Last Updated on 2025年11月13日 by 渋田貴正
相続登記や遺産分割を進めようとしたとき、「共同相続人の中に行方不明の人がいる」「親族が外国籍で、そもそもいるかどうかも分からない」という状況は決して珍しくありません。特に被相続人や相続人に外国籍の方がいるような国際相続の場面でこのようなことが起こることが多いです。
そのような場合に「不在者財産管理人を置くべきなのでは?」と考える方も多いですが、実は不在者財産管理人には明確な要件があります。
そもそも「不在者」とは?
不在者については、民法で次のように定義されています。
(不在者の財産の管理)
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かみ砕くと、以下の要件を満たす人が「不在者」ということになります。
- 元の住所・居所を離れている
- 容易に戻る見込みがない
- 生きていることが前提
つまり、不在者とは「存在しているが、所在が分からない人」を指します。
「連絡が取れない=不在者」というわけではなく、存在が確実であることが前提 という点が重要です。
| 状況 | 不在者に該当するか |
| 長期の家出で生存は確認できないが、記録上は存在 | 該当する |
| 住民票上の住所があるが連絡がつかない | 状況次第 |
| 旅行中・ホテルに滞在していて連絡可能 | 該当しない |
| 生死不明だが失踪宣告前 | 不在者 |
| 失踪宣告確定で死亡扱いになった | 不在者ではない |
不在者財産管理人とは
不在者が財産を管理できないとき、家庭裁判所が選任するのが「不在者財産管理人」です。
相続では、
- 遺産分割に不在者が参加できない
- 共有不動産の処分ができない
といった場合に利用されます。
不在者財産管理人は、不在者本人の財産を管理し、その利益を守る役割を担います。
一方で、行方不明者が長期間帰ってこない場合には「失踪宣告」が利用できます。
家庭裁判所で失踪宣告が確定すると、法的には死亡扱いとなり、相続人として扱われなくなります。
つまり、
- 失踪宣告を受けた人は「不在者」ではない
- 死亡した人に管理人を付ける必要はない
ということです。
存在するかどうか分からない人に不在者財産管理人は置けるのか?
結論からいうと、こうしたケースでは不在者財産管理人は置けません。
不在者財産管理人の前提は、
- 存在していることが確実
- 所在が不明
という状態です。
よって、
- 生きているか分からない
- そもそも実在するのか分からない
- 外国籍で戸籍情報が取れず存在確認不能
といったケースは 「存在不明者」 に分類され、不在者財産管理人の対象ではありません。
| ケース | 管理人選任が必要か |
| 生きていることは間違いないが所在不明 | 必要 |
| 生死不明だが失踪宣告前 | 必要 |
| 失踪宣告確定で死亡扱い | 不要 |
| 子が存在することは確実だが所在不明 | 必要 |
| 子がいるかどうかも不明(存在不明) | 不要 |
| 海外の親族で身分関係が調べようがない | 不要(存在不明) |
特に国際相続では、日本の戸籍制度が及ばない国が多く、「存在自体の確認ができない相続人」 が発生しやすい状況です。
中国籍の姉が失踪宣告、子の有無不明
- 中国には日本のような全国統一の戸籍制度がない
- 地域ごとの行政記録も検索できない
→ 子の存在を証明する手段がない
→ 結果として存在不明 → 不在者財産管理人は選任不可。
韓国籍の兄と絶縁し20年以上連絡がない
韓国の「家族関係登録簿」は本人等しか取得できず、他人からは取得不可。
→ 生存も子の有無も確認できず → 存在不明 → 管理人選任不可。
フィリピン人の父に別地域の子がいる可能性
フィリピンでは出生登録が地域分散型で、登録漏れが多い。
→ 実在確認不可 → 管理人選任不可。
アメリカ人の異父兄弟の出生州が不明
アメリカは州ごとに出生証明書を管理。州を特定できない限り記録は取得不能。
→ 実在確認不可 → 管理人選任不可。
ブラジル人配偶者に前婚の子がいる可能性があるが、州が不明
ブラジルの出生・婚姻記録は州単位で管理されており、州が分からないと検索すらできない。
→ 存在不明 → 管理人選任不可。
タイ人元配偶者の子どもが未登録の可能性
タイでは出生届未提出が比較的多く、公式記録が残らないことがある。
→ 存在確認不能 → 管理人対象外。
このように、国際相続では 「存在は不確か、所在も不明」 というケースが非常に多く、不在者財産管理人の対象となる「不在者」とは明確に異なります。
相続人が外国籍、行方不明、失踪宣告済み、出生記録未整備などのケースは、一般の方がご自身で調べて解決できるものではありません。
当事務所では、税理士・司法書士である私が、相続登記・遺産整理・身分関係調査・上申書作成まで一体でサポートしています。
「この状況で登記できますか?」という初歩的なご相談も大歓迎です。複雑な国際相続でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。
