Last Updated on 2025年7月28日 by 渋田貴正

疑似外国会社とは?

会社法には、以下のように疑似外国会社の活動を制限する規定が設けられています。

会社法 第821条(疑似外国会社)
  1. 日本に本店を置き、又は日本において事業を行うことを主たる目的とする外国会社は、日本において取引を継続してすることができない。
  2. 前項の規定に違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

外国会社とは、「外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するもの」です。日本で外国会社の登記をしているかどうかは関係なく、海外で設立された会社であれば外国会社ということになります。

つまり疑似外国会社とは日本以外の国の法律に基づいて設立された会社でありながら、主に日本国内で事業を行っている会社のことです。日本で事業活動をしているにもかかわらず、海外で登記されているという理由で日本の法律が適用されない可能性があるといったことを回避するために設けられている規定が疑似外国会社の規制ということになります。

本来であれば外国会社は、日本で日本支社としての会社設立の登記または外国会社の登記を行わない限り日本国内で継続的な営業を行うことができません。疑似外国会社と日本で取引を行った場合、その取引が無効になることはありませんが、もし損害が発生すれば弁済義務があるほか、過料の対象にもなります。

ただし、疑似外国会社の規制の目的は最初から日本での脱法行為を目的とする会社なので、最初は海外でビジネスをしていた会社が次第に日本でのビジネスが拡大したといったケースは、結果的な話なので疑似外国会社に該当しません。

その他、以下のようなケースは疑似外国会社に該当しないという扱いになっています。

ただし、以下のように、日本での売上が大きくても、実質的な活動拠点が海外にある場合には疑似外国会社には当たらないとされています。以下は法務省のガイドライン等でも紹介されている典型例です。

判定されない例 内容の概要
(ア) 海外で調達・加工 商品・原材料の多くを海外から調達、または業務の多くを海外で行っている
(イ) 海外売上が主 商品の調達・提供は日本でも、最終的な販売先が海外であり売上比率も高い
(ウ) 海外資金で運営 日本での活動のための資金を、海外での借入や社債発行で賄っている
(エ) 海外事業支配 日本の事業をしながら、実質的に海外のグループ会社を統括している
(オ) 海外でガバナンス 役員会が海外で開催されている、主要な意思決定が国外で行われている

これらのケースでは、日本国内での売上や取引量が多くても、形式的・実質的に「外国会社」として扱う余地があるとされ、疑似外国会社の規制対象にはなりません。

疑似外国会社の「本店」の意味

日本に「本店」を置いている外国会社が疑似外国会社に該当するとなっていますが、この「本店」は日本で設立した会社の「本店」という意味ではなく、外国会社が外国で設立する際に本国で作成した定款などで定めた本店をいいます。つまりこの疑似外国会社の本店は日本で登記されている本店ではありません。日本で登記していないくせに、事業拠点は日本国内というケースが疑似外国会社に該当します。

外国会社が日本で事業を行う場合、以下のような手続きを踏む必要があります。

  • 日本における「外国会社の登記」(会社法933条)

  • 税務署等への開業届・法人設立届出書の提出

  • 納税地・課税方法に関する判断(恒久的施設PEの有無など)

これらの手続きを怠ったまま日本で事業を開始した場合、税務調査や商業登記上の指導により、過去の活動について修正申告や登記申請を求められることになります。

海外の会社が日本でビジネスを行う場合の外国会社の登記については当事務所までお気軽にご相談ください!