Last Updated on 2025年1月12日 by 渋田貴正
合同会社(LLC)の経営者や出資者の中には、「利益剰余金を資本金に組み入れることができるのか」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、合同会社では利益剰余金を資本金に組み入れることはできません。ただし、資本剰余金であれば資本金に組み入れることが可能です。
合同会社で利益剰余金の資本金組み入れはできない
まず、株式会社では利益剰余金を資本金に組み入れることが可能です。これは「無償増資」として知られ、積み上げられた利益剰余金を用いて資本金を増加させる手続きです。一方で、合同会社ではこの方法は採用できません。なぜなら、合同会社の利益剰余金は、個々の社員の持分が具体的に反映されたものであり、社員全員が同意しても資本金に組み入れることができない仕組みになっているからです。
株式会社の場合、利益剰余金は株主全体の資産とみなされますが、合同会社では社員の持分に直結しています。そのため、利益剰余金を資本金に振り替えることは合同会社の法的な枠組みでは許容されていないのです。
資本剰余金なら資本金への組み入れが可能
一方で、合同会社において資本剰余金を資本金に組み入れることは可能です。合同会社で無償増資を行う場合、実質的にはこの資本剰余金の資本金への振替を指します。
資本剰余金は、例えば出資を受けた際に、出資額の一部を資本金とし、残りを資本剰余金として計上することで発生します。合同会社では、社員の合意に基づき、出資額のうちどの程度を資本金に計上するかを柔軟に決めることができます。たとえば、出資額全額を資本剰余金とし、資本金は0円にすることも可能です。このようにして発生した資本剰余金を、後日、資本金に振り替えることができる仕組みになっています。
なぜ資本金を少なく設定するのか?
合同会社が設立時に資本金を少なくする理由は主に次の2点です。
登記費用の節約 | 資本金額が増えると登録免許税が高額になるため、設立時の費用を抑える目的で資本金を抑えるケースがあります。 |
税金対策 | 消費税の課税事業者基準や外形標準課税に影響を与えないように、資本金を抑えることが選ばれる場合があります。 |
しかし、会社が成長し、取引先が増えると、資本金の少なさが信用力に影響を与えることがあります。特に登記事項証明書を見た取引先が、資本金額を評価の基準にすることが少なくないためです。そのため、多少(100万円くらい?)は体裁を保つためにも資本金にしておくとよいかもしれません。
資本剰余金を資本金に組み入れる理由
合同会社が資本剰余金を資本金に振り替える主な理由は以下の通りです。合理的に考えれば資本剰余金に偏っている方が実務上は有利なのにあえて資本金を増やすにはそれなりに数字以外の理由が必要です。
会社の信用力向上 | 資本金額が大きいと、金融機関や取引先からの信用力が向上する傾向があります。 |
キリのよい資本金額に設定 | 資本金を100万円や500万円などキリのよい数字に変更することで、見栄えをよくする目的があります。 |
資本剰余金の資本金組み入れ手続き
合同会社で資本剰余金を資本金に組み入れるには、社員の合意が必要ですが、業務執行社員がいる場合は、業務執行社員の過半数による決議でOKです。また、資本金に振り替えた場合は資本金の額が増加するため、法務局での増資の登記手続きが求められます。
資本剰余金の資本金への振り替えに伴い、税務面でも影響が出る可能性があります。たとえば、資本金の増加により消費税や法人税に関する取り扱いが変わる場合があります。そのため、顧問税理士に事前に相談することをオススメします。
当事務所では、合同会社の増資に関する登記手続きはもちろん、増資が税務や経営に与える影響についても総合的にアドバイスを提供しております。資本剰余金の資本金組み入れをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください!
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、国際的な相続や小規模(資産総額1億円以下)の相続を中心に、相続を登記から税、法律に至る多方面でサポートしている。合わせて、複数の資格を活かして会社設立や税理士サービスなどで多方面からクライアント様に寄り添うサポートを行っている。