Last Updated on 2025年12月25日 by 渋田貴正

事業年度とは?

事業年度とは、法人税の申告を行うための一つの期間をいいます。通常は1年間で設定されます。会計のルールでは「会計期間」という言葉を使う場合もありますが、実務上は、事業年度も会計期間もほぼ同じ意味ととらえて問題ありません。決算書を作成し、法人税や消費税を計算するための一区切りの期間、それが事業年度です。

事業年度は会社ごとに自由に決めることができますが、会社設立時に決めて、そのまま変更せずに使い続けるケースが多いです。例えば、10月中のある日に会社を設立した場合、決算日を9月30日とする、いわゆる9月決算とする感じです。特段の事情がなければ、設立月から1年間にするのが一般的です。

事業年度は1年を超えることができないため、10月設立の場合、9月30日を決算日とするのが一つの典型例です。この場合、事業年度は10月1日から翌年9月30日までとなります。もっとも、1年を超えなければ事業年度は自由に設定できます。そのため、10月に設立して、初回の決算を翌年6月末とすることも可能です。設立初年度は、事業年度が短くなったり、逆に長くなったりするケースがあるのが特徴です。

上場会社などでは3月末決算が多いですが、中小企業では、設立時期や業務内容、税務申告の負担などを考慮して、事業年度はさまざまに設定されています。

事業年度を変更するにはどうすればよい?

事業年度は会社設立時に税理士と相談しながら決めることが一般的ですが、一度決めた事業年度を後から変更することも可能です。

事業年度の変更には、いわゆる「前倒し」も「後ろ倒し」もあります。前倒しとは、決算日を早める変更です。一方、後ろ倒しとは、決算日を遅らせる変更をいいます。

法的には、事業年度が1年を超えない限り、設立後であっても後ろ倒しは可能です。ただし、実務上は、後ろ倒しは会社設立初年度に行われるケースがほとんどです。

例えば、10月設立の会社で、当初は6月30日を決算日にしていたものの、設立後に事情が変わり、やはり9月30日に変更したい、といったケースです。このような調整は、設立初年度であれば比較的よく見られます。

定款に事業年度があるかどうかで手続きが変わる

事業年度を変更する場合、大きく分けて次の二つのケースがあります。

一つは、定款に事業年度が定められている場合、もう一つは、定款に事業年度が定められていない場合です。

多くの会社では、事業年度は定款に定められています。
事業年度は定款の「任意的記載事項」ですが、配当の時期や決算承認のタイミングに影響するため、株主にとっても重要な事項です。そのため、定款で明確に定めている会社が一般的です。

この場合、事業年度を変更するには、まず定款の変更が必要になります。定款変更には、株主総会の特別決議が必要です。

一方、事業年度が定款に定められていない場合には、定款変更は不要です。この場合、取締役の過半数の同意、取締役会設置会社であれば取締役会の決議によって、事業年度の変更が可能です。

合同会社の場合の事業年度変更手続き

事業年度の変更手続きは、株式会社だけでなく合同会社でも検討が必要になることがあります。ただし、合同会社の場合は、株式会社とは手続きの考え方が大きく異なります。

合同会社でも、事業年度は通常、定款で定められています。そのため、事業年度を変更する場合には原則として定款変更が必要となります。
合同会社の定款変更は、会社法上、原則として社員全員の同意が必要です。

株式会社のように、株主総会の特別決議や取締役会決議で足りるケースとは異なり、合同会社では、一人でも同意しない社員がいると定款変更ができません。そのため、社員が複数いる合同会社では、事前に十分な調整が必要になります。

もっとも、定款で「定款変更は社員の過半数の同意で足りる」など、別段の定めを置いている場合には、その定めに従うことになります。
実務上は、社員が一人の合同会社や、少人数で実質的に意思決定が一致しているケースも多いですが、形式的な手続きとしては、定款の内容を必ず確認することが重要です。

なお、合同会社で事業年度を変更した場合でも、法人税や消費税の申告期限が変わる点は株式会社と同じです。
そのため、事業年度変更後は、税務署や地方自治体に対して異動届出書を提出し、申告期限の認識違いが生じないようにしておく必要があります。

会社形態・定款の状況 定款変更の要否 必要な決議・同意
株式会社
(定款に事業年度の定めあり)
必要 株主総会の特別決議
株式会社
(定款に事業年度の定めなし)
不要 取締役の過半数の同意
(取締役会設置会社は取締役会決議)
合同会社
(定款に事業年度の定めあり)
必要 原則として社員全員の同意
合同会社
(定款に事業年度の定めなし)
原則不要 原則として社員全員の同意

実務上は、株主=経営者という中小企業も多いため、定款に定めがあるかどうかで手続きの重さに大きな差を感じないこともありますが、法的には明確な違いがあります。

変更の決議は「いつまで」に必要か

事業年度を変更する場合、注意すべき重要なポイントがあります。それは、変更の決議は、変更前の事業年度の末日までに行う必要があるという点です。

すでに事業年度が終了した後に、「やはり決算日を変更したい」と遡って決議することは認められていません。
この点は、税務上非常に重要な注意点です。

また、事業年度を変更すると、法人税や消費税などの申告期限も変わります。実務上、事業年度を変更する目的の多くは、申告期限や業務スケジュールの調整です。

そのため、事業年度を変更した場合には、税務署や都道府県、市区町村に対して「異動届出書」を提出する必要があります。

異動届出書は、変更を届け出るための書類であり、これを提出しなければ変更の効力が生じないというものではありません。ただし、提出していないと、申告期限の認識違いなどのトラブルにつながります。

原則として、異動があった場合は速やかに提出することが求められますが、実務上は、少なくとも変更前の事業年度に係る各種税金の申告期限までには提出しておく必要があります。

異動届出書には、変更後の定款や株主総会議事録など、事業年度変更を証する書類のコピーの添付を求められることがありますので、事前に準備しておくと安心です。

事業年度の設定や変更は、一見シンプルに見えますが、決議のタイミングや税務署への届出を誤ると、思わぬ税務リスクや手続きのやり直しにつながることがあります。
会社設立時や事業年度変更を検討されている場合は、税務と会社法の両面から整理することが重要です。

当事務所では、税理士・司法書士の両資格を活かし、事業年度の設計から会社設立、税務届出まで一体でサポートしています。事業年度や決算期でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。