Last Updated on 2025年6月1日 by 渋田貴正
戸籍にフリガナが追加された背景とは?
2024年から順次、戸籍に氏名のフリガナ(カタカナ)を記載する制度が始まりました(戸籍法第13条の2)。これにより、新たに婚姻届や出生届などを提出する際には、氏名の読み仮名の記載が求められています。
背景には、行政手続のデジタル化やマイナンバー制度との連携、漢字の読み間違いを防ぐ目的があります。では、相続手続や登記・税務の場面でフリガナはどのような意味を持つのでしょうか?
相続における戸籍のフリガナの実務的影響
Q1. 死亡した母の戸籍にフリガナがないのですが、相続登記に支障はありますか?
- 支障はありません。
戸籍のフリガナはあくまで補助的な情報であり、相続登記や相続税申告では漢字氏名・生年月日・続柄などが重視されます。フリガナが記載されていない戸籍でも、問題なく相続人を特定できます。
Q2. 私のフリガナは「ミヤザキ」ですが、姉の戸籍には「ミヤサキ」と記載されています。将来の相続で問題になりますか?
- 問題ありません。
濁点の違い(ザとサ)や地域差による読み方の違いがあっても、戸籍上の続柄や氏名、生年月日で同一人物と確認できます。フリガナの相違で相続人の資格に影響が出ることはありません。
【具体例】フリガナが異なるケースと実務対応
漢字氏名 | フリガナの例 | 違いの内容 | 実務での対応 |
宮崎花子 | ミヤザキハナコ | 濁音の有無(ザとサ) | 生年月日や親子関係で判断され、登記や税務に問題なし |
藤原翔太 | フジワラショウタ/トウゲンショウタ | 同一漢字でも別の読み方 | 戸籍で一致が確認できれば問題なし |
斎藤和夫 | サイトウカズオ | 「斉」「齊」「齋」など異体字でも表音同じ | 実務上は補足資料で対応可能、影響なし |
不動産登記におけるフリガナ届出制度
2025年(令和7年)4月1日より、法改正により不動産登記申請の際に権利者(主に所有者)の氏名に対応するフリガナ(カタカナ)を届け出ることが義務化されました。この制度は、「不動産登記法の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)に基づくもので、登記簿の整備と将来的なデジタル管理を見据えたものです。
具体的には、不動産を取得した際(売買・相続・贈与など)に行う登記申請書に、登記権利者の氏名の読みをカタカナで記載することが求められます。ただし、登記簿そのものにフリガナが記載されるわけではなく、届出されたフリガナは法務局の内部システム上で管理される情報となります。
この制度導入の背景には、同姓同名や異体字の使用などによって混同が生じる事例への対策や、今後の登記情報の電子化を進めるための基礎情報整備があります。今後、共有名義者間でフリガナの不一致がある場合、本人確認や情報照会時に不都合が生じる可能性もあるため、一貫性のあるフリガナの届出が望まれます。
なお、旧来の登記にはフリガナが登録されていないため、将来的には「過去の所有者情報との整合性」などが問われる場面も考えられます。今後の制度運用に注視しつつ、登記申請の際は慎重にフリガナを記載する必要があります。
制度のポイント
- 登記簿にはフリガナは記載されません(不動産登記令第3条)
- 申請書に記載されたフリガナは、法務局の内部データベースで管理
- フリガナの登録・変更は将来的な登記申請(売却、相続など)で照合に使われる
影響を受ける可能性がある場面
- 将来、共有名義者間での混同を防ぐためにフリガナの統一が求められることがある
- 氏名に多様な読み方がある人(例:一(はじめ/いち)、剛(つよし/ごう)など)は特に注意
相続税申告におけるフリガナの扱い
相続税申告書(相続税法第27条)にはフリガナ欄が存在しますが、課税関係の判断は漢字氏名・生年月日・続柄・マイナンバーによってなされます。
そのため、読みの違いのみで税務署が申告書を受理しないといったことはありません。
フリガナの違いに備えるための実務的アドバイス
項目 | 内容 |
戸籍フリガナの確認 | 2024年以降に届け出をする際は希望する読みを記載しておく |
不動産登記の申請 | フリガナ届出を求められるので事前に統一方針を決めておく |
遺言作成時 | 読み仮名の指定もしておくと将来の混乱を防げる |
金融機関手続き | 氏名の読みを口頭で確認される場面があるため一貫性を意識 |
フリガナの違いは、現時点では法的なトラブルには直結しませんが、今後の電子化社会では氏名情報の統一が求められる傾向にあります。特に相続・登記・税務に関わる場面では、正確なフリガナ管理が安心につながる時代です。
当事務所では以下のようなサポートを提供しております:
- 相続登記・相続税申告の一括対応
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司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。