ 同等 | △ 同等 |
会社設立直後の会計処理や税務判断は、とても重要なスタート地点です。当事務所では、設立支援はもちろん、初年度からの交際費処理や節税プランも丁寧にサポートいたします。
不安な方はぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料です。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。