Last Updated on 2025年5月8日 by 渋田貴正
戸籍にフリガナが記載される新制度とは
令和7年(2025年)5月26日から、戸籍に氏名のフリガナが記載される新たな制度がスタートします。この制度は、行政手続のデジタル化を進めるとともに、本人確認の効率化や、なりすまし防止など多方面でのメリットがあります。
出生や帰化などで新たに戸籍に記載される人は、届け出時にフリガナを提出します。すでに戸籍に記載されている方については、以下の流れでフリガナが登録されます。
フリガナ記載までの流れ
令和7年(2025年)5月26日から始まる戸籍のフリガナ記載制度では、すでに戸籍に記載されている方について、市区町村長から順次フリガナの通知が行われ、その後、届出や記載が進められます。手続の流れは大きく3段階に分かれます。
【1】通知(市区町村長からの連絡)
本籍地の市区町村長が、戸籍に記載予定のフリガナを住民票などの情報を参考に作成し、対象者に通知します。この通知は令和7年5月26日以降、遅滞なく発送される予定です。通知を受け取ったら、まずは記載されているフリガナが正しいか必ず確認しましょう。誤りがあった場合は、次の「届出」の手続きが必要になります。
【2】届出(フリガナの修正や早期記載希望)
通知されたフリガナに誤りがある場合や、早めに戸籍へ記載したい場合は、令和8年5月25日までの1年間に限り、市区町村に届出を行います。この届出により、正しいフリガナが戸籍に反映されます。届出を行わない場合でも、通知通りのフリガナが令和8年5月26日以降、自動的に戸籍へ記載されます。
【3】市区町村長による記載
届出がなかった場合、市区町村長が管轄法務局長の許可を得たうえで、通知内容のフリガナを正式に戸籍へ記載します。なお、届出をしなかった場合でも一度だけなら家庭裁判所の許可なくフリガナを変更できます(ただし、一度変更すると次回からは家庭裁判所の許可が必要です)。
届出できる人と手続方法
氏名のフリガナの届出は、「氏のフリガナ」と「名のフリガナ」でそれぞれ届出人が異なります。
【氏のフリガナの届出ができる人】
原則として戸籍の筆頭者が単独で届け出ます。
もし筆頭者がすでに亡くなって戸籍から除籍されている場合には、その配偶者が届出人となります。配偶者も除籍されていれば、その子が届出をすることになります。つまり、家族内で筆頭者に近い順に届出資格が移っていく仕組みです。
名(下の名前)のフリガナについては、それぞれ本人が届け出ます。例えば、親が子どもの名のフリガナを届け出ることは原則できず、本人が行う必要があります。
【届出の方法】
届出は次の3つの方法から選べます。
オンライン(マイナポータル) | 政府の「マイナポータル」を使えば、自宅から24時間いつでも届出が可能です。役所に出向く必要がないため、忙しい方や遠方在住の方には特に便利です。 |
市区町村窓口 | 従来どおり、住民票のある市区町村役場の窓口で手続きすることもできます。 |
郵送 | 必要書類を郵送で提出する方法もあります。特に高齢の方や体が不自由な方には便利な手段です。 |
「一般的な読み方」以外でも届け出可能?
原則として「氏名として一般に認められている読み方」を届け出ますが、実際に使用している特別な読み方があれば、その読み方での届け出も可能です。その場合、読み方が通用していることを証する資料(パスポート・預貯金通帳など)の提出が必要です。
フリガナ記載による3つのメリット
① 行政手続の効率化
漢字表記の揺れや外字の問題を解消し、データベースの検索や本人特定の迅速化が図れます。
② 本人確認の精度向上
住民票やマイナンバーカードにもフリガナが表示され、正確な呼称が可能になります。
③ 不正防止
複数のフリガナで別人を装う不正行為(金融機関での規制逃れなど)を防止できます。
戸籍のフリガナ記載と相続の関係
相続登記や預貯金の名義変更では、被相続人や相続人の「氏名の読み方」が不一致の場合、手続が滞ることがあります。特に、読み方が珍しい場合や住民票と異なる場合、銀行や法務局での確認作業に時間を要し、場合によっては書面による証明を求められるケースも少なくありません。
今後、戸籍にフリガナが正式記載されることで、相続手続時の本人確認が迅速かつ確実になると期待されています。特に遠方の相続人や海外居住者が含まれるケースでは、この制度が大きな助けとなるでしょう。
また、専門家的な視点で見れば、税金の申告書等に記載するフリガナについて相続人様に確認するフローや、誤ったフリガナを記載してしまう可能性を無くすことができます。
令和7年5月から始まる戸籍のフリガナ記載制度は、行政手続の効率化や本人確認の正確性向上に資するだけでなく、将来の相続手続でも重要な役割を果たします。通知が届いたら必ず内容を確認し、必要な場合は早めに届出を行いましょう。
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司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。