担保権の抹消を単独申請できる

相続した土地や建物に、数十年前の古い担保権がそのまま残っていることがあります。中には、すでに解散して消滅しているであろう法人が担保権者、つまりお金の貸し手などであるような権利も、そのままゾンビのように残っていることもあります。

いくらその担保権が現在は消滅しているはずだということが分かっていたとしても、登記上担保権が残っている以上は、その不動産を売却したり、建物を取り壊したりすることはできません。「お父さん、なぜ当時抹消してくれなかったの?」と言いたくなりますが、相続人としては何とかその担保権を抹消する必要があります。

この場合で、もしその法人が清算しているのであれば、閉鎖事項証明書や閉鎖した登記簿謄本から当時の清算人を確認して、その清算人との共同申請により担保権を抹消することになります。

しかし、中には、清算が行われず解散のまま登記が止まっていて、しかし実質的にその会社は消滅しているであろうといったケースも存在します。こうした場合の対応として、不動産登記法では担保権の目的となっている債権の弁済期から20年経過していて、かつ債権や利息を供託した場合に、単独での担保権抹消申請を認めています。しかし、供託など面倒な手続きがありますし、この前提として公示催告という手続きが必要になるなど、非常に手間がかかります。

そこで、以下の要件を満たす場合には、公示催告や供託を経ることなく、より簡単に担保権抹消を単独申請できるようになります。

要件1:登記された存続期間が満了していること

要件2:調査しても担保権者の所在が判明しないこと

単独抹消ができる担保権の種類

単独抹消できる登記の種類は、地上権・永小作権・質権・賃借権・採石権そして担保権ではないですが、買い戻しの特約に関する登記です。これらはいずれも存続期間が登記できるものであり、存続期間が過ぎていれば権利の消滅が推認できるために抹消について、単独申請が認められます。

お気づきの通り、担保権のうち、最も件数が多い抵当権や根抵当権が含まれていません。これらは存続期間というものが存在しないからです。担保権といえば(根)抵当権といっても過言ではないので、実際には、この規定を用いて担保権の抹消を単独申請できるケースはかなり限られます。